「野宿入門」

どこでも寝られるという自由

「野宿入門」 かとうちあき (2010年)


人生をより低迷させる旅コミ誌「野宿野郎」の編集長(女性)による、野宿をゆるーく勧める本。終電を逃したときに仕方なく行う消極的野宿から、旅先にて自分の意志で選ぶ積極的野宿まで、レベルに応じた野宿ガイドになっている……ような、なってないような、とにかく野宿ってなんかいいもんだなあと思わせてくれます。自ら突っ込みをいれつつ展開される文章も楽しい。

きっとルーチンの行動から少しだけずれてみると、そこには非日常でまったく知らない世界が広がっているのでしょう。普段生活している日常なんて、数ある世界のうちのたかがひとつに過ぎない。野宿をすることによって、世界の眺め方が変わるのである。…などとわかったようなことを言う前に、まず体験せよ自分!

いや実際、蚊の襲来あり、寒さとの戦いあり、周囲の人々にも気を使い、と、やってみるときっとそれなりにハードな野宿体験。だからこそ、無事に朝を迎えたときの爽快感が格別なのかもしれません。

この本を読まずして、いつだったか履歴書の特技欄に「どこでも寝られる」と書いたことのある自分は浅はかでした。ほんとにどこででも寝られる自信があれば、もっと自由を感じられるんだろうなあ。そんな低迷人生なら悪くない。(T)

(2011.6)