最終日は宿の部屋が満室だったため、床にゴザを敷いて眠った。最終日はキューバが敗退する、または試合会場が台北に移動になる可能性を考えて、部屋を押さえていなかったからだ。少し体が痛い。
朝はいつもの三佳早餐で朝食。向かいの席に座った男性は、息子を近くの病院に連れてくるのに合わせて、週1回くらいこの店に来ているらしい。
「毎日、豆漿を飲むんですか?」
「いえ、週に2、3回です。それ以外の日はコーヒーを飲みます」
午後に空港に向かうためのバスについて調べる。宿のオーナーに聞いたバス停に行ってみると、そこからは本数が少ないようだった。ベンチに座って英語の論文を読んでいた若い男性に尋ねてみると、朝馬というバスターミナルまで行くと別の会社(統聯バス=U bus)も出ており、もっと本数があるらしい。
バスの乗り場と時刻を確認したあと、昨日行ったビール工場跡のエリアに行く。昨日買っておけば無駄足を踏まなくて済んだのに、と後悔しながら、会社向けの土産を購入。
その近くに創業80年の肉圓店があり、そこで昼食。Fは最後はおいしいものを食べたかったらしいが、どこに行けばおいしいものが食べられるかわからず、結局たまたま見つけたここになった。
でも、入った後、「ここ、来ようと思ってた店やわ」と言う。ガイドブックで見てチェックしていた店のひとつだそうだ。店の外に掲げた看板で「うちはチェーン店じゃありません」謳っている。
肉圓とは、つるっと、もちっとした皮にあらびき肉が入ったもので、これまで食べたことのないユニークな味だった。春雨スープのような冬粉湯と一緒に食べる。あとでインターネットで検索すると、映画『千と千尋の神隠し』の冒頭で主人公の両親がむさぼるように食べていた弾力のある肉、あれがこの肉圓に似ているのではないかと書かれていた。
続いて近くの素食店で自助餐(バイキング)を食べる。台湾はこういう庶民的なベジタリアン店が多くあり、けっこう人が入っている。鮭の塩焼きを模したものとか、豚の角煮のような見た目のものとか、イカの切り身のようなおかずもあった。すべて動物性ではない食材から作られている。宿のオーナーのOさんと話しているとき、日本には安いベジタリアンの店がないと言っていたが、こういう感じの店がないということだろう。
宿に戻りパッキングして出発。時間がぎりぎりになったので、タクシーを捕まえてバスターミナルへ向かうことにする。その前に飛び乗った路線バスは、珍しくバス停からずれた場所で止まってくれた。Fは野球場に行くときのバスで、球場の目の前の停留所が工事のため、次の停留所まで降ろしてくれなかったことに腹を立て、「No Way!」と運転手に叫んでいたが、最後のバスは寛容な運転手でよかった。
バスで幹線道路に出てから、うまくタクシーを捕まえることができた。今回の旅行で初めて乗るタクシーだ。と思ったら、Fは初日にキューバチームを見に行くためにホテルまでタクシーに乗ったことをここで告白した。
バスに乗って2時間くらいで空港着。荷物が規定の10キロを超えそうなので、衣類はなるだけ着込んでチェックインする。球場でトランペットで応援していたカナダ人の姿も見かけた。同じ便に乗って帰るようだ。
いろいろ忙しい旅だった。その分、印象に残る旅だった。税関を抜け、駆け足で駅に急ぐ。飛行機で荷物を預けなかったのが功を奏して、終電に間に合った。電車の床にはなぜか大量のビニール傘が散らばっていた。積極ポイントを貯めるべく、その傘をまとめて車内の隅に移動させた。
(終わり)