継承と発展①:社会科教育「体験と系統」
昨日のダイアリーで吉永先生から
「継承と発展」という素晴らしいキーワードをいただいた。
http://sns.tos-land.net/diary/624041?comment_count=3
手始めとして(^_^)?
2011年度社会科教育に連載した
「授業者からみた社会科論争史」をSNS上にアップするところから始める。
この連載は谷先生と連名。
基本私が書いて、谷先生に見てもらい直し
更に、樋口編集長が細かに教えてくださり
更に直して・・・・の作業を一年間くり返したもの。
テーマがテーマだけに
毎月かなりのことを調べた。
大学の図書館に通いまくった。
樋口編集長もかなり力が入っており
毎回叱咤激励?を受けながら書いた物だ。
明治図書でお蔵入りするのはあまりにも自分でもったいないので
SNSに記録として掲載する。
まずは第1回「体験と系統」
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授業者からみた社会科論争史
白熱の あの頃 あの時を検証する
はいまわる社会科と系統的な社会科
~社会科存立の理論的根拠
体験と系統の論争を踏まえ、新しい内容・枠組み・体験要素を取り入れた社会科授業が必要である
川原雅樹(兵庫県篠山市立城南小学校)
谷和樹(玉川大学准教授)
一はいまわる社会科と系統的な社会科
「体験重視の社会科」「系統的な社会科」は、戦前から現在まで社会科教育論争の中心である。
「体験重視の社会科」は社会科学を系統的に教えようとする研究者・実践家から「はいまわる社会科」と批判されてきた。
「系統的な社会科」は「体験重視」の研究者・実践家から「知識の詰め込み、子どもの生活無視」と批判されてきた。
現在の社会科授業検討会でも、二つの論は主張される。
「子どもは活動しているが何をしているのかわからない。」
「教師が引いたレールの上を子どもが行っているだけだ」等である。
「子どもが目的もなく活動しているだけの授業」
「プレゼンのように子どもに活動が全くない授業」等どちらかに偏っている授業も現場にいると珍しくない。
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現代に必要な内容と活動を入れ、単元として組み立てていく。
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体験と社会科学の重要さを私たちはこれまでの論争で学んだ。
現代に合わせ、この二つを進化させていくことが私たちの役目である。
二 時代に合わせた内容と方法を
社会科が誕生した1947年学習指導要領・社会科編(試案)を見てみよう。
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社会生活がいかなるものかを理解させ、これに参興し、その進展に貢献する能力態度を養うということは
(略 川原)
従来も修身・公民・地理・歴史・実業等の科目は、
直接この仕事にたずさわって来たのである。(略 川原)
これらの科目によって、生徒は社会生活に関する各種の知識を得たけれども、
それが一つに統一されて、実際生活に働くことがなかったのである。
社会科はいわゆる学問の系統によらず(略 川原)社会的経験を廣め、また深めようとするものである
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新教科「社会科」は戦争に突き進んでいった系統的な教育を反省し、
体験を重視しようという時代背景から出発した。
以降、時代背景に合わせ最初の十年で系統学習に、
その後、約三十年毎に「体験」「系統」が交代しながら現れるようになる。
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│①1947年│体験重視│戦前の反省 │
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│②1958年│系統重視│スプートニク│
│ │ │ショック │
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│④1977年│体験重視│受験戦争過熱│
│ │ │化・ゆとりへ│
│(1989年)│ │生活科新設 │
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│⑦2008年│系統重視│学力低下 │
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今後三十年はまた「系統学習重視」ということになろう。
例えばこれまでの指導要領では都道府県名を覚えることまでは書かれていなかった。
それにより自分の県の位置もわからない子どもたちが出てくるようになった。
これでは社会科学の理解は難しい。
体験重視の弊害である。しかし今後の流れによっては
見学等ほとんどされない詰め込み型の授業も出てくる可能性もある。
例えば「運輸」「情報技術」「裁判員制度」など時代に合わせ教える内容は変化している。
そのことを私たちは授業により「新しいことを知らせる」こともある。
「多くの事例や体験から社会科学の真理に気付かせる」こともある。「話し合いや討論などから理解させる」こともある。
授業には「体験」「科学的な内容」「系統」全てが必要なのである。新しい内容を新しい方法で教えていくことが今後必要となる。
三 「体験」「系統」両方の有効性
「体験」と「系統」。民間教育団体の論争で有名なのは次の二つである。
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│ │年│論争名 │体験│系統 │
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│①│1953│勝田・梅根論争│梅根悟│勝田守一│
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│②│1962│大槻・上田論争│上田薫│大槻健│
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①勝田・梅根論争は、勝田守一の「小四までは体験重視の総合的な社会科を、
小五以降高校までは「歴史」「地理」等、系統的な社会科を」という主張を、
当時体験から編成するコアカリキュラム重視の梅根らが「社会科を解体するものだ」と批判したものである。
②大槻上田論争は、その約10年後、教育科学研究会(教科研)大槻氏が初志の会、
長坂瑞午の論を「科学や客観法則を一切放棄した暴力的学習論」と述べ、
初志の会、上田薫氏が反論した所から論争が始まっている。
前者の論争では「系統重視」の勝田が「体験と系統を融合した社会科」を提案している。
後者では「体験重視」の上田が「系統が実現すべきであるのは、子どもの中であって、教師の机の上ではない」と述べている。
どちらも重要な指摘である。
今振り返ると、両者とも「体験」「系統」両方必要であることを述べているのである。
四 新しい体験と系統を融合させる
現在必要なのは「新しい社会科学の内容を新しい技術等を用いながら体験的に授業する」ことである。
どれが欠けても子どもは社会科好きにならない。
実際の教室には約一割の発達障害の子どもたちがいる。
教師が熱く語るだけの授業、体験がない授業にはほぼ参加しない。
ここから授業崩壊・学級崩壊が始まる。
この子どもたちも知的な内容の授業は大好きである。
体験を伴う授業は大好きである。
この子たちを含めたクラス全ての子どもたちが
「楽しい」「よくわかる」達成感のある授業が現代の社会科授業には必要である。
これからの授業は、例えば、日本領土と他国との関係に関する問題、
IT技術の問題点を克服しながら使いこなしていく技術等、
新しい内容と系統性、枠組みが必要となろう。
そして説明や詰め込みでない、
例えば電子黒板等、新しい技術を使った授業が必要であろう。
新しい内容を新しい技術で体験させる。そんな教師の技能が今後は必要となってくるのである。