(37) 12月8日(土) 調布関東村野球場
7-7の同点で迎えた時間切れ寸前の延長8回裏、1死2、3塁。楠本のピッチャーゴロをさばいた相手投手がファーストへボールを送ったその瞬間、サードランナー村上が一瞬の隙をついてホームに突入する。あわてた相手ファーストがホームへ矢のような球を返す。間一髪のタイミング…アウトか、セーフか。全員が固唾を呑んで見守る
中、審判の声が冬空にこだました。
「セーフ! ゲームセット!!」
土煙がまう中、村上の右足つま先がタッチをかいくぐり、しっかりとホームベースをとらえていた!
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これを奇跡と呼ばずして何と言おうか。がけっぷちに追い詰められたビッグアプセットは7回裏に5点差を追いつき、奇跡のサヨナラ勝ちで今季27勝目を飾った!
奇跡の扉をこじ開けたのは楠本だった。7回裏ワンアウトランナーなし。敗北まであとアウト2つ。点差は7-2と5点差ある。正直誰もが完敗を覚悟していたが、楠本のセンター前ヒットが、失いかけていた勝利への思いを呼び覚ましてくれた。
「まだまだ、これからよ」
「あきらめんなよ!」
橋爪、西村が連続四球で続き満塁に。ここで芝田がクラッチの異名通り鮮やかなセンター前タイムリーを放つ! 楠本、橋爪が相次いで生還して3点差に。さらに次週に結婚式を控える4番山下がきっちりとセンターに犠牲フライを打ち上げ、西村がホームイン。これで2点差だ。続く5番橋本もショート後方にポトリと落とすヒットでつなぐ。しかしアウトカウントもツーアウト。ランナーは1、2塁。打席には末永。
2ストライク2ボールからの難しいボールを何とかカットして生き延びた6球目。低めの難しいスライダーを無心でひっぱたくと、打球はセンターの頭上をはるかに越える起死回生のツーベースに! 2塁から芝田、1塁から橋本までもが長駆ホームインして、ベンチは大会で優勝したかのような大騒ぎに。ついに7-7の同点に追いついた。
「集中してどんなボールにもくらいついていこうと思った」と末永。ナイン全員の思いが打球に乗り移った最高の一打だった。
しかし、序盤・中盤は苦しい戦いを強いられた。先発楠本は球の切れ、コントロールとも申し分なくナイスピッチングだったが、初回守りのミスから2点を失う。攻撃もちぐはぐで1、2、3番がチャンスをきっちり作るものの、それ以降の打者が凡打を繰り返すいや~な展開。5回に西村のタイムリーなどで2点を返し同点に追いついたものの、6回には守備の乱れと集中力を欠いたプレーで一気に5点を失い、万事休したと思われた。ただ、楠本の献身的な投球と、楠本の後を受けた橋本の粘りのピッチング、変化球投手を打つ見本のような大友のライトへの2本のヒット、久々に元気な姿を見せてくれた桜町の存在がナインを奮い立たせ、逆転劇の伏線となったことも付け
加えておきたい。
結果的には最高の勝利を収めたが、改善点はまだまだある。22日は今季最終戦。しかも場所は聖地大田スタジアム。今日の終盤のように、今年の思いをすべてぶつけて、最高のゲームをして締めくくろう。野球はかくもすばらしいスポーツなのだから。
~監督談話~
劇的なサヨナラ勝ち!野球の楽しさ・面白さを皆で改めて思い知った、そんな素晴らしい試合だった。今までのBigupsetの数々の試合の中でもトップクラスの記憶に残る試合になったと思う。
最終回、5点差があって簡単に1アウト、そこからの皆々の粘り・執念が物凄かった。特に同点二塁打を放った末永のチャンスの場面での集中力は大したものだ。恐れ入った!序盤たくさんのミスがありイライラ続きであったが、最後の最後、まさに“Bigupset”の名の通り「大どんでん返し」を皆で演じきった。何とも幸せな気分だったね。