⑨ 4月12日(土) 東台野球場
5対0で迎えた最終7回、1点を取られ、なおもノーアウト3塁のピンチ。ここで相手3番後藤選手の鋭いライナーがレフトを襲う。誰もがタイムリーで2点目かと思ったその瞬間、名手山下が地上スレスレでスライディングキャッチ! そのまま矢のような送球をサード末永に送ると、3塁ランナーはあわてて戻ったものの間に合わず、鮮やかなダブルプレー! モメンタムは一気にビッグアプセットに傾いた。
しかし、新宿ぶんぶんも執念の粘りを見せる。4番神戸選手の打球はセンター頭上を越える長打コースに。スリーベースヒット確実と思われたその時、驚愕のプレーが飛び出した! 打球に追いついたセンター黒田が素早くボールを拾い上げカットに入ったショート西村に送ると、強肩西村は振り向きざま約50メートルの距離をサードへストライク送球。駆け込んできた神戸選手より一瞬早くボールを納めたサード末永のグラブが打者走者の意志を阻む。
「アウトーーーー! ゲームセット!!」
伊藤主審のコールが青空に響き渡る。劇的なフィナーレを確認すると、ビッグアプセットナインの笑顔が一気にはじけた。
◇ ◇
この日のMVPは楠本だ。試合前のキャッチボールで大河原が西村の球を取り損ね、メガネがはじけ飛ぶというアクシデントが発生。しかし、皆が動揺する不測の事態にも楠本は落ち着きを失わず、先発して6回まで1本のヒットも許さないナイスピッチング。左右、高低とストライクゾーンを自在に操る匠の投球で相手打線を翻弄し続ける。課題のコントロールも四球はわずか2つだけと、久しぶりの登板とは思えない極上のパフォーマンスを披露した。
楠本の投球に打線も応える。初回、これまた久々登場の核弾頭黒田が魅せてくれた。四球で出塁するや、二盗、三盗と決め、西村の投ゴロの間にあっという間にホームを陥れる。黒田は3回にも2つの盗塁を決めるなど、計4盗塁。相手にとっては驚異のトップバッターであることを証明してみせた。
また新戦力谷上も、4回、左中間に弾丸ソロホームランを放ち、欲しかった中押し点を1人で演出。いつもいるはずの谷上ママが不在の中、 “惜別アーチ”で独り立ちをきっぱり宣言した。
ただし、すべてがよかったわけではない。先週の試合で課題となっていた残塁の多さはいまだ解消しきれておらず、4度の満塁の場面でことごとく凡退を繰り返す拙攻ぶりは何とかしないといけない。「打つより四球を狙ってしまうんですよ」と某H選手がつぶやいたように、何が何でも点を取る執念よりも人の良さが上回ってしまうのが、ビッグアプセットの弱点だ。それでもこの試合では、ツーアウトから桜町と末永がタイムリーを放つなど、改善の兆しが見えてきたのはいい傾向。これからはより厚みのある攻撃を必ず試合で出せるようにしよう。
次週はコマンドゼットとのGリーグ第3戦が控える。ここで一気に勝利を収め、貯金を2つにして、気分よく再来週の合宿に臨みたいところ。そして最高の4月を送り、5月の大会に突入しよう。大会で4勝という最高の結果は、自らもぎとるしかないのだ!
~監督談話~
打つ方は、チャンスでの凡退があまりにも多過ぎた。13個もの四死球をもらっといて、何か余裕のない攻撃振りだったのは反省。しかし、ツーアウトからの櫻町、末永のタイムリー、そして谷上くんの待望の一発は、それぞれ持ち味を充分に出してくれた。 一方、守りでは楠本のあわやノーヒットノーランという投球がまずは見事だった。最終回、ストレートが高めに浮いたところを痛打されてしまったのは悔いが残るが、バッテリーにとっては良い勉強になった。また、楠本のピッチングを支えた守備も良かった。特に、最終回の山下、黒ちゃん、西村、末永が絡んだビッグプレー2つは楠本の完投を十二分に助けたと言って過言でない。球際に強さを発揮できると勝ち目は絶対に出てくるね、どんな相手にも。久々に気分の良い土曜日となりました。