食料自給率とは?(その2)

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和牛でも国産じゃない?

(F)で、さっきちょっと気になったんはこれ。

「畜産物については、国産であっても輸入した飼料を使って生産された分は、国産には算入していない。」

ってことは、ほとんど輸入した飼料を使ってるから、畜産物はほとんど入ってないってことやんな。

(T)そう。

(F)和牛でもあかんってことか。

(T)和牛でも何を食べたかによって変わるってことやな。

(F)全部を純国産飼料でまかなう無理やっていう話しなあ。でももし日本で育った畜産物を全部入れることができたら、かなり上がるよな自給率は。

(T)うん。なぜなら畜産物はカロリーが高いやん。

(F)水が多い野菜とは違って。

(T)下の資料にカロリーベースの内訳があって、国産の畜産物は今16パーセントになってるけど、もし飼料が全部国産やったら、あと48パーセント分が上乗せされる。これでだいぶ変わるんちゃうっていう話やな。

(F)なるほど。

(T)この資料には総カロリーも載ってて、それによると1日2436キロカロリー分の396キロカロリーを畜産物で摂ってる。で、そのうち国産扱いなのは65キロカロリーくらいしかない。

資料はこれ↓

「カロリーベースと生産額ベースの総合食料自給率(平成23年度)」(下のPDFの最後のページです)

http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/pdf/23slide.pdf

自給率が100%を超えるってどういうこと?

(F)米の自給率は97%かあ。それもすごいな。これ逆にほんま?って感じがするわ。国産米使ってないお菓子とかいっぱいあるやん?

(T)あるかな?

(F)あるよ。ああでもお菓子は計算に入ってないんか。

(T)入ってたとしても、この3%なんちゃう。毎日食べてるご飯に比べたらそのくらいしかないかも。

(F)米はそんなもんか。で、小麦は自給率11%。

(T)カロリーベースやから、カロリーが高いものの方がインパクトがあるわけやな。カロリーが高いのは小麦、油脂、畜産、米。野菜の自給率は76%あるけど、カロリー自体は全部合わせても73キロカロリーしかないから少ない。

(F)やっぱりこういうふうに内訳で見なあかんねん。総合っていうか、カロリーベースっていうひとまとめがおかしいんちゃう?

(T)カロリーが高いものにしぼって国内で作れば、率はどーんと上がるけど、そういうことなん?って話やな。

(F)でもこれ全部国産になったら100%超えるんちゃう?

(T)うん、超える。カナダ、オーストラリア、アメリカ、フランスは100%超えてる。http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/011.html(中ほどのグラフ)

(F)それって輸出してるって意味?

(T)うん、輸出するために作ってるんやろな。カナダとか223%もあるのは、人口はあんまり多くないけど小麦とかをたくさん作って輸出してるってことやろな。

(F)逆に223%あっても、実は野菜は30%とかいうこともあり得るってことやんな?

(T)そうそう。全部が超えてるわけじゃない。カロリーが高いものさえたくさん作れば100%超える。

(F)この上位に来てるカナダ、オーストラリア、アメリカはいつもお世話になってる小麦粉の国々やなあ。

(T)あと油。

(F)大豆油とか菜種油とかか。

(T)日本の油脂の自給率は3%やもんな。341キロカロリー食べてる分の11キロカロリーしか作ってないから、これがでかい。

(F)野菜が100%になったところで、やもんな。

(T)そう、あと20キロカロリー上乗せされるだけやから。

(F)パーセンテージは上がらへんな。

(T)小麦が100%になったらだいぶ変わるけど。

海外では自給率を測ってない?

(F)いったい何を目指してるんかわからんな。カロリーベースで自給率上げようとか言われても……。こんな方法で自給率を測ろうとしたのは誰なん? これは何の意図があるの?

(T)自給率の話は農水省が言い出してるみたいなんやけど、実は、他の外国はカロリーベース自給率というのは測ってないらしい。さっきのアメリカが1位カナダが2位とかやってるのは、日本の農水省が計算してあげてランキングを作っていて……

(F)なるほどなあ。

(T)何のためにやってるのかっていうのは、農水省の人に聞いてみなわからんけど……。まあカロリーがないと人間は生きていけへんから、最低限死なへんための食料という意味でカロリーを計算するっていうことやろうとは思うけど。でもじゃあ油だけ作って食べてればいいんかっちゅう話でもあるし。カロリーが満たされても不健康やったらしょうがないしな。

(F)結果と過程とどっちが大事か、みたいなことやな。

(T)……

(F)あれ、違う? 生きてればいいんかっていう話か?

(T)……そっちやな。しかもそれで実際、ほんとに生きていけんの?っていう話や。

(F)病気にもなるかもしれんしな。

(T)非現実的なことを想定して計算してるとも言える。

生産額ベースもどうなんやろ

(F)あ、で、もうひとつの生産額ベースやったっけ?

(T)そう、カロリーベースだけではおかしいんちゃうっていう話もあるから、じゃあお金で測ってみようというのが生産額ベース。

(F)それもどうかなあ。

(T)要はなんぼ売れとんねんっていう話。食費みたいなもんやな。感覚的にひとつの家庭で考えると、1ヶ月の食費は何万円で、そのうち何万円が国産のもので残り何万円が輸入か。それを計算すると66%が国産品ということになるらしい。

(F)それってどうなんかなあ。食費の問題なん? 値段なんてあってないようなもんやろ。

(T)そうやな。高く値段つけたもんが売れたらそれでいいんか、安いもんは価値がないんかっていう……

(F)うーん。

食生活が変わってきた

(F)で?

(T)で、例えば、さっきのカロリーベースの話でいうと、カロリーの摂取量や食べる内容も昔と今とでは変わってる。それも農水省のページに書いてあって。昔はご飯を1日5杯食べていたのを、今では3杯しか食べてないとか。

(F)うちは1日1人で2合食べてるから、4〜5杯くらいかな。

(T)昭和40年と平成23年を比べると、ご飯が減って、油が増えて。

(F)肉が増えて。魚は同じくらいか……いや、輸入総菜っていうのに置き換わってるわ。

(T)これも謎やな。

(F)栄養バランスも変わってきてる。昔は炭水化物が多くて、昭和50年くらいにいいバランスになったけど、今は脂肪が多くなってる。

(T)なんとなく、農水省は米を食べてねっていうことを言ってるんかなあ。

(F)でも、海外から輸入するんやろ。

(T)農水省は輸入してほしくないんちゃうかな。

(F)そうやろか。

(T)聞いてみなわからんけど。

摂取総カロリーも変わってきた

(T)必要な総カロリーも変わってきてる。ここを見ると、戦争直後の1946年は1900キロカロリーで、意外にもいま2005年も1900キロカロリーくらい。ピークは1975年。

(F)あ、私の生まれた年。団塊の世代やっけ? ジュニア?

(T)そのピークの1975年で2200キロカロリー。

(F)これは何? 平均?

(T)1人当たりの平均やな。食べ物のカロリーが上がってきたのと、あと昔は人がもっと動いてた。そしたらお腹減るやん。今はそういう体の動きが減ってきたってことじゃないかな。

(F)でも油の消費量は増えてるんやろ。

(T)そうやな。ピークからはちょっと下がってるけど。

(F)総摂取カロリーは減り続けてるんや。

(T)運動が減ってるからかな。体力仕事が減ってる。世の中便利になる方向やん。

(続きます)

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