旅行の本当のはじまりは空港から町へ向かうとき!と信じて疑わない私たちは、空港から町へのアクセスをいかにローカルの人たちと同じくするかに結構こだわる。しかしボルネオ島、のっけから困難。インフォメーションの人によると、基本がTAXIだというのだ。でもバスも1時間に1本くらいは来るだろうというので、バス停まで歩いていくことにする。
空港から出るとその気温差とまだ背負いなれていないリュックの重さに、一瞬ひるむのだが、そこはまだ序盤ということでカバー。炎天下をてくてくてくてくとバス停へ向かう。バスの来る大通りが見えた時、バスらしきものがスーッと通っていったのが見えた。あれに乗るはずだった。次は1時間後かよ~。
ま、とにかくバス停でココナッツクリーム入り菓子パン(美味しくて気に入っている)を食べて様子を見る。たくさんのバスが通り過ぎていくのだが、そのバスの側面には全て”BAS PERSIARAN”と書かれていて、どうやらそれは、プライベートバス的な意味合いらしい。やっぱり1時間待ちか。タクシーか普通の善良な市民かわからん男性の乗った車が目の前で止まり、乗せてあげるっぽいことを言っているが、見極めがつかず笑顔で断る。
私たち以外にバスを待っている人はいない。道を歩いている人もほとんどいない。たまたま女の子が通りがかったので、バス来る?って聞いてみたら、「来ないわ、何でか知らないけど最近来ないの。だから私もこうして歩いてるの」と、汗を拭きながら言った。もう少し先に行けばバスが来るかもと教えてくれたので、歩き出す。
しばらく行くと、バス停は見つからなかったが、よく流行っている食堂があった。急がば回れで、お昼ご飯でも食べて考えることにした。周りの人が食べている汁なしラーメンみたいなものをうちらも頼んで待つ。インスタントのような麺のわりになかなか出てこず、オーダーが通じているのかどうか不安になってくる中、背中越しに隣の席の家族の会話が聞こえてきた。
「ハーバード、イェール、ケンブリッジ……」「ハーバード、イェール、ケンブリッジ……」
えらく教養のあるご家族のようだ。ピンと来るものがあって、町への行き方を訊ねてみたら、案の定、話のわかる人たち。一家のお父さんはかつて日本の学校に行き福岡で働いていたことがあるらしく、片言の日本語も話してくれた。そして食事の終わった私たちを、トヨタの四駆でホテルの目の前まで送り届けてくれたのは言うまでもない。幸先がいいのであった。
車の座席を空けるため私たちのリュックにうずれもれてしまった男の子はちょっとかわいそうだったけど、オーケーオーケーとけなげだった。「ハーバード、イェール、ケンブリッジ」のどれかに行って、立派な人になってほしい。