今日のデザートは?
(F)高山ウーロン茶と干し柿です。
(T)高山ウーロン茶というと…
(F)阿里山の…いや阿里山とは限らんけど、決められた標高の場所で作られるウーロン茶。
(T)台湾の。
(F)台湾のとも限らんかな。高さが問題みたいやで。
(T)ふーん。
(F)お店のおじさん自慢のすごく品質がいいっていうやつ。三枚半やったかな。
(T)葉っぱの上から三枚半摘んだところが一番おいしい。
(F)っていうお茶です。
Tの熱い希望により選ばれた本
(T)まあ、今日は気楽な感じで。
(F)いつも気楽やけど。
(T)最近、食料危機みたいな本が続いたから、ちょっと違う感じのをしゃべろかなと思って。
(F)気配りやな。
(T)っていうか、自分が日々心を動かしていることは、それだけじゃないんやと…
(F)多様やで、ってことやな。
(T)というか、実際の自分を反映してやな……
(F)えー、今日はTの熱い希望により、ご紹介いたします。
(T)はい。「弱くても勝てます
」という本です。
(F)ええっ!そんな題名やったん?
(T)そうやで。
(F)「開成高校」やないの?
(T)副題には、開成高校野球部って書いてあるよ。
(F)まあええわ。で、この著者、高橋何さんやろ?ヒデミさん?
(T)ヒデミネさんって読むそうです。
(F)どっかで名前見たと思ったら、「素晴らしきラジオ体操
」の人やねんな。
(T)そうやな。
(F)あれもラジオ体操のことをめちゃ調べてておもしろかったなあ。
(T)おもしろおかしいというか、テーマがいつもユニークやねんな。
東大に毎年200人の合格者を出す開成高校
(T)という話です。
(F)私は読んだけど、もうほとんど忘れましたので。
(T)簡単にいうと、開成高校っていう高校があって……
(F)私、知らんかったもん。
(T)開成高校を?
(F)うん。
(T)東京の高校やな。東京のどこかは知らんけど。
(F)灘高みたいな感じなんやろ? 賢い子の行く学校や。
(T)何をもって賢いっていうかはいろいろあると思うけど、とりあえず東大に行く人が……
(F)進学率が高い。
(T)そう、めっちゃ多いねんな。東大に毎年200人以上の合格者を出すという。
開成高校野球部は、意外と強い
(F)そんな高校のクラブ活動はいったいどうなんや?っていう話やな。
(T)とくに野球部。野球部って部活のなかでも本格的っていうかさ、とくに硬式野球部は。
(F)ふーん。
(T)強いところは寮があって専用球場があって、もう半分プロっていうかさ、専用バスで乗り付けたりして。
(F)イチローの高校みたいな。
(T)部員も何百人もいて。
(F)うん。
(T)そんな高校がある一方で、開成高校みたいな進学校にも野球部があって、おんなじ予選を戦って、みんな甲子園を目指するわけや。
(F)そやな。
(T)でも進学校やから、まあ強くはない。
(F)普通に考えたらな。でも、うちの地元の賢い高校とか今年わりと強かったやん。
(T)うん。でも、開成はもっと部員も少なそうやで。
(F)やっぱりみんな勉強忙しいからかな。
(T)しかも経験者じゃない子も多い。経験があってもそんなに活躍した子が集まってるわけじゃない。なのに、開成高校は意外と強いっていう。
(F)っていう?
(T)っていう噂があって、で、著者の高橋さんはそこに注目して、いったいどうなってるの?ってことで取材を始めた。
(F)密着取材。それをまとめた本が、この「弱くても勝てます」やねんな。
(T)そう。
(F)だから独自のやり方やねんな。普通は「強くて勝てます」やけど、「弱くても勝てます」やから。
(T)そやな。普通の方程式でいうと「強くなりましょう、そしたら勝てるでしょう」になるもんな。
おもしろいのは監督
(F)やっぱり監督よな!おもしろいのは。
(T)そうやな。
(F)おもしろい指導方法というか、監督自体がおもしろいというか。
(T)ふふ。
(F)監督が発する言葉がいろいろ書いてあんねんけど、かなり笑えるよな。「人間のすることじゃない!」みたいな。
(T)あったなー。
(F)何やったっけ?「人間のやめるのか」じゃなくて、「人間としてできてない」みたいな?ちゃうな。
(T)「そんなんじゃ生きていけない!」
(F)あー、それ。
(T)「置いてある球を拾ってみろ」ってのもあったな。それをちゃんと拾えへんかったら、そもそもゴロが捕れる訳ないって。
うん。
(T)やっぱり賢い学校やから理論的やねんな。
(F)そうそう。
(T)いろんなことがいちいち理論的やねん。だからおもしろい。
(F)生徒がすごく自分を客観的に分析して、僕はこうなんですってはっきり言う。
(T)でも、それがちょっとなんかずれてるっていうか、憎めないっていうか。
(F)うん。
(T)めっちゃ賢いっていうよりは、考えすぎて「そこなん?」って言いたくなるような。
(F)全体的にチームがおっとりしてて、いつも監督に怒られてるねんな。
(T)せき立てられてる感じで。
(F)みんな割とボーっとしてるじゃないけど、自分で考えすぎてるのか、集中しすぎてるのか、ひとつのことにしか目が行かへんのか、今ほんとうにしなければいけないことができてないことが多くて。
(T)うん。
(F)試合の準備とかも遅すぎて、監督にいきなりすごい怒られて。
(T)監督もこうしろああしろじゃなくて「こう考えろ」みたいな言い方で言うから、みんな右往左往してしまうねんな。
(F)監督が「そんなことしてたらだめだろう!考えろ!」とか言ったら、選手がそれを伝達して、みんなで「考えろ!」「考えろ!」みたいに言い合って。
(T)(笑)
(F)コメディみたいやった。
戦術は、大きく振れ!
(T)まあそういうことでちょっと変わった野球チームやねんな。
(F)そうやな。
(T)ふつうは賢い学校の野球部っていったら、戦術を賢く考えて、頭を使って勝ってやろうみたいなことを目指しがちやけど……
(F)データを分析して、うちは頭脳で勝負だ、みたいに。
(T)確率を計算したりとか。やけど、開成高校はめちゃくちゃ考えた結果、出した結論が「とにかく打て」。
(F)「振れ!」
(T)大きく振れ、大きいのを狙え。っていう結論に達したところが、おもしろいなあと思った。
(F)それもやっぱり監督よな。「球がピッチャーの手から離れる前に振ったらだめ。キャッチャーが受け取ってから振ってもだめ。その間で振るんだ!」みたいなこと言って。
(T)その間で振ったら当たる可能性がある、と。
(F)それを大真面目に言ってるし、みんなもほんまにそれにちゃんと従って実践してて。
(T)うん。
(F)意外とそういうのって大事よな。当たり前と思って、そんなん当然やんっていうんじゃなくて、そこを真面目にやるっていう。
(T)いろんなことをゼロから考えるっていうか、一から考えるっていうか。
(その2に続きます。2回シリーズです)