フード左翼とフード右翼(その1)
今日のおやつと本は?
(F)今日のおやつは「シフォンケーキ、バニラビーンズ入り」です。本は『フード左翼とフード右翼
』です。
(T)この本、Fがおもしろいって言ったのが意外やった。
(F)おもしろいやん。なぜなら私はフード左翼やから。
(T)それがわかった、と。
(F)Tは大学時代くらいまで、フード右翼やったんちゃう。
(T)そうかもな。フード右翼的生活やったかも。
フード右翼とフード左翼とは何か
(T)フード右翼とフード左翼とは何かというと……
(F)うん。
(T)食べものの好みや考え方を分類したら大きく二つに分かれて、片方がフード左翼、もう片方がフード右翼。それはこの本を書いた速水健朗さんが名付けたことやけど。
(F)極右と極左という極端でもなく。
(T)マトリックスを作ってある。横軸が、地域主義かグローバリズムか。縦軸が、健康志向かジャンク志向か。今ちまたで流行っている食に関するキーワードを並べていくと、左上に集まるのがフード左翼的で、右下に集まるのがフード右翼的。
(F)せやな。
(T)なんで自分はフード左翼やと思ったん?
(F)フード左翼のとこに書いてあるキーワードが、まあ完全に当てはまる訳ではないけど、自分が通り過ぎていってるものやったから。
(T)例えば?
(F)ファーマーズマーケット、有機農業、地産地消、らでぃっしゅぼーや。でも、モスバーガーってのはどうかな。
(T)微妙やな。位置もちょっとジャンクよりやしな。地域主義ってことで、マクドナルドとかとは違うってことやろう。
(T)有機農業とか地産地消とかは普通に言われてることやけど、もうちょっとマニアックなキーワードが出てきておもしろいよな。「らでぃっしゅぼーや」くらいから。
(F)らでぃっしゅぼーやは普通やで。
(T)アリスウォータースさんとか、キンフォークとか、靴下の重ねばきとか。
(F)暮しの手帖は出てこんかったけど。
(T)暮しの手帖はそこまで左翼的じゃないんじゃない?
(F)そうかなあ。フード左翼的やと思うけど。
食べてるものを見ると、気が合いそうかわかる
(T)何が印象的やった?
(F)日本人は政治の話するのが苦手って言われてるけど、じゃあその分、何で区分するかっていうと、食べるもので政治的な考えも区分できるんじゃないかっていう視点。私もそう思ってた、よく言ってくれたって思った。
(T)なるほど。
(F)例えば、ある人と知り合いになって、その人が食べてるものとか買ってるものとか見ていくと、あ、この人、気が合いそうとか、この人ちょっと気が合わなそうやなっていうのを、知らず知らずのうちに勝手に判断してる。それがこの人の言ってることやと思う。それはだいたい当たるっていうか、やっぱりなって思うというか。まあ自分にはないっていう意味では、正反対の人もおもしろいけど、その人の政治的な信条みたいなのが意外と食に表れてる。
(T)普通の政治の話よりも、よっぽど食べもので見た方が、考え方は分けられるって感じかな。
(F)語らなくても、その人の食べてるものについて説明してもらえば、ああわかりました、あなたにはお願いしませんみたいな。そういうことも可能やなって。
(T)それがこの著者の言う右翼と左翼っていうことやんな。
食べもののスタンスを俯瞰する
(F)この人は自分でも言ってるけど、もともとフード右翼的な人やった。でも、ベジタリアンのフェスとかファーマーズマーケットとか見に行って、若干右翼よりな目やけど、客観的にそういう人らを見て思ったことを書いてはる。で、確かに確かに、って言いたくなるような、そういう人に共通する話の流れが出てくる。
(T)客観的に見たら、ちょっと気取ってるとか理想主義的とか怪しげとか、そういうイメージがあるけど、そこに対してツッコミを入れてやろうくらいのスタンスで最初は見ていってるねんな。で、実際いろいろツッコミを入れてる。だから、フード左翼的やなと思う人も、客観的な目で自分のことを見れるっていうか、自分がどういう位置にいるんかを見せてくれる視点がある。
(F)この人が?
(T)そう。ちょっと上からというか、俯瞰してみた様子をまとめてくれてる。それがまずは役に立った。
(F)でも、基本フード右翼的な目線やよな、やっぱり。みんながみんなベジタリアンやからって、スピリチュアルな方向に行ってるかっていうと、そうでもないと思うねんけど。
(T)そやな。細かく見ていったら、そうとは限らんよな。
(F)だってベジフェスに出店してた女子学生たちなんかは、普通に化粧っ気のある明るい感じやったって。この人が想像する化粧っ気のない……
(T)乾いた感じ。
(F)そう、乾いた感じの人とか言われたら(笑)。あの人らもかわいそうっていうか。でもやっぱりそういうイメージなんやな。
(T)でも、そういうイメージやったけど、実際行ってみたら乾いてない人も……
(F)いたけど、乾いてる人を見つけるのは簡単って書いてあった。そうか、気いつけなあかんな。そういう方向に行きやすいねんな。
(T)(笑)
(F)あとはそういうフェスにいる民族的な、なんやったっけアクセサリー売る人や、ディジュリドゥやってる人とか……
(T)苦手って書いてあったな。
(F)それはすごいわかるな。
(T)フェスがやたら説教臭くなってきてるとか。まあ、行ってないからよくわからんけど。
(F)だからなんとなく行きたくないんかな、エコなロハスなフェスには。
有機農業は自然破壊?
(F)っていう今の現状の一般的な話から、途中から「え!?」っていうことが書いてあった。
(T)何?
(F)有機農業のほうが自然破壊やとか。知ってた?
(T)うーん。有機農業だけで地球上の全員を養えるのかっていう問題は、聞いたことがある。
(F)それって有機農業を批判する立場の人の意見なんじゃないかなって思うねんけど。
(T)なんでもいい面と悪い面があるから。その悪い面から見たら、そういうことになるんかもしれん。
(F)いきなりそこで地球全体の話にしちゃってるのも、もひとつピンと来いひんっていうかさ。日本だけで言ったら、まだまだ有効に活用されてない土地はいっぱいあるわけやんか。山をぜんぶ崩せとは言わんけど。そういう余ってる土地を大規模にどーんと有機農業にしようとしたら、土地がなくなるかもしれんけど、それぞれ個人が自分ちの分をしてたわけやろ、昔は。
(T)うん。ただ昔は人口が少なかったよな。さっきの問題は、人口がこのまま増えて……
(F)2050年には、っていう話か。
(T)人口が90億か100億人かになったとして、それをぜんぶ有機農業で賄おうと思ったら、それはだいぶ自然を使わなあかんやろっていう話やと思う。まあ化学肥料があったから人口が増えたわけで、それを有機農業で養えるか?っていう仮定がちょっと変かなとは思うけど。
(F)人口がこのまま増えるにまかせるやったら…
(T)有機農業だけでは難しいやろっていう話。
有機農業×遺伝子組み換えというアイデア
(F)で、この人が出してきたアイデアがやな、有機農業×遺伝子組み換え技術。今までその組み合わせはないやろと思っていたけど、そうすれば有機農業もまだ可能性があるっていう意見。それはびっくりやな。
(T)遺伝子組み換え自体は技術の名前やから、それをどう使うか、どう管理するか、そういう問題やと思うけど。
(F)うーん。いや、でも遺伝子組み換えの大豆とかトウモロコシを食べたいと思うかどうかや、要は。
(T)もう飢えて死にそうなときに、目の前に遺伝子組み換えの大豆が出てきたら食べへんかって言われたら、また違うしな。
(F)なんでそんな究極なところに持ってくるんの?そんな世界やったら私もう生きてたくないわ。
(T)人口を賄えるのかっていうのは、そういう極論かと思って。
(F)そこで私は自分の畑でやり続けるからいいわ、っていうのはあかんのかなあ。
(T)遺伝子組み換えの話のもうひとつの問題点は、企業が種子の特許を握ってしまうこと。私は私の畑で植えてるってときに「じゃその種ちょっと見せて、遺伝子解析したらうちの遺伝子が入ってますね、何万円払ってください」。究極にはそういうことになってしまう。
(F)うーん。でもウチにある種が、企業の種になるやろか。
(T)交配とか。
(F)するやろか。
(T)極論やけど、家の周りが全部その種になってしまったら、そうなる可能性がある。
(F)だからまあそれは別の話やっていうのは、この人も書いてるよな。遺伝子組み換えに反対する理由のひとつとして、知的財産権が大企業の種子メジャーにの独占されてる。安全か安全じゃないかとは別として、食べものがそんな知的財産権で牛耳られてしまう世の中っていうのはどうなん、あかんやろっていう。
(T)安全か危険かっていうのは、どっちも証明が難しいから議論がわかれるけど、知的財産権はまず明らかに問題とされてるな。
(その2へ続きます)