日本一高い場所へ

富士登山

今年は富士山登りたいな、と冗談半分で宣言してはいたけれど、この連休が近づくにつれ、行ける気がしてきて、2日前に突如決めた。親が買った新車のレンタルと、静岡に住む友人が泊めてくれるOKが両方そろったことも幸いした。

そこから、さぁ富士山ってどこからどうやって登るの?調べはじめ、主に3つのコースがあることがわかった。あまり人が多いのもいやだし、石川直樹が著書の中で気に入っていると書いていた「須走口」を選んだ。このコースの特徴は、下りが「砂走り」といって、深砂の斜面を一気に駆け下りるところにある。おもしろそうじゃないの。関西方面からだと富士山を回りこんで、遠い側の御殿場へ行かなくちゃいけないが、3コースの中ではマイナールートだそうで、ちょっとがんばることにする。

出発前、明日の可燃ゴミを今晩出していくかどうかでもめる。私は、しょうがないときは前の晩からゴミ置き場に出してもいいと思ったが、相方はマナーとして、プランターに埋められるならそうしよう、というので、生ゴミだけを植木鉢コンポスト(半ば放置気味になっている)に埋めた。

22:45出発。

何度も休憩を取りつつ04:45、仮設駐車場に到着。五合目へ向かうシャトルバスの始発が06:00。駐車場はすでに多くの車と、準備運動をしている人や、朝食をとっている人などで活気づいている。眉間にしわを寄せつつ、なんとか仮眠を取ろうとするが、30分が限界だった。おにぎりを食べて、着替え、シャトルバスの乗り場に並ぶ。案の定06:00のバスは満員で、次を待つ。06:30出発、07:00須走口五合目着。この時点で2000mあり、雲海が広がっていて、あぁ、来てよかった、という景色。ここまでだけでも、来る価値が十分にあると思えた。登り始めは、茶屋が立ち並び、「いってらっしゃい」、「杖はある?」「買った人はトイレ(300円)ただで使えるよ」など、なかなか、めずらしくやる気ある呼び込みの洗礼を受けつつ歩く。あの杖使いにくいらしいで。ぼそっと相方が言う。ちょっといいな、と思っていたけど、それは黙っておく。だいたい千円~って高いし。茶屋がとぎれた森の中で、落ちていた枝をみつくろってそれぞれ1本づつ杖とした。富士山といえば、荒涼とした中を行くイメージを持っていたが、最初は、さわやか白樺木漏れ日きらきら的な森の中を行く。さすが富士山登山道は広く、登山と下山で別の道があるので、すれ違いに気を使う箇所もほとんどない。いいけど、6合目はまだかいな。まだその先には7合8合9合目があるから、とにかくまずは6合目で、どんなもんか行けるかどうか自分自身と確認作業をしたい。やっとのこと小屋らしきものが見えてきて、到着。結構長かった。でもここであんまり休憩してしまうとしんどくなりそうなので、次まで行ってしまおう、とさらに見えている7合目らしき小屋を目指す。その途中、標識が現れた。「本6合目→」と書いてあるのを見て、腰が抜けそうになった。そういえば、さっきのところは「新6合目」と書いてあった…。ひどい。登山者を騙すなんて。いや、騙してるつもりはないんだろうけど。もう何も信じない。こんなことでは、たどり着けないかもしれない。いや、とにかく7合目まで行ったら考えよう。毎年1合づつ上げていく恒例行事としてもいいし、何も一度で登ってしまわなくてもいいんじゃないの?と、とかく弱気で行く。それからは、山小屋が見えても、どうせた新7合目とか旧とか元祖とか本家とか言うんでしょ、という穿った見方で登ったので、「8、5合目」以外は、許せた。しかし「、5」はないやろ。敵もなかなかやるもんだ。今までも、ネパールやパタゴニアでトレッキングを重ねてきた(ずいぶん前になるけれども)自信があったが、今回は睡眠時間が30分という強行。ほんとうはよろしくない登り方とわかっているだけに、足が上がらない、息が上がる、休憩してたら寝そうになることに対しては言い訳ができない。その分、水は意識してたくさん飲んだ。頭痛などは起きなかったので、本当によかった。9合目あたりからは、英語圏の外国人父さんと7歳くらいの息子について登った。このお父さんがすごいスパルタで、「あと一歩、もう一歩、前に進むんだ!あの角を曲がったら休憩してもいいぞ、さぁ、この酸素ボンベを5回吸ったら、もうちょっと進もう、さあ立って、次に進むんだ!ゴールは近いぞ!」と間髪いれず檄を飛ばしていて、あぁ、ついていきます、私たちも負けてはいられません、という気にさせられた。

そして14:15、ぴかぴかのコカコーラの自販機が目立つ頂上についた。富士山なめたらあかん、けっこうしんどいやん、でも登れてよかった。3776mの標識は、さらに剣ヶ峰まで歩かなくてはならないが、そこはまたのお楽しみ。え、また登るの?さぁ…それはわかりません。自家製パンと、さんまの蒲焼缶とコーヒーで乾杯。下りは、最初しばらくは、スキーのようで楽しかったものの、ひたすら下界へと続く下り砂道が延々と見えるだけに、もういいよ、と泣きそうになりながら下った。人が通ると、砂埃がもうもうと上がるので、マスク、サングラス、スパッツをつけた人も多かった。いっそのこともうダンボールか橇で、滑り降りたい。滑り台にして欲しい、そんな2、5時間の下山。少なくともこのコースは1回きりで十分満足いたしました、といった感じだった。大阪~御殿場(高速・片道・ETC) 4800円須走仮設駐車場 1000円/日シャトルバス(往復) 1500円/人トイレ(100円のところを3回使用) 300円入山料を取ってないところがすごい。