愛と憎しみの豚(その3)

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サラミがめっちゃ長いねん!

(F)で、スファックスに行ったやろ。うちらは行かれへんかったスファックスに。

(T)おれらは出会った人が「行くな」って言ったから行かんかったけど、あーさんは偶然出会った人が来いって言って。

(F)ちょっとうらやましくなった。

(T)なんか自分らの旅行に重ね合わせられるよな。

(F)そやなあ。

(T)でもそれ以降の場所は、あんまり行ったことのないところが出てきたやろ。

(F)バルト3国は私ちょっと行ったことあるけど、でもまた行きたくなったなあ。

(T)うん。

(F)リトアニアでな、燻製見に行っとったやろ? スモークハウスみたいなところに。

(T)ああ、農家のところの。

(F)あそこでお土産にもらったサラミがめっちゃ長いねん!「半分に切ってもバックパックからはみ出してしまうサラミ」って書いてあんねん!

(T)思わず抜き書きしたんやな。

(F)すごいよなあ。もうこれは真相を知りたい……

(T)侍の刀じゃないんだから、っていう長さやな。

(F)このバックパックは小リュックやったんか、大リュックやったんか…‥?

(T)何リットルのリュックか。

(F)バックパックとしか書いてないからなあ。

(T)おれ全然そこ気にならんかったわ。スルーしとった。

(F)私、2回くらい読んだわ。

(T)目を疑って?

(F)うん。

(T)半分に切ってもバックパックからはみ出してる様子がこう頭に浮かんで…‥

(F)ええなあ、と。

(T)そう。

(F)そんだけサラミあったら。

(T)いや、それをもらえるシチュエーションが幸せやなあと思って。そういうローカルな人のところに行って、どんな生活してるとかいろいろ見せてもらって、で、おみやげにそこで作ってるサラミをやで、はいどうぞってくれたらさ、もう天にも上る気持ちやなと思って。

(T)聞いてたら幸せな気持ちになってきた。

(F)そら食べきれへんとかさ、次の国の国境越えられへんとか、いろいろ問題はあるかもしれんけど。どうしはったんやろな、これ。

(T)持って入っていいとかあかんとかは、国によって違うんちゃう。

(F)このサラミは豚肉やったんかな。

(T)そらそうやろ。豚の畜産農家に行ったんちゃうん。豚の燻製を作る小屋じゃなかった?

(F)そうやな。だいたいサラミって豚かな。いや、いろいろあるか。アルゼンチンとかいろいろあった気がするけど。わからん。

レジストレーションとか

(F)なんかどの国がどうやったかっていうのはもう、わからへんくなるな。それは自分にとってはそんなに重要じゃないもんな。その過程がおもしろいだけで。じゃあリトアニアで豚が嫌われてるからどうやとか、そういうもんでもないよな。

(T)実際あーさんも1カ所ずつ順番に行ったわけじゃなくて、いろんな人のツテをたどりながら、フェイスブックとかで連絡取ってアレンジしてもらったりして、その予定に合わせてあっちにいったりこっちに行ったりという感じで、回っていっとったやん。だからリトアニアを一回出てもう一回戻ってくるとかな。

(F)うん。

(T)ロシアも行かんわけにはいかんとかな。

(F)パソコンないとつらいな。

(T)そやな。

(F)宿のキッチンでパソコンしとった。

(T)充電とかたいへんかな。

(F)コンセントあるとこやろ。でも一度、田舎に行ったときはパソコンもインターネットもできひん状況やったな。

(T)うん。あれはあれで良かった感じやったな。今は宿とかもパソコンが当たり前で。

(F)ポチっとやっとったもんな。でもパソコンや携帯があってもうまいこといかんところはあったな。ロシアのホテルとか厳しかったよな。泊めてくれへんとかなあ。

(T)レジストレーションやろ。おれもロシア行ったとき言われた。

(F)外国人っていうだけで、泊まられへんっていうこと?

(T)おれが聞いとったんは、全部の宿泊施設で1泊ずつレジストレーションをもらっていかないとあかん。だからパスポート見てそれに抜けがあると、あかんって言われる。実際そう言われた。でもヨーロッパ側から来た人はそれをあんまり知らされてない感じやって、旅行中に会ったフランス人も「何それ?」みたいなことを言うとって「そんなん無くても余裕だよ。任せとけ」って。駅で夜を明かそうとしたら、警察が来て二人ともさーっと連れて行かれて、レジストレーションが無いって言われたわ。しばらく帰してもらえへんかった。

(F)ウズベキスタンとかもレジストレーションは似てたけどな。でももうちょっとゆるくて、闇で何とかできるとかあったけどな。

(T)どんだけ厳しくやるかは場所によるかもしれんな。あと泊めてくれそうなところは高いとか。

(F)どのくらい高いん?

(T)100ドルとかしとったな。おれもホテルのフロントのソファで寝たことあるわ。

(F)私もトルクメニスタンで……

(T)あかん、気がついたら自分らの旅行の話になってるわ。……まあ旅行の話をしたくなるってことやな。

(F)うん。ほんま旅行行きたくなるよな。

知り合う人がみんなすごい

(T)あと友達がみんなすごいよな。

(F)そうやねん。

(T)レベル高い。

(F)何のレベル?

(T)いろんなアレンジしてくれたり、いい人に会わせてくれたり。まあ偶然の出会いもあるけど、そのへんはあーさんの嗅覚がすごいというか。

(F)けっこう直前に知り合いになったとか、友達になった人もいるよな。

(T)あの日本語しゃべるロシア人とか。

(F)うん。

(T)「コツ」に問題がとか言って。あれけっこう目からウロコやった。なんでお骨は「オコツ」なんか。

(F)それはもう普通の骨とは別やからや。

(T)それであの日本語を勉強しているロシア人は、普通の骨のこともコツって言うと思っててんな。「ちょっと私のわたしの手のコツが」みたいな。でもよく勉強してるなと思った。

(F)あの人に会う前に、シャワーを浴びたかったていうあーさんのあの気持ちもわかるよな。そのときにフリースとカーゴパンツしかない自分が残念やったっていうのも、わかるなーと思った。

(T)おれもスリランカ行ったときに、黒いズボンはいてきたらよかったなあって思った。

(F)それはちょっと違うと思う。いっちょうらっていうか、会う相手の人がちょっときれいな格好してる人やったら引け目を感じるってこと。

(T)なるほど。

(F)あの人、ポットのお茶とか飲んどったし。そういえばポットのお茶頼んでる人、多かったな、ロシア系は。

(T)コーヒーとか出てこなかったもんな。まあウォッカとかも飲んでたけど。

(F)ウォッカ飲む前には脂をいっぱい食べといた方がいいんや。あれは参考になるな。

(T)まあね。

(F)牛乳飲んどいたらいいっていうのも似たような感じちゃう。

(T)飲み過ぎないのが一番やけどな。

(F)まあね。

食べ物が細かく書かれてる感じが私は好きや

(F)ルーマニアで馬車乗っとったな。

(T)馬車?

(F)馬車で行っとったやろ、あのおじいさんの田舎に。

(T)行っとった。何か馬に名前ついとったな。

(F)エイミーじゃなくて、ドロシーじゃなくて……。ルーマニアほんまに馬車走っとったもんな、私が行ったときも。

(T)へー、そうなんや。

(F)そこで茄子とパプリカのペーストを食べとった。

(T)誰が?

(F)あーさん、っていうかそこのお家。豚を解体する前の食事は菜食みたいな感じで、より肉へ向かって……

(T)我慢してる?

(F)我慢もやけど、そうした方がおいしくなる。直前は肉を断った方がおいしくなるっていうか。でもそのとき食べた茄子とパプリカのペーストがめちゃおいしかったから、これやったらベジタリアンになれるかもって思ったって。

(T)もう自分が体験したみたいに語ってるな。

(F)おいしそうやった。もうたいがいおいしそうやな。

(T)ベジタリアンも増えてるみたいな一面も書かれてたな。

(F)そやな。豚肉嫌われとったな。脂とか豚とかな。

(T)若い子の話やけど。

(F)そう思うと日本も多少はベジタリアン増えてる?

(T)あんまり増えてないんちゃう。

(F)こうやって食べ物がちょこちょこ出てきて、おいしそうにっていうか、細かくっていうか、詳細に書かれてる感じが私は好きや。

(T)豚がテーマやからな。食べ物っていってしまったらあれやけど、食べるために飼ってるわけやもんな。

(F)なんか野生の豚も出てきたけどな。イノブタ?

(T)チェルノブイリで、飼われてた豚が野生化してるんちゃうかって想像してたよな。

(F)でも実際は射殺されたってなあ。チェルノブイリがここに出てくるとは思わんかったわ。

(T)まあ豚は直接関係ないけど、その野生の豚がいるかもって思ったところがちょっと関係あるかな。

(F)そうやな。

(T)直接関係ないけど豚を追って行ったからこそ、ウクライナまで行ったというか。