②2月11日(祝) 夢の島公園野球場
試合は土と天然芝が鮮やかな夢の島球場で行われた。人工芝もなかなかいいが、やはり土と天然芝は少年時代、ひたむきに白球を追ったなつかしい時を思い出させてくれる。
初回から3回まで先発末永が相手打線を完璧に封じるナイスピッチングを見せ、打線も3回それに応える。1番黒田がレフトを深々と破るナイスバッティング。自慢の快足で一気にダイヤモンドを駆け抜ける鮮やかな先制ランニングホームランで先取点をゲットした。
4回、相手強力打線に末永がつかまり、逆転を許す。しかし、今季のビッグアプセット打線は取られたらすぐ取り返すのが特徴だ。その裏、主砲山下がレフトへクリーンヒットを放ち出塁。続く芝田がライトへ会心の当たりをを放つが、なんと当たりがあまりに強烈すぎてライトゴロに終わるアンラッキー。しかし、山下を3塁に置いて、打点王争いに名を連ねる桜町がレフトへ技ありの流し打ちタイムリーで2対2の同点に追いついた。
6回に振り逃げで3点目を許したが、土壇場の7回にドラマが待っていた。後がないビッグアプセットは1死後、村上が執念の四球で出塁するや、鮮やかに二盗を決めるビッグプレーで、マイティダックスに傾いた流れをグッと引き寄せる。さらにワイルドピッチで三進したあと、橋爪がナインの思いをバットに込めたスイングで三遊間へ値千金の同点タイムリー! ついに土壇場で3対3の同点に追いついた。
ヒジ痛で降板した末永の後を引き継いだ村上も獅子奮迅の活躍を見せる。7回をピシャリと抑えたものの、8回にやや乱れヒットと2つの四球で無死満塁の大ピンチを迎えたが、そこから脅威の粘り腰で次打者をキャッチャーフライに仕留めまずワンアウト。さらに「江夏の21球」の再現でも見るかのように、打者のスクイズを見破り空振りさせ、サードランナーを三本間で挟殺。最後は二死満塁に追い込まれたものの、ピッチャーゴロで無死満塁を0点に抑えきった。まさに大魔神のような火消しだった。
そしてクライマックスは延長8回の裏に用意されていた。この日大活躍の1番黒田がレフトへ貴重なヒットを放ち出塁する。相手も黒田の快足は十分にわかっており、何度となく牽制球を投げて警戒したが、黒田はその警戒網を難なく突き破って二盗を決め、サヨナラのお膳立てをつくる。そして楠本が打席に立つ。「楠本考えろよ、わかってるよな」というベンチの声がかかる中、楠本は鮮やかな右打ちで一、二塁間を 切り裂いた。しかし、芝田と同様これも当たりが強すぎてライトゴロになる大不運。安打を1本損したが、ランナーを3塁に進め、昨年度の三冠王山下につないだ。サードランナーが快足の黒田だけに山下の力量を考えれば最悪でも犠牲フライは間違いないところ。誰もが勝利を確信したが、ここでアンビリーバブルなことが起きてしまった。「スカッ」。今季も大当たりの山下が打ち損じてなんとピッチャーへの小フライに終わってしまったのだ。一気に落ち込むどころか、笑うしかないビッグアプセットナイン。さすがに責任を感じたのか、どんなときもポーカーフェイスの山下が、4番芝田に声をかける。「あとは任せたぞ!」その声に触発されたのか、ここでクラッチの異名を持つ芝田がやってくれた。相手投手の渾身の速球をとらえた打球は左中間を深々と破るサヨナラタイムリー。3塁から黒田がホームインしてビッグアプセットは劇的な勝利をつかんだのだ。普通ならホームランになっていたが、サヨナラだっただけに記録的にはホームランとはならないが、このサヨナラ打はホームラン以上の価値がある最高のヒットと言える。
この日のような試合をやれば、今年は飛躍的にチーム力が伸びることは確実。どれだけ伸びるかワクワクしてくるし、大会参加も本当に楽しみになってきた。