スコアボード

スコアブックのつけ方を、昨夏に夫から教えてもらってからは、ゲームを見るときはつけるのがクセになった。今回の台湾でももちろんつけている。まだ不慣れなこともあり、記入には球場のスコアボードが大いにたよりになる。

試合が始まるころ、まずスコアボードに表示される出場選手を書き込んでいく。ここ台中インターコンチネンタル(洲際棒球場)のスコアボードは、選手名が横書きで姓名の順番も適当。取りあえず字数が入るところまでの表示である。それに加えて、名前の末尾に気まぐれにポジションが表示されていたりなかったりするため、非常にわかりにくい。ある程度キューバチームの出場選手情報は準備してきているのでわかるはずなのだが、何だかスコアボードの表示がおかしい。昨日までのスターティングメンバーとは順番や名前がえらく違う。しかも、相手が同じくラテン系のプエルトリコだからとはいえ、同姓同名の選手が相手チームにも入っていたりする(しかもグリエルだ)。

これは、おかしいだろ!と周りを見回すもスコアボードに注目している人なんていないようで、普通に試合は始まっている。アナウンスはあまりよくきこえないのであっているのかどうなのかも確かめられない。私としては大事件であり、このままではスコアブックをつけ続けることにも支障をきたす。何より、これは「野球力世界一決定戦」と謳っているこのWBSCプレミア12に対して、ひとこと言ってやる必要があるのでは!と何だかもう試合そっちのけで、ああどうしよう、こんなまま試合が進むなんて恥ずかしすぎるよ、はやく誰か気づいて直してよ、とそわそわする。そこに通りかかった、顔なじみの陳君(超球場常連台湾人、明日は来れないよ、といいつつ毎日現われて新聞やTVに出たりする不思議な学生、日本語勉強中)に、いきさつを説明すると、関係者スタッフを呼んでくれた。そこで私が事前に準備してきたキューバのロースター表を見せつつ、表示がかなり間違ってるよ!と教える。が、だ。取り合ってくれない。「アナタ個人の意見をスコアボードに反映することは無理だよ、ありがとうでもソーリー」って、私の指摘を本気にしてくれない。キューバのようで実はシカゴのCマークの入ったキャップをかぶった怪しい女とでも思ったのだろうか。しかし、このことに関しては譲れない。というか自信があった私はなおもしつこく、冷静な指摘であることを真摯に伝えた。その結果、その若い彼は、本部に連絡を取ってくれると言ってくれたのだった。

これ以上できることはないので、一刻も早く間違いに気づいて直してくれることを祈りながら試合を観戦。ずいぶん経ったころ、スコアボードが、ぱらぱらぱらぱらと滝が流れるように、変化した。この瞬間を私以外で何人の人が目撃したのかはわからないが、感動した。思いが通じた。感謝せいよ、WBSCと言いたい気分だった。その後、先の彼が私のシートを見つけて(どうやって??)来てくれて、感謝の言葉とともに袋入りのソックスらしきものをくれた。ははっ、ソックス。大会公認の台湾応援グッズの青いスポーツソックス。嬉しいような悲しいような。いいんだ、大事なのはソックスではない、気持ちだから。