クスクスのこと Kairouan

チュニジアと言えば、クスクス、クスクスと言えばチュニジア。そう信じ込んでいたから、いろんなお店でいろんなクスクスを食べよう。そう考えていた。

実際に街の食堂で「クスクスはある?」と聞いてみた。その答えは「今日はないよ。明日はあるかもしれない」。最初は額面どおり受け取って、あぁ残念惜しかった。明日は移動してしまうから食べられない。と落胆していたのだが、2回目にこれを聞いたとき、もしかしたらクスクス曜日(昔日本でも、カレー曜日とかって言うのがはやったし)があるのかもしれない、と思った。しかし3回目にこれを聞いたとき、あぁ、クスクスは置いてないのだな、と思った。クスクスという名前を見かけるのは、観光客向けに、英語メニューを置いているような店ばかりだったからだ。そういう店にはなるべく行かないようにしている私たちは、すっぱりと、クスクスをあきらめたのだった。Kairouanのメディナ(旧市街)をぶらついている最中、いかにもおいしそうなパンの入ったカゴが目に留まり、不在の売り手が戻るのを待って一つ買い、予想通りのうまさにうなりながら歩いていると、ひとりのおばさんが手招きしてきた。

「うち、美容室をやってるの。見たい?」と言って、細い路地から中庭のある家へと招いてくれた。すぐにキッチンに消えていった彼女は、「もうクスクスは食べた?」と、私たちを見透かすように聞いた。日本風に言うナポリタン・スパゲッティ味のクスクス。朝に大量に作って1日中これを食べるつもりなのか、午後の中途半端な時間にもかかわらず、大量に出してくれた。ディルや玉ねぎの薄切りがたくさん入っていて、甘くて嬉しくてとても美味しいチュニジアで初めてのクスクスだった。日本ではもう見かけなくなった、1L瓶のコーラがまたよく合うのだった。