③ 1月28日(土) 多摩川緑地野球場
9回裏ツーアウト満塁、ツースリー。4番芝田が自信をもってボールを見送り、歓喜のサヨナラ勝ちが決まった。躍り上がって喜ぶビッグアプセットナイン。難産の末に得た今季初勝利の味は、何物にも代え難い最高のものだった。
それにしても苦しい勝利だった。東深澤学園は昨年2度戦って連敗している嫌な相手。特に12月の第2戦では勝っていた試合を最終回にひっくり返されての逆転サヨナラ負けを喫している。何としても3連敗だけは避けたいところ。序盤は東深澤学園・葛谷投手の巧みなピッチングに打線が沈黙したが、5回裏、2番手のサウスポー坂上投手に襲い掛かった。口火を切ったのが山下だ。スローボールを思い切りひっぱたくと、打球はレフトの垣根をはるかに越える驚愕の先制ホームラン!これで目覚めたビッグアプセット打線は、この回3安打に敵失もあって一挙6点を奪い、完全に主導権を握る。さらに7回にはまたまた山下が推定飛距離110メートルはあろうかという2打席連続ホームラン! 今年は三冠王奪取も狙えそうな完全復活弾だった。
また佐藤がこの日も2打席連続安打と絶好調をキープすれば、初登場黒田もホームランを二塁打と判定される不運もあったが、長打力健在の実力を見せてくれた。
守ってもエース末永が5回まで東深澤打線を無失点に抑える。6回に失策がらみで2失点、7回にも2四死球からタイムリーを喫し1失点と若干乱れたが、8回まで7対3と誰もが痛快なリベンジを予感させた。
ところが、野球はまさに筋書きのないドラマだった。
8回まで粘りのピッチングをしていた末永だが、9回になりスタミナ切れか失速。ここを東深澤打線につかまり、この回長短5安打を集中され一気に5失点。一気に7対8と逆転されてしまう。まさに12月の悪夢の再現かと思われた。
しかし、後攻を選択していたビッグアプセットナインは決してあきらめなかった。その裏、自らの汚名を返上すべく末永が執念のフォアボールで出塁すると、この日タイから帰国したばかりの熊野もじっくり選んで四球で出塁する。2死後、2番桜町がここでやってくれた。ライト前へポトリと落とす執念の同点タイムリー! 昨年MVPの実力を存分に見せつけ、ビッグアプセットは生き返る。さらに、3番抜擢の福原が粘りに粘った末に四球をもぎとり、4番芝田がとどめを刺した。
痛快なリベンジ! 昨年は接戦に弱く、こういう展開ではことごとく負けていただけに、大会で苦しい場面を迎えた時にこそ、今日の試合を乗り越えた経験が必ず生きるはずだ。苦しい試合ではあったが、ナイン全員が一致団結してもぎとったこの勝利は、ただの1勝ではなく、10勝分の価値を持つ貴重な財産になった。
~監督談話~
開幕2連敗の後、また、昨年2連敗の相手、今日はどんな形でも良いから勝ちたかった、意地でも勝ちたかった。その執念が最終回、9回裏に見事に結実した。サヨナラの芝田はじめ最終回にフォアボールを選んだ面々、そしてしぶとくライト前に落とした櫻町には敬意を表する。
振り返って、この試合のポイント、それは山下の先制ホームランにあったと考える。今季初勝利への貴重な一発、しかもあのくせ球をあそこまで飛ばすテクニック、パワーには脱帽だ。今年の初勝利、今日のヒーローは山下だ。