岡山、桃。

10年ほど前、ドイツのシュツッツガルトでお世話になった日本食レストランで当時働いていた人が、一時帰国していて、実家に遊びに来ないかと言ってくれたので、遠慮なく1泊で行ってきた。誘い文句が「うちの母が面白いひとだから来るといいよ」。実母が面白いよ、ってのもはじめて聞く言葉なので、興味津々だった。

実際あってみると、すごい人で、親がやっていた桃畑を継いで、生産から出荷まですべて1人でやっているのだという。今で10年くらいといったから、50歳くらいからのスタートである。その間、農業大学校に入って果樹について勉強もしたのだそうだ。1年のうち休める時期はほとんど無く、ずっと忙しいらしい。平行して畑もやってるのかと思ったら、「そんな暇ない」とのお答え。ふつうなら誰か雇うでしょ、っていう規模なのである。でも、面白いよ~、と心 か ら楽しそうに言うこのひとが面白い。 桃は、1年のうち旬はたったの10日ほどだそうで、今は清水白桃が終わったところでひと段落。でもまた次の品種が始まるのだそうだ。毎年、どんな味になるかはわからないから、祈るような気持ちで育てているという。あぁ、ほんとうに大変な仕事。でも、やりがいはあるんだろうな。その桃畑の周りを取り囲むように、趣味のブドウが伝わせてあって、夢のような景色になっている。キャンベルとデラウェア。種があって、野性味のある強い味 が美味しい。農業やるんだったら、岡山はいいよ~、とお父さんお母さんが口をそろえて言う。四国がブロックしてくれるから災害も少ないのだそうだ。うちの現況を話したら、まぁ、あと何年か、何ができるかいろいろやってみるといいよ、と言ってくれてなんか、また相談しに来ます、と言いたくなる素敵な人たちなのだった。