ピジョンアイランドで午前中にシュノーケリングを楽しんだあと、トリンコマリーの町に戻ってきたら、ホテルのチェックアウトの約束時刻よりちょっと遅れてしまった。追加料金を取られたりはしなかったけど、急いで荷物をまとめて部屋を出たため、シャワーを浴びる時間もなかった。とりあえず町の食堂で昼食を食べ、さてどうしよう。夜の列車の出発時刻まで、まだ時間がある。
ちょうどいい行き先があった。トリンコマリー郊外にあるというカンニャ温泉だ。時間的にも今から行って帰ってこれそうだし、シャワー代わりにちょうどいい。
「カンニャ温泉に行きたいんだけど?」トゥクトゥクターミナルで、1人のドライバーに声をかけてみる。カンニャ行きのバスは、しばらくなさそうだったから、トゥクトゥクで行こうと思ったのだ。ドライバーは「何時に戻って来たいか?」と聞く。拘束時間を考慮して、値段を計算しようというのである。賢そうな人だ。私たちがカンニャ温泉にもうひとつ仏教寺院を加えた行程を説明すると、しばらく考えて値段を提示してきた。考えていたより少し高かったが、ぼったくっているような雰囲気はまったくなく、緻密な計算で割り出された金額のようだ。それでお願いすることにした。
カンニャ温泉は、単なる温泉というよりは遺跡であり、古来より神聖な場所であるらしい。入り口で50ルピー払う。遺跡の保全と新たな発掘のために、最近入場料を取るようになったみたいだ。地元の観光客でにぎわっていた。ちょうど何十人もの白い制服姿の小学生たちが私たちと入れ違いに出て行くところだった。遠足みたいなものだろうか。
この団体がいるときじゃなくてよかった、とほっとしながら、お湯が湧いている場所へ向かう。お湯で満たされた石造りの四角い井戸のようなものが5箇所ほどあり、その脇にブリキのバケツが2、3個置かれていた。ちょうど人がほとんどいなくて、私たちは行水する気まんまんだったが、誰もやってないのでちょっとためらっていると、いいタイミングで地元っぽいおじさんがやって来た。そして「えぇ、毎日来てますよ。お肌がもうツルツルになってそりゃぁ温まりますよ」とは言わなかったが、腰巻一枚になったおじさんは無言のままザブンザブンと頭からお湯をかぶり始めた。それを皮切りに私たちもさっそく用意してきた水着姿になり、おじさんの真似をしてザブンと湯をかぶる。これが珍しく適温! 41℃くらいだろうか。気持ちいい!
井戸は大きくないものの、いくら湯をくみ出しても次から次へと湧いてきているような気がする。適温のお湯のかたまりをザブンと体に浴びると、ほんとうに気持ちがいい。ザブンザブンを繰り返していると、いつの間にかだんだん現地の人が増えてきて、みなきゃぁきゃぁ言いながら、足にお湯をかけたり手で湯加減を見たりしている。服を脱ぐ用意をしていないらしく、水着でザブンザブンやってる私たちを珍しそうに、少しうらやましそうに見ている。なんかどっちが観光客かわからない感じだけど‥‥。
ちなみにここ、温泉のせいか、床全体がぬるぬるしていて非常に危ない。いきなりすべってこけそうになって間一髪(写真)。