神谷先生 研究通信
No1
「黄金の3日間」に全力投球
あと2日で始業式。新しい年度のスタートです。
人数の多い学校では、学年会議を行って、それぞれの学年で学年運営の仕方を話し合いながら進めて行きます。新任の先生はそこでさまざまなことを教えてもらいながら仕事を覚えていきました。
ところが、八幡屋小学校では全てが単学級。そんな機会がほとんどありません。他学年の先輩に教えてもらおうとしても、なかなか声をかけにくい状況があるのも事実です。そこで、少しでもお役に立つことができれば、と思って本通信を出すことにしました。
今、私の健康状況も、家族の状況もおおむね良好なのでスタートしましたが、元来、通信はあまり得意ではないので、いつ途切れるか分かりません。予めご了承ください。
1「黄金の3日間」とは?
4月の学年はじめ、子ども達との出会いから3日間のことを指します。本年度でいけば、4月8日、11日、12日のことです。
子どもたちも学年が上がり、新たな気分で新年度を迎えます。人数の多い学校ではクラス替えもあり、担任の先生も変わって、やんちゃな子たちも初めの数日間はおとなしくしてくれています。
そんなときに、担任がしっかりと準備して、新しい学年の方針をどんどんと打ち出して、うまく学年のスタートを切ることを目指します。プロ野球で言うところの「スタートダッシュ」ですね。
ところが、八幡屋小学校では単学級なので、クラス替えがありません。周りの友達がそのままなので、新学年になっても周囲の環境は変わらないのです。担任の先生は代わるので、そこで少しは変化もあるのですが、負の連鎖があるときはなかなか断ち切れるものではありません。
私は八幡屋小学校に来て3回「黄金の3日間」を迎えましたが、今までに一度も始業式の日に子どもたちが担任の話を「シーン」と聞いてくれていたことはありませんでした。最初から、けんか、手遊び、よそ見、立ち歩き、勝手発言、勝手行動等の連続でした。
それでも、スタートダッシュは大切です。
子どもたちが担任の話を聞こうとする態勢が整っていなくても、1つ1つ教えていき、学校での生活習慣、学習規律を樹立しなければ、子どもたちの成長は望めないからです。
2 良いスタートダッシュを切るためには
ずばり「準備」が大切です。
新学期の準備は本当にたくさんあります。教材を選択したり、校外活動の場所を決めたり、校務分掌の担当の仕事をしたりと。
もちろん、そのお仕事も周りに迷惑がかからないようにやっていかなければなりませんが、若い先生方に一番大切にしてもらいたいのは、
「子どもたちを統率すること」です。
新学期、新しい学年を担当したら、次のようなスパンでの目標や計画を立てます。
1 黄金の3日間でやること
2 スタートの1週間でやること
3 GWまでにやること
4 1学期にやること
5 前期に押さえておきたいこと
6 1年間を通し学年相応の力をつけるために
No2
「学級のシステム」って?
1 スタートダッシュの準備
新年度を迎えるにあたっての準備は、春休み中にできればいいのですが、さまざまな事情があって、そんなにスムーズにはいかないのも事実です。
今から始めるには、どうするか。
次の期限を決めます。
1 黄金の3日間 ・・・・4月8日までに
2 スタートの1週間・・・・4月11日までに
3 GWまでにやること・・・4月18日までに
4 1学期中にやること・・・5月9日までに
5 前期 ・・・・・・・・夏休み
6 1年間 ・・・・・・・・夏休み
まず、ノートを作ります。
そして、どんなことをやっていかなければならないか、ノートに書き出します。
書き出す内容は、多くの先輩たちがやってきているので、まずはそれを「真似ること」です。
私はその情報を得るために、サークルに入ったり、セミナーに参加したりしてきました。
「よりよい情報は生命線」です。
これは、古今東西、共通の教えだと言えます。
何でもそうですね。健康管理、受験、金融、戦争に至るまで、充実した結果を得るためには、まずは有効な情報を獲得することです。
でも、今から急に広い大海から情報を獲得している時間はなさそうですので、ここに少しその例を示します。ただ、これも「普遍の法則」ではありませんので、あくまでも参考になさってください。
2 学級のシステムを考える
「システム」と書くと、変に抵抗感を感じる方がいるかもしれませんが、この世の中、社会のさまざまなシステムによって支えられています。学校もそうですね。何日に学校が始まり、何時から何時まで学習時間で、給食は誰が作って、先生たちは何年生を担任して、と。これらもすべてシステムです。それがあるから、動けるわけです。
だから、子ども達にも学級でのシステムを提示してやる必要があります。
子どもたちがまず登校したらどうするのか。
1 くつはどうするの?
2 朝、人と出会ったらどうするの?
3 教室まではどうやって行くの?
4 教室についたら、まず何をするの?
5 荷物は、どうするの?
6 片付けるときは、どんな順番でどうやるの?
7 宿題はどうするの?
8 先生に出さないといけないものは何なの?
9 チャイムが鳴るまで、何をすればいいの?
10 先生がいないとき、何をしていてもいいの?
このような「日常の生活習慣」というのは、就学前にだいたい身についているものです。それが、年齢相応の普通の発達をしている子ども達の発達段階です。ただ、それに当てはまらない子達がいます。「特別支援対応」が必要な子達です。
特別支援については、後日、詳しく記しますが、どうも、八幡屋小学校には、この特別支援対応が必要な子どもたちが多いようです。だからこそ、学級を安定させ、子どもたちの発達を促すためにも、この「学級の安定したシステム」が必要になってきます。
No3
「出会いの日」に際して!
1.目的と目標をまず明確にする
いよいよ明日が始業式、子ども達との出会いが待っています。今、「こんな子たちになってほしい」「こんな学級にしたい」という「目的」をもっていることと思います。その「目的」を遂行するための1つ1つのプロセスが具体的な「目標」になります。
私は八幡屋で担任した子ども達によく次のように言っています。
「将来ね、先生は君たちに人をしっかり愛し、人から愛されて幸せに暮らせる人になってほしいの」と。
そのためには、人との付き合い方をしっかりと学ばなければならない。今の言葉づかいでは、人から愛される人にはなれないよね。それでは先生は悲しいし、君たちの小学校のときの先生として、なんだか申し訳ないから、今のうちにちゃんと直す勉強をしてほしいの。
つまり、「学校のルールを守る」ということ1つとっても、「将来、安心して安全な社会生活を営むために、必要な素質を養う」という目的のために、必要な目標になります。
大きな目的を達成するための具体的な行動指針のようなものが目標ですね。
たとえば、学級開きに際して、「クラスのみんなが仲良く、いきいきと活動できるクラスにしたい」という目的を持ったとします。
でも、その目的だけをいくら言葉で掲げていても、子どもたちの状況はよくなりません。それは、具体的な方法を知らないし、今までの体験も乏しいからです。
目的を達成するための1つ1つの方法を考え、提示していくのが「指導者」の仕事になります。その指導がしっかりとできてこそ「統率者」になれるわけですね。
2.出会いのときを大切にする
前号で「八幡屋小学校にはいわゆる黄金の3日間はないと覚悟したほうがいい」という内容のことを書きました。子どもたちがシーンと教師の話を聞いてくれるという「黄金の3日間」はありません。でも、やはりこの出会いの3日間は黄金の3日間なのです。
それは、子どもたちがその時の担任の印象によって、その先生のイメージを大きく作ってしまうからなのです。
一番いいイメージは、
① 先生、好き (好意)
② 先生ってすごい (尊敬)
③ この先生の言うことは聞こう (信頼)
と思わせられることです。
ただ、一日でこんなイメージはなかなかできないのですが、反対のイメージはすぐにできてしまいます。
① 先生、嫌い。
② 先生ってだめだなあ。
③ この先生は逆らっても大丈夫。
こうなってしまったら、学級崩壊の亡霊に取りつかれてしまいます。そうならないためにも、
学級開きという出会いのときを充実したものにする必要があります。
だから、「黄金の3日間」を迎えるにあたって、準備を整えて、今の自分の最善を尽くすことが大切だと言われているのです。
No4
「ヤハタヤ丸」の大原則
1.学校は何をするところ?
学級開きの時、私は子どもたちに次のような内容のことを言うことが多いです。
① 学校は、国語や算数のような教科の勉強の
力をつけるところ
② 学校は、お友達と仲良くする勉強をするとこ
ろ
③ 学校は、将来立派な社会人になるために必要
な良い習慣を身につけるところ
この3つに決定した法的根拠や社会的事情等については、後日、説明します。
と言いますのも、このような「所信」を表明したくても、なかなかそこまで子どもたちの成長がついていっていないことが、今まであまりにも多かったからです。
「黄金の3日間」のシナリオを準備し、出会いの日の話の内容を決定して、覚悟を決めて子どもたちの前に臨んでも、子どもたちはそんな話を聞く耳をもっていないのが実情でした。
あくび、よそ見、手遊び、ぼんやりした目、
貧乏ゆすり、勝手発言、トイレ攻勢・・・・・。
「頑張って学級を築いていこう!」という、こちらの熱意をいっぺんに打ち砕いてしまうような子どもたちの様子に、何度もくじけそうになりました。
2.脳の本能は「賢くなりたい!」
「どうしてこの子たちは、こんな風になってしまったのだろうか?」
カルチャーショックを受けているだけでは何の解決にもなりません。自分なりに調べて、原因を追究してきました。
その原因の最大のものは、「子どもたちの生活環境」にありました。
もちろん、子どもたちの生活環境を全て改善することは不可能です。でも、次の言葉に出会いました。
「学級での最大の環境は担任である」
現在の子ども達を取り巻いているマイナスの因子を取り除くことはできなくても、自分自身がプラスの因子になることによって、少しでも現状を変えることができるのではないだろうか。
このような仮説を立てて、やってみました。
もちろん、科学的なデータは出ているものです。
ただ、自分自身がそれを実行できるだけの力と覚悟があるのか、そこが問題でした。
しかし、それをやらない限り、子どもたちの状態はますます悪くなって、学級崩壊の亡霊が待っています。やるしかありません。毎日、顔で笑って心で泣きながらやっていました。
時間はかかりました。前の校長先生がよくおっしゃっていた「歩留り」のたいへん悪い子達です。いくら、教えても、教えても、まず「聞く耳をもたない」ところからのスタートです。
ところが、あるとき、ふと気づきました。
「これだけ教え甲斐のない子達なんだけど、やはり『賢くなりたい』『仲間になりたい』という願いはちゃんとあるんだなあ」と。
これは、「人の脳の本能」のようです。その本能に発火してくれるときを信じて、とにかくあきらめないでやり続ける。ヤハタヤ丸の大原則の1つです。
No5
「空白の時間」の禁止
1.学級全体の分析
今まで多くの学級崩壊を見てきました。
学級崩壊には大きく分けて2つの型があると言われています。
1 4月当初は平和だったが、その後の教師の指導力不足によち陥ったタイプ
2 4月当初より、特別支援を必要とする児童にかき回され、その対応がうまくいかずに騒乱状態に陥っているタイプ。
学級集団を分析すると、2割の安定層、6割の中間層、2割の特別支援が必要な層、の大きく3段階に分けられると言われています。
安定層は、どんな状況にあっても崩れない子達です。もともとお勉強ができたり、家庭教育がしっかりしたりしていて、安定しています。 特別支援が必要な層は、自閉症スペクトラム、ADHD、LDの発達障がい(先天的なもの)があって、特別な支援が必要な層です。中間層は、その中間にあって、指導や環境によって安定層にも、危険層にも移行していきます。
前校長がよく言っていた、「指導対象」は安定層と中間層の8割、「支援対象」は2割ということになります。「指導対象」は、年齢相応の発達をしていて、学級担任一人の全体指導で大丈夫な
子達です。
ただ、八幡屋の現状は厳しくて、この特別支援層及び環境要因的特別支援層が多くて、もう少し、割合が変わってくるようです。
いずれにしても、この6割の中間層を安定層に近づけるか、それとも特別支援対象層に近づけてしまうかで、学級の命運が決まってしまいます。
2.学級崩壊の一番の要因
私が今までに見てきたたくさんの「学級崩壊」の要因は、「空白の時間」が多すぎることだと感じます。
「空白の時間」とは、授業中やる課題がなかったり分からなかったりして、「何もすることがない」時間のことです。
何もすることがないとき、子どもは初めぼんやりしていて、次第に他の遊びを行うようになります。その空白の時間があまりにも多かったり、頻繁に繰り返されたりすると、子どもは初めから遊びを始めます。そして、次第に教師の指示も聞かなくなって反抗的な態度をとるわけです。
子ども達だって本能的に「賢くなりたい」と思っていますので、「やることがあって、やり方が分かり、やっていて楽しい」ことならば、集中して取り組みます。
ところが、やることがなかったり、やりかたが分からなかったりすると、もちろん楽しくありません。すると、少しでも楽しみを見つけて、「遊び」になってしまうのです。
いわゆる「中間層」が、この「空白の時間」によって遊びに走ってしまう子たちが増えてしまったら、「学級崩壊」になってしまいます。
では、どのようにしたらこの「空白の禁止」が維持できるのか。
まずは、自分自身で考えて、実行すること。それだけでも、多くの問題が解決できるかと思います。そして、教師自身がその意識をもって、さまざまな情報を獲得し、追試してみることです。
No6
「学級を組織する」(給食編)
1 給食指導って何を教えるの?
学習指導要領では、学校給食は特別活動の学級活動に位置づけられています。つまり、給食の時間は準備から後片付けまでが「授業中」ということになります。
学習指導要領では、学級活動について次の目標があります。
[学級活動]
1 目標
学級活動を通して、望ましい人間関係を形成し、集団の一員として学級や学校におけるよりよい生活づくりに参画し、諸問題を解決しようとする自主的、実践的な態度や健全な生活態度を育てる。
そして、「学校給食法」の目標の中に、次のものがあります。)
三 学校生活を豊かにし、明るい社交性及び協同の精神を養うこと。
ただ「食べる」だけではなく、人間関係を良くし、社交性や協同の精神を養えるように指導しないといけないわけです。
つまり、協力して給食の準備をし、食事のマナーを身につけて、給食の片付けまでしっかりと行う。それによって、子どもたちの生きる力を育んでいくわけです。
2 給食時間は大切な授業の時間
子どもは4時間目のチャイムが鳴ると、一気に学習の緊張感が解け、リラックスムードになります。お友達とぺちゃくちゃしゃべったり、だらだら廊下を散歩したり、「お昼休み」の雰囲気が漂うことも少なくありません。
だから、まずは「給食時間は授業中です」ということ をおさえます。
授業中なのだから、「ただおなかがすいているから給食を食べる」だけでなく、先生の指示に従ってたくさんのことを勉強し、自分たちの身につける必要があるわけです。
では、どんなことを指導すればいいのでしょうか?これは、各学級担任の裁量に任されている部分ですから、担任自身がその方針を定めて、学級の実情に合わせて行っていけばいい部分です。
3 給食時間で何を教えるか
この給食の時間は、年間200回程度ありますから、きわめて貴重な指導時間になります。これを生かさない手はありません。給食の指導を通して、様々な面の成長が期待できるわけです。
1 身支度、環境整備
2 給食当番システム、協同作業
3 リクレーション的なおかわりシステム
4 食事のマナー
5 給食担当の方とのコミュニケーション
6 食育指導
7 食文化の伝達
8 健康維持や体作りの保健指導 等
4月はまず、
1 身支度、環境整備
2 給食当番システム、協同作業
をしっかりと確立して、運用していかなければなりません。さまざまなシステムがあります。学年や学級の実情に応じて、子どもたちがスムーズに動けるように組織することが大切です。
No7
「学級を組織する」(清掃編)
1 学校の教育活動で清掃指導は必要か
こちらは給食と違って、子どもたちに清掃指導をしなければならない法的根拠はありません。海外の事情を見ると、学校で子どもたちに清掃をさせている国は少数派です。
では、なぜ日本では法的根拠もないのに、ほとんどの学校で清掃活動を行っているのでしょうか。
これは、戦前の教育にさかのぼります。戦前、修身の教科書に清掃の大切さに関する記述がありました。昔は今と違って、衛生面での状況が悪かったから、掃除をこまめにする必要があったのでしょう。また、日本人は昔から町をきれいにする文化があったので、その習慣が残ったのかもしれません。
私は、個人的には「学校教育での清掃活動推進賛成派」です。
その理由は、「清掃活動は将来の就労の基本を養う」と考えるからです。
掃除は、結果がすぐに目で見て実感できるし、集中して行えば、時間も短縮できます。効率よく結果を出す練習を日々重ねているわけです。子ども達には、「将来、お仕事ができる人、自分の夢をかなえられる人になるために大切なのよ」と言っています。
また、障碍者と共に暮らしてきたので、その歩行や生活の妨げになるものを放置することは許されませんでした。そんな視点がユニバーサルデザインとなり、子どもたちの人間性(いわゆるEQ、非認知能力)を高めることにつながります。
国立大学を卒業しても、就労しない人が2割から3割に増えてきていると言われています。これは社会の大きな損失でもあり、税金の無駄遣いです。それを防ぐ一番の手立ては、家庭教育ですが、学校教育の場の中でも、日々の清掃活動は絶好の機会だと思います。
2 率先垂範
山本五十六の名言に次のものがあります。
やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、
ほめてやらねば、人は動かじ。
これは、次のようにも言えます。
やる意味、やること、やりかたが分かってほめてやれば子供は熱中する
最近は、ロボットがお掃除をしてくれる時代になりましたから、子どもたちはびっくりするほどお掃除の仕方を知りません。
ほうきの使い方、雑巾の絞り方、ゆすぎ方、ビニル袋の口の縛り方まで、1つ1つ全てのやりかたを教えなければなりません。教科学習以上に個別指導が必要な子どもたちがたくさんいます。
だから、たいへん手間がかかりますし、教師が1つ1つやってみせて教えていかないといけません。
ところが、自分が子どもたちの間に入って率先して行っていると、意外な子がたいへんうまいということにも出会います。そんなときは、力強くほめる大チャンスです。そして、そんな子をモデルにして、他の子達に真似するようにも指導できます。 つまり「教室内での逆転現象」をたくさん生み出すチャンスにもなるのです。
掃除指導のシステム、かっちりしたものを樹立させたいものです。
No8
「しつけの3原則」
1 しつけでの重点事項
八幡屋小学校では、生活習慣の樹立、学習規律の確立を研究の視点にも入れて力を入れて指導を行っています。
でも、あまりにもその指導内容が多岐にわたっていて、何から手を付けたらいいのか分からない、というようなことがあるかと思います。
こういうときは、先人の教えから探すようにしています。
大阪出身の教育哲学者だった森信三氏は、「しつけの三原則」というのを提唱されています。これは、「おはよう」、「はい」、「はきもの」の3つです。
1.特に朝、「おはようございます」と明るくあいさつをします。
2.呼ばれたら、「はい」と返事をします。
3.はきものをきちんとそろえ、席を立ったら椅子を入れます。
私はこれをもう四半世紀にわたって意識して取り組んできました。もちろん、これ以外の躾面の指導も行っていますが、まず基本はこの3つに絞っています。これは、4月当初から3月の修了式まで、徹底的に「率先垂範」で指導を続けていますし、子どもたちができていないときには、かなりこだわって指導しています。
と言いますのも、大人数相手では、多くの項目を指導したくても、その指導の中で抜け落ちるところもあるかもしれません。また、全てにおいてあまりにも徹底指導を行うと、逆効果もときにはおこるからです。でも、「ここだけは引けない」「ここだけはきちんと押さえておきたい」というものを作っておくと、だいたいは他への波及効果もあり、良い方向に進んでいくことが多いからです。
2 三原則の意味
「あいさつする」というのは、人とのコミュニケーション力を養う意味があります。いくら勉強ができても、社会でドロップアウトしてしまう人物になってしまっては、元も子もありませんよね。
だから、毎日のあいさつの仕方を徹底指導するだけでも、多くのことが得られるのではないでしょうか。
「はい」の返事については、相手意識と素直な心を培います。人は成長していく過程において、必ず誰かから指導をうけて成長します。そのとき、相手に対して敬意を表し素直に聞き入れることができる子が伸びていきます。その素地を育てるのが、まずは返事だと考えます。
そして、「はきもの」は、つまり「後始末」に通じます。これは日本では禅宗の教えから広がった文化のようですが、これもなかなか定着しません。でも、半年、一年続けていると、だんだん子どもたちが落ち着いてきます。そして、この「はきものをそろえ、椅子をしまえる」ようになったころから、テストでもケアレスミスが激減してきます。テストで満点がとれるようになる子がどんどん増えてくるのです。
森信三氏は「はきものや椅子の始末ができるようになると、将来、金の始末ができるようになる」と言っています。すなわち、「将来、お金に困らない人になるため」にも、この「後始末」の習慣は必要なようです。
No9
「忘れ物をしたとき」
1.子どもが忘れ物をした時の指導
どんな子だって、忘れ物はするものです。ただ、その頻度とタイミングによって、かなりこちらも困りますし、時にはいらいらすることがあるのも事実です。
しかし、日々繰り返されるこの「忘れ物」にどのように対応するかという一定の路線を確立しておかなければなりません。
私は次のように行っています。
1 連絡帳に日付を記して、赤鉛筆で
○わ国語のノート
というように、忘れたものを記して担任まで報告にくる。
2 それを差し出して、
「神谷先生、国語のノートを忘れました。ごめんなさい。」というように、謝罪する。
3 そして、「国語のノートプリントをください」のように、担任にしてほしいことを依頼する。
この「報告」「謝罪」「依頼」の3点セットを必ずセットで行います。
ただ、忘れ物が「宿題」や「提出物」のときなどは、3つめが「明日必ずもってきます」等の
「今後の対応(自分がどうするか)」の報告になります。
連絡帳に赤鉛筆で○わと書かせるのは、保護者にも注意を喚起する意味と、今後繰り返されるであろう忘れ物について、その防止策を定着させる意味があります。
もちろんこれは一例です。他にもっとよい方法があるでしょう。大切なのは、忘れ物に対応するシステムが、学級に存在していること、そして、忘れ物をしたときにもしっかりと指導できるシステムがあることです。
2.言語指導、生き方指導にもつなげる
私がこのように「報告」「謝罪」「依頼」の3点セットで忘れ物指導システムを行っているのは、次のエピソードがきっかけでした。
それは、日本の国語教育の第一人者であった芦田恵之助のあるエピソードです。ある日、ガラスを割った子どもが「ガラスを割りました」という報告だけをしたそうです。そこに、「ごめんなさい」という「謝罪」がなかったので、国語教育の未熟さを悲しみ、全国を行脚するようになったようです。
このような子ども達との対応1つ1つの中に、国語教育を意識することで、やっと子どもたちの国語力や言語力が身についてくるのでしょう。
「忘れ物」というマイナス因子の対応をしているのですから、これをプラスに変換できる指導を積み重ねることによって、少しでも子どもたちの成長を促すことにつながれば、こちらの指導が積み重なることになります。
また、忘れ物指導システムの大切さは、それがあやふやな場合、子どもが「ごまかす」「正直に言わない」習慣が身についてしまいます。これは、一番避けるべきです。
人間とは大人になっても何かしらミスはするものです。それをごまかしたり報告しない習慣が身についてしまったりすると、後でとんでもない大きな事故や事件につながることがあります。「正直は一生の宝」という言葉と共に、その資質を育てる意味も含まれています。