遺伝子組み換えがそこまで来ている
(T)あとふつうの遺伝子組み換え農法やったら、その種子がまわりの環境に影響を与えるかもしらんけど、完全工場にしたらその心配はないみたいなことも書いとったよな。
(F)種子がっていうのは?
(T)遺伝子組み換え作物も交配する可能性があるわけやん、他の意図しない植物と。雑草とかも含めて。
(F)うん。
(T)そしたら、そこでまた別の遺伝子ができたりして、それは環境破壊っていうか、環境汚染になるかもしれん。
(F)うーん、でもその遺伝子組み換えをするときにやで、他の種とは交配しないっていうふうにできへんの。もう遺伝子組み換えができるんやったら、できそうやん。
(T)そんな簡単じゃないんやろな。遺伝子組み換えとはいえ、そんな全部意のままに操れるほどわかってないと思う。
(F)でもこの病気に対して強いとか、この農薬に負けないとか、そういうのを遺伝子に組み込んでるわけやろ。
(T)技術的なことはあんまりわからへんけど、あらゆるものと交配せずに、自分だけと交配するようにコントロールするっていうのは難しそうやな。それこそ自然やから。あとは種子が飛んでいって勝手にどっかでばーっと生えたりとか、そういうこともあったりするかもしらんし。
(F)それ自体はその人らが心配するようなことかなと思うけどな。
(T)遺伝子組み換え作る人?
(F)うん。
(T)作る人は心配してないで。反対する人がや。いま考えられてる遺伝子組み換えの悪影響は、環境への影響やから。それを封じようと思ったら、工場みたいに自然から隔離したところでやったらいいやんっていう話。
(F)じゃあ実際にいまアメリカの農場とかで行われてるやつはそんなん無理やんな。麦とか大規模でやってたら……、いや麦は遺伝子組み換えちゃうか、大豆とかか。どっちにしても無理やろ、だってすっごい面積やってんねんから。
(T)そう。
(F)周りに雑草の一本も生えてないつんつるてんの状態とかも無理やし、蜂の一匹もおらんっていうのも無理やし。ってことは、そういう環境への影響は始まってるってことやんな。日本ではまだ遺伝子組み換えが商業化されてない、っていうか認められてない。いや、認めはされてるんやったかな?
(T)ふつうにできる状態ではあると思うで。
(F)でも今のところ日本では遺伝子組み換え商品はまだあんまりないから……いや、なくはないか、油とかは「不分別」になってるか。でもちょっとギョッっとしたな。この後藤ガラスがそこまでの、なんやったっけEMじゃなくて……
(T)GM?遺伝子組み換えのこと?
(F)そうGM(笑)、GMまで考えてるっていう。
(T)そやな。
(F)ええっ、と思ったけど、意外とほんとにそこまで来てるっていうことやなあ。
(T)それこそ、「うちがやらなかったら外資系がやって来てやるだろう」って書いてあったし。
(F)おそろしい世の中やなあ。
で、ブラックボックスって何なん?
(F)その一方で、ちょっとしたミスとか問題が起きたら、マスコミはめちゃめちゃ叩くし、消費者も急にそのものを買わなくなるとかで、つぶれるのも早いよな。
(T)まあな。逆にそういうプレッシャーがあると、隠したりとか、っていう圧力にもつながるかもしれん。
(F)そうやなあ。単純よな日本の消費者は。
(T)まあな、自分らもそうかもしれんけど。だって、わからへんわけやん。それこそブラックボックスやからな。
(F)……何なんブラックボックスって?
(T)え、今さら(笑)
(F)ブラックファイルとは違うんやろ? 写真のときにフィルムをなかでくりくりするやつ?
(T)たぶん違う……ブラックボックスって、なんかコンピューターとかのプログラムとかででてくるんやったかな。ある箱があります、中身わからへんけど、その箱に何かを入れたら、何かが出てきます。入力を入れたら出力が。
(F)何それ。
(T)イメージとして、概念として。
(F)そういうことを言うの? ブラックボックスって。
(T)箱があって、入力と出力はわかってる。でも中で何が行われてるかはわからへん。
(F)ほーん。
(T)何かが何かに変わって出てくる、っていうようなもの。
(F)それ知らんかったかも。じゃ、この本のブラックボックスはなんやったん?
(T)工場にしても、中で何が行われてるかは、外からは見えないようになってるわけやん。で、工場内でやってることの中でも、使ってるプレドレッシングはどういうものでどこから来てるとか、わからへん。工程の中にブラックボックスがある、で、プレドレッシング作ってる会社までたどっても、その原料は中国のどっかから買ってて、実際どういうふうに作られてるかはそこの人でもわからんかったやん。そこにもブラックボックスがある。
(F)うん。
(T)そういうブラックボックスがいっぱい世の中にあって、みんなわからなくなってる。実際、何が行われているのかってことが。
(F)でも、ある程度のとこまではわかるし、わかろうとするかどうかっていうのもあるよな。
(T)そうやな。それがあの栄養教師の人が明らかにしたことやな。いろんなことを調べて。
(F)私、これ読んだ直後、栄養士なりたいと思った。栄養士なろかな!って。単純やな(笑)
(T)でも向いてるんちゃう。こういろいろ明らかにしていきたいとことか。
地方都市ってどこやろ
(F)インターネットの世界についてもちょっと書かれてたな。掲示板とか。ああいう世界では誰がほんまの人かわからへんって感じやな。裏で企業が手を回したような書き込みがあるとか……
(T)実際企業がそういうことをどこまでやってるんかはわからんけど……。あと逆にああいう小さな町やったら、お互いの立場を知ってるから下手なことはできへんっていう圧力があるよな、目立ったことはできへんみたいな。
(F)うーん。あれ、どこの町をモデルにしてるんやろ?
(T)まあ典型的な地方都市って感じなんちゃう。
(F)どこらへんの県やろ?
(T)関東地方ちゃう?
(F)千葉県とか?
(T)埼玉とか群馬とか…
(F)海やろ、だって、海辺やったで。
(T)あ、海か、ほんまやな。
(F)読んでて、意外と海辺やねんな、と思った。そう書いてなかったら私の中ではきっと海辺じゃないとこを想像してたけど。あの「塩トマト」が出てくるから、海にしたんかな?
(T)茨城とかは出てきてたな。試験所か研究所かで。
(F)ああー。
(T)で、東京に卸してるっていう設定やった。
家庭菜園的生活が答えのひとつ?
(T)食べ物の問題は難しいな。
(F)難しい?
(T)だってみんなが、そういう健康なものを食べようと思ったら、かなりたいへんなわけやん。みんな自分で作らなあかんくらいで。うちでさえ家庭菜園やってるけど、米は作れてないし。自給自足しようと思ったらお米を作って、野菜を作って、かなり農業に時間を使わなあかん。
(F)うん。
(T)それを全員の食料分やろうと思ったら、みんながそういうことせなあかんから。
(F)うーん、でも5人に1人とかじゃないの。
(T)5人に1人やったら、つまり家族で1人誰かがやらなあかんって計算やから、実際ほとんどの家族が農家をやらないと……
(F)農家じゃなくていいねんで。家庭菜園やから。
(T)でもお米作らなあかん。
(F)それをできるだけの土地が日本にはあるっていう話じゃなかったかな。
(T)できるとは思うで。ただそういうことを世の中の多くの人がしないんやったら、なにかしらの方法で食料を作らなあかんわけやん。
(F)うん。でも、そこは、そんな大企業が安くて健康で安全で安心なものを作り出せるなんていうわけがないっていうところを、もっと自覚せなあかん。で、もっと信頼できるところから買う、手に入れる、って言う方法をとれば、いいはずじゃない? 何かに頼らなあかんのはしょうがないと思うけど、その頼る場所はしっかり選ばなあかんと思う。トマトが赤かったらいいとか、安かったらいいとか、冬やけどきゅうり食べたかったら売ってる店行って買えばいいとか、そうじゃないやろって。
(T)信頼できるところから買う。信頼できるかどうかは見に行かなわからへんかな?
(F)見に行くとは?
(T)信頼はどうやって、判断したらいいんかな?
(F)うーん、それはお店でもさ、どこの農家からどういう野菜、どのくらいの農薬のかかった野菜を入れてるとか、そういうことは調べればわかるけどなあ。まあ、都会やったらそこらへんまでやけど。でも今は通販とかもけっこうあるし。だからやっぱりそれは気にしたいと私は思うけど、興味がない人はそれはそれで。でも大人はよくても子供がそれの犠牲になるって言うのはちょっとな。
(T)そうやな、そういうことになるよな。
(F)給食にそんなファミレスが作った給食が並ぶとかなあ……。で、難しいっていうのは何が?
(T)いや、そういう農業で暮らしていく、農業で生計を立てるっていうのが、どんどん難しくなってるなと。
(F)日本で?
(T)うん。この主人公の男の人みたいに、それが難しいなと思って。
(F)難しくないやん、結局、どういう人と組んでどういうことをやっていくかという問題じゃないの? 最後いい方向に行っとったし。
(T)でもあれも普通の人は食べられへんものとして、やったやん。ああいう高級店に売っていかないと、成り立たないっていう。
(F)今はそれはが希少価値やからやな。
(T)そうじゃないと、大量生産をやってコストを下げるかしないと……
(F)みんながやればいい。みんながやれば別に貴重じゃなくなるやん。
(T)そしたら値段が下がってしまって、生計が……
(F)だから売らんでいいと思うで。
(T)売らずに家庭菜園的にして、別に仕事して、っていうのをしたらいいってこと?
(F)そう。
(T)まあそうやな。でも生活に余裕がいるよな。
(F)2人とも働いとったら無理かもな。でも週末にやってる人もいるけどな。ドイツとかでもそうやし、ロシアとか。そういうスタイルもあるし。
(T)そうやな。そういう週末農業みたいなのは、ひとつの答えかもしれんな。
(F)うん。そこで1週間に一回しか来れへんからっていって、農薬ばんばんやっとったらあかんけどな。
(T)結局、手をかけずに収穫だけしようと思うと、そういうものに頼るようになっていくんかもしれん。
(F)まあ、そうならへん手はあると思うよ。安易に考えるとそうなるかもしれんけど。
(F)まあそんなとこやな。なんかこう自分たちの生活に関係あるようなないような、という問題やから。
(T)難しいところやと思う。何が言い悪いと簡単に言えないから。
(F)うーん、でもカップサラダは食べるまいと思ったな。
(T)まあ実際食べてないけどな。
(F)でも何も食べるものなかったら、サラダぐらいにしとこかってなるかもしれんやん。
(T)そやな。でもそれで今世の中で売ってるカップサラダを、この本読んで悪と決めつけるのは…それはそれでまたよくないと思うで。
(F)やけど、ブラックボックスやから。それが。
(T)あらゆる商品はブラックボックスなんかもしれんなあ。
(F)うーん。つまりは信頼の置けるものを食べようってことや。違う?
(T)その通りやと思うけど、信頼を置くのって難しいなと思って。結局、疑心暗鬼になってしまって……
(F)なってないやろ、疑心暗鬼には。私はもうちょっと疑心暗鬼になるくらいのほうが、作る方もがんばるっちゅうか、ちゃんとするんちゃうかなと思うけど。今はわりとゆるいと思う。買う側はどっちかっていうと信じ切ってるっていうか。
(T)そこで中途半端な情報にだまされてしまったらあかんけど。オーガニックとかのイメージだけで。
(F)うーん、そうやんな。それは私もちょっとあるかもしれんけど……
(T)そういうことで、本としてもおもしろかった。
(F)うん、話題豊富で。
(T)さすがに小説かやから読ませるよな、飽きずに。
(F)けっこう分厚い本やったけど。
(T)夜なかなか寝ずに読んでた人もいたし。
(F)そんなこともあったな。
(T)あ、もう1時間もしゃべってしまった。じゃ今回はこのへんにしときましょう。
(終わり)