大山登山2013夏

次の週末が連休だと気づいたときは、もう週も半ばだった。夫の実家に寄って車を借りて大山にでも行ってみるか、とまずは図書館に行って大山の地図を借りてきた。ここで誰かに借りられていたらそれだけで士気が下がるのだが、さすが我がS市。自分たちの欲しい本はたいてい売れ残っている。

さっそくいろいろ考えてみると、夫の実家があるのは車なしでは生活できないような町で、1台しかないその車を借してもらうのは無理がある。ではFの実家から車を借りられないかと問い合わせてみると、OKとの返事。それで大山に行くことに決定して、連休1日目は畑に野菜を収穫しに行って、夕方に実家に前のりした。雨も降ってないし、完璧なシナリオ。実家ではウチにはないテレビやDVDを見たりして、早めに就寝。しかし、ゆうに25年は住んでいたこの実家なのに、なぜか眠れない。ウチとは違って雨戸が閉まっていて閉鎖感があるのに加えて、蚊が飛んでいる気がして、目が冴える。結局あまり眠れないまま、予定通り早朝4時起床。5時に出発してまずは中国吹田インターへ向かった。

実家の車のナビにはいつも手を焼いている。今回はだまされないぞ、ってことで、もう古くなってるけど「ツーリングマップル関西」を持参し、中国吹田までは自分たちの土地勘で走ることにした。最近、万博に行ったこともあってこのへんの道はお手の物。ナビは一応目的地は設定しつつ、音量をオフにした。するとなんとまぁ快適。最初からこうすればよかった。

中国道から米子道に入り、雲の中にあるはずの大山を回りこんで、山の西側の溝口インターで降りる。他に車は見当たらずガラガラ。天気も今ひとつだし、こんな日に来る人少ないのか、と若干寂しい気持ちになりつつ登山口に近い駐車場に到着したら、満車。そうよね、連休の中日やもんね、ちょっと焦りつつ次の駐車場へ。こちらも満車、結局少し離れた情報館近くの広い駐車場へ。ここは余裕で停められた。

軽く準備運動をして、9時に登山開始。夏山登山口からぞろぞろとたくさんの人が登っている。よりによって私の目と鼻の先を歩いている男性のリュックに、ご丁寧に熊避けの鈴がいくつか付けられていて、チャランチャランとずっと鳴っている。うーん、気になる。自分たちのペースを崩してでもその人から離れようとするが、もがけばもがくほど、その人と同じペースになり、気がつけばまた目と鼻の先で、チャランチャラン……というパターンを何度か繰り返す。ちょっとげんなりした。こんなに人が多い山では鈴、いらんのんちゃうん。

思ったより暑くて、ズボンの裾を膝までまくり上げて歩く。よくドイツ人パッカーが履いていたチャックで取り外す式のズボンが初めてうらやましく思えた。今の時期は下界では山に登るなんて信じられないっていう暑さで、実際、登山する人はどのくらいいるんだろうか、と思っていたが、高山植物も咲いていることもあって今が「シーズン」といっても過言ではない。しかし山頂にたどり着いたらガスって真っ白。ほぼ何も見えず。また来いということだなと、自分を納得させる。

濃い霧だったので、避難小屋のなかで昼食。ちょうど12時になるところ。リュックに入れて担ぎ上げたバゲット、赤玉ねぎ、きゅうり、トマト、オイルツナ缶にブラックペッパー&海塩を振りかけたサンドイッチを作って食べる。すごいボリュームと思ったけど、こういうとき量が少ないと、他の人の食べているものが本当にうらやましくなってしまうので、これくらいでちょうどよいのだ。ブラジル人の子供たちと大人数人のグループがいて、大きな固まりのチーズを切り分けて食べていた。子供たち、下界と同じような格好。えっと、そんな格好で登れるんですね、ってびっくりするが、さすがに薄着すぎて寒い、というようなことを日本語やポルトガル語で叫んでいた。

帰りは、大神山神社に下りる道を採った。こっちに来る人は比較的少なくてのんびり歩けた。が、段差の大きい下りはひどく足に堪え、太ももとふくらはぎがすんごい筋肉痛になり、あぁ~とか、うぅ~とかばっかり言っていた。大神山神社では美味しいお水がどんどん湧き出ていて、水筒を満たしておいた。私の前で汲んでいたちびっこが、「行きは六甲の天然水、帰りもまた天然水や!」と報告してくれたので、「ほんまや!」と応答する。

駐車場に戻って、今夜のキャンプ地へ向かう。大山を南回りに半周ほど走って、今度は東側に抜けたところにある大山池というフリーキャンプサイト。通りかかった国民休暇村にはたくさんのテントが張られていたが、こちらは先客が一組だけ。東屋の近くの木の下にテントを張って、いつでも逃げ込めるように豪雨対策もばっちり。

カレーを作って食べてから、本日のおたのしみ関金温泉「関の湯」へ出かける。暗くなってきて、道に迷いかけたところに、洗面器を持ったオバちゃんを発見。うそみたいなシチュエーションで、無事に教えてもらう。ここのお風呂は、松の木でできた浴槽の他には蛇口などはいっさいない。体を洗うときは、浴槽を囲むように地べたに座り、手桶でお湯を汲んで洗う。この関の湯は株主制度で作られているらしく、株主の家族は1回30円で入浴できるんだそうだ。ビジターの200円でも十分安いけど。帰りにコンビニに寄ってなんか冷たいものでも買って帰ろうか、とナビで店を探すも、一番近くても7km離れていることが判明。今回はキャンプ場にある自販機で、つぶつぶオレンジを買ってお茶を濁した。夜中、軽く雨が降るも、浸水はせず。

朝、雨がやんでいたので、テントを東屋の中に立てかけて乾かしていたら、だんだんと雨足が強くなってきて、雷も鳴り出した。いい機会なのでパンをこねてちょっと発酵させてから、フライパンで焼いて、チョコをはさんで溶けたところを食べた。、このチョコナン、思いつきにしてはうまい具合にできた。もう1組の家族は、豪雨の中、車に乗って家族全員でどこかへ行ってしまった。あとでお父さんだけが、戻ってきてテントを撤収して帰ったところをみると、けっこう近所の人なのだろうか。わたしたちも雨が弱くなった隙をみて撤収。

予定では三朝温泉にある川原の混浴露天風呂に入って帰るつもりだったが、この豪雨では川原もなにもなくなってるんじゃないかと思いつつ、とりあえずそちら方面に向かって行く。途中で、倉吉という町がいい感じ、という「ツーリングマップル」情報を得て、寄り道する。ボランティアガイドのおじさんが、古い町並みを説明して回ってくれると言うので、お願いする。あんまり観光客ずれしていなくていい町だった。各家に残されていた蓄音機や氷冷蔵庫など、レトロなお宝が家の前に飾られていたりするのもよかった。