僧と話す

キャンディを出発したローカルバスは、エンジンだかブレーキだかに問題があるらしく、ものすごく極端なストップ&ゴーを繰り返しながら、山を下り、ダンブッラの町を目指して走っていた。道中にはこの国らしく、たくさんのスパイスガーデンが続いていた。

途中、ローカルなドライブインのようなところにバスが止まって、とくに何のアナウンスも無く休憩に入った。近くに塩茹でのとうもろこしを売っていたのが目に留まり、それを買って食べていたら、Tが同乗の2人の若い僧に囲まれているのが見えた。寄っていって一緒に英語で話す。

これまで僧と言葉を交わしたことが無かったので、質問してみる。

「こちらのあなたの袈裟は黄色、こちらのあなたは小豆色。この袈裟の色はどうやって決まるんですか?」

「自由です、好きな色です」

「え?階級とかじゃなくて?」

「はい。私はこの色が好きで、彼はあの色が好きなのです」

なんだ、それだけのことなのか。意外。

彼らは普段はキャンディにあるお寺に住み込んでいて、今日は実家のあるこの先の村に帰り、またすぐにキャンディへ戻るのだと言う。

「実家に帰ったら普通の服に着替えるんですか?ジーパンとか?」

「いえ、それはないです」

そりゃそうか。

「あしたキャンディのお寺をあなたたちが訪ねてくるのはノープロブレムです、ウェルカムです」

と言ってくれるのは嬉しいのだが、私たちはつい今しがたキャンディとお別れしたばかりで、これから先シーギリヤだのトリンコだのコロンボだのに行く予定がありまして、残念ながらキャンディに戻ることはないんです、と伝えたつもりだが、ちょっと意味わからないような顔をしていた。彼らのうちの1人は独学で日本語を学んでいるらしく、いくつかの日本語を上手に話してくれた。

その数日後、トリンコマリーでヒンドゥー寺院を見に行った。スリランカは仏教が盛んだが、トリンコマリーを含む北東部にはヒンドゥー教徒が多いという。簡単に言うと、シンハラ人が仏教徒、タミル人がヒンドゥー教徒だ。

そのヒンドゥー寺院までトゥクトゥクで行ったときのドライバーは、シンハラ人で仏教徒とのことだった。が、別段なにも気にすることなくヒンドゥー寺院に一緒に入ってくれた。でもその後すぐに雇い先に電話で呼び出されて、申し訳なさそうに帰って行った。聞くとコックだそうで、空いた時間でトゥクトゥクドライバーをやっているそうだ。

そしてそのヒンドゥー寺院を見物していると、オレンジ色の袈裟に身を包んだ僧の団体がやってきた。え?僧って仏教徒じゃないの?と思って、「見学ですか?」と聞いてみると、「そうです」と言って、ヒンドゥー寺院をバックに、デジタルカメラでぱしゃぱしゃと記念撮影をしていた。その人が言う。「戦争が終わって平和になった。今はどこにでも自由に行けるんです」

僧の後ろで、朝の海がきらきらと光っていた。