ドゥ-ズの町から、らくだに乗って砂漠の1泊ツアーに行った。その理由のひとつは、ベドウィンのパンが食べたいから。砂漠の砂の上で焚き火をし、その火というか灰の間で焼く、小麦と塩と水のみのシンプルな平焼きパンである。
満天の星空の下テントで寝て、薄明るくなるころ、目が覚めた。朝日を見ようと起き出すと、地平線沿いにピンク色の空。そして遠くに焚き火が見えた。もう、パンの仕込みがはじまっていた!急いで駆けつけると、生地を砂に敷いた布の上で大きく大きく手で伸ばしている最中だった。ほんとは粉を水と混ぜるところから見たかったけど、仕方ない。あっという間に直径50cmほどの円盤になり、燃えている火を崩して、ならしたところへ、その円盤を置き、上から灰をかぶせて、あとは待つだけ。ここで、何分くらい焼くの?と聞きたかったのだが、聞けなかった。なんか聞いてはいけないような神秘的な雰囲気があったからだ。この人はどっちにしろ時計なんて持ってないし、計ってもいないのだから。でも携帯は持ってたりする。焼きあがるまで、砂漠を散歩して写真を撮ったりしていると、「パンパンパン」と音が聞こえる。あ!これはパンをたたいて灰を落としている音だ!あわてて駆け戻り、近くでその様子を眺める。ほぅー。素敵。惚れそう。ベドウィンの平焼きパンが焼けるオトコ。うちの夫にも海辺で練習してもらおう、日本に帰ったら。でも、砂漠の砂って、すごく細かいような気がする。砂浜とはまた違うかもしれない。ベドウィンの男は、焼きたてのパンを一口ちぎって食べさせてくれた。期待を裏切らない、噛めば噛むほど味のするいいパンだった。