初釜

お茶を習いだしてからはじめての正月を迎え、先生のお宅で恒例となっている年初めのお茶会「初釜」があった。

お茶会といったら御菓子とお薄だと思っていたが、意外と違った。まず、庭の手水鉢で手と口を清めてから茶室(和室)に入る。掛け軸とお花、お釜、棚を観賞してから、席に着く。御膳が運ばれてきて、ご飯がほんの少しと白味噌と生麩の汁物、しめ鯖と大根の向付が載っている。しかし、ここでいきなり向付を食べてはいけない。ご飯とお汁の蓋を同時に開けて重ねるなど、ちょっ

とした決まりごとがある。普通に考えたら、両手で同時に蓋を取るなんて、ちょっとがっつきすぎじゃないの?と思うけども、ここではそれが正しい作法らしい。そのうち、お酒が出る。亭主が杯に注いでくれる。赤い塗りのほんとうに薄べったい杯でのむ日本酒は美味し過ぎて危険だった。お酒のおかわりは何度も回ってくる。お酒が出たら向付が解禁となる。どこまでが本当かわからないが、鰆の西京焼き、ニシンの昆布巻き、大根と鱒の和え物、レンコンの胡桃和え、納豆とひき肉のいなり、胡瓜とわかめの酢の物と、次々とおかずが出てきた。他にも、ご飯のお代わりがおひつで回ってくる時に、最初の人から順におひつの蓋だけが最後の人まで先に回る、とか、食べ残しはすべて包んで持って帰り、器には残さない、とかご飯は一口残しておいて、最後に出るあられや黒豆の入ったお湯でお茶漬けのようにして食べるなど、いろいろ新鮮だった。 それがすんだら、お箸を御膳の淵から全員でパチンと落として、終わりましたの合図をすると御膳が下げられて、花びら餅が出てくる。食べてから、いったん席を立つ。その間に、茶室は模様替えが行われて、掛け軸が変わったりする。炉に炭が入れられて…ここも書き出すときりがないくらいの作法があった。炭のくべ方も全部うまいことできている。それぞれの動きにはすべて意味があるというのが、お茶を習っていてとても感心させられるところだ。まぁ、そのあと、やっとお茶なのだが、まずは濃茶をいただく。ねっとりと香りが濃くて美味しい。

次に、干菓子と有平糖が回ってきて、そしてやっと、薄茶をいただく。着物を着ていったので、まだ経験の浅い私にもお点前をさせてくれた。