4 走っている時に

道に迷うことはよくある。道に迷ってもイライラするのでなく、迷ったこと自体を楽しむ位のゆとりがほしい。

私は道に迷って、地図を見ても現在地確認が難しいと思った時には余計に迷い込まないためにも、すぐに誰かをつかまえて聞くことにしているし、今までの経験からすると、多くの人は親切に教えようとしてくれるので、遠慮なく聞くのが良い。

ロマンチック街道を走った時、どちらに向かって進んだら良いか地図を見ていると、通りかかった車の人がわざわざ降りてきて、「お困まりなら私ができることをお手伝いしますよ」と声をかけてもらったこともあるし、ハイデルベルクに向かっていた時には、二度も自転車で先導して道案内してもらった経験もした。

正直、日本では到底考えられない位親切に道を教えてくれるので、老若男女問わず誰にでも遠慮なく聞いて、言葉に自信がなければ行きたい地名だけを理解してもらうまで問いかければちゃんと教えてくれる。

4-2 避けたい危険

交通ルールやの違いや慣れないお国柄によって生じる危険もある。日本との違いを知った上で安全に対応するようにしたい。

海外でサイクリングを楽しむ前提として安全の確保は最も重要なことの一つである。自分自身ドキッとしたこと、経験したくないことを交えて紹介しておこう。

ヨーロッパは右側通行 イギリスを除いてヨーロッパでは日本とは逆の右側通行である。

頭では分かっていても、慣れなるまで、ついつい左側を逆走してしまう。

特に左折する場合に本来向こう側に行かなければならないが、手前で回ってしまい左側に入ってしまうこともあるので、分かっているつもりでも、いっそう意識する必要がある。

逆走するとすぐに注意をされるのも請け合いである。

また、左右確認もまず左を見て右を見る意識を持たないと、道路を横断する時などに、先に右を見ながら走り出すと、手前車線を左から車が来て、ヒヤッとすることがあるので、良く注意することが必要だ。

そのためにはいつも慌てないでゆっくり行動することが大切になる。

信号システムが違う 信号は自動車用と歩行者用以外に自転車用の専用信号がある。

自転車用の信号には文字通りランプの中に自転車が描かれており、日本との違いを感じる。

複数車線の幹線道路の多くの交差点では歩行者、自転車の横断よりも円滑な車の通行を優先した信号システムになっている。

歩行者、自転車信号が青になっている時間は驚くほど短い上に、手前の右行きが青信号で向こう側の左行きが赤信号のように行く方向によって信号表示が異なることもある。

つい向こう側の信号を見て渡ろうとしたところに、手前の左側から車が来て危うく事故を引き起こしそうになったことも実際にあったので、注意を払いたい。

また、自転車と歩行者の信号切り替わりタイミングにも差があることも覚えておきたい。

スクーターが自転車道を走る オランダやベルギーのように国によっては二輪車も自転車道を走るように決められている。

同じ二輪車とはいってもスピードも横幅も違うので、道幅の狭い街中ではできることなら一緒に走りたくはないがルールなのでやむを得ない。

聞き耳を働かせてモーターバイクやスクーターが近づいてこないか、後方にも十分注意を払う必要がある。

トラムのレール ヨーロッパではある程度以上の規模の都市であれば必ずと言って良いほどトラムが走っている。

エコロジカルな乗り物で、車両やデザインも豊富にあり街毎に特徴もあり見飽きない。

旅情を誘う街の風物詩でもあるが、トラムのレールはよくよく注意しないと危険なくせものである。

特に交差点など曲がるところではレールにタイヤを取られないようにしなければいけない。

チューリッヒでNobさんが転倒した一因も並行するレールが気になってのものであった。

右左折時の手信号 ヨーロッパでは自転車に乗る人は誰もが曲がる時に手信号を出す。

見事に習慣化されており、多くの自転車が行き交う朝の通勤ラッシュ時の交差点でもトラブルを起こすことなく整然と走って行く。

気恥ずかしいからと手信号を出さずに曲がろうとすると接触しかねないし、アクシデントが起きなくても嫌な顔をされるので「郷に入っては郷に従え」の例えどおり手信号を出して街に溶け込もう。

歩行者の多い通行帯 自転車が通行可能でも、時間帯によっては道に多くの歩行者がいる場合がある。

特に車を締め出し、両側に商店街が立ち並ぶ繁華街などは午後になると人が増える。

もちろん、自転車を乗って通り抜けることもできるが、そんな時にはルールとは別に常識的な判断をすることが良いし、ちょっと無理して乗っていると降りるように促されることもある。

つまりはルールではなくマナーの問題でもあり、歩行者に危害を及ぼさないことに十分に注意して走りたい。

自転車に乗る人のマナーは全般的に良い。

携帯電話をかけながら、あいはイヤホンで音楽を聴きながら乗る人はまずいない。

一度だけ少年がかなりのスピードで人と人の間を縫うように走っていたが、マナーに反した走り方を見たのはそれだけである。

4-3 治安の良さ

今までの経験で身の危険を覚えるような経験は一度もなかった。

安全と言われる日本国内を旅してまわるのと変わらないし、国内でも危険なところは危険なので、海外だといって過剰に身構えることはない。

ドナウ河畔で出会った若いカップルのサイクリストは120日間もの長期の予定でヨーロッパをくまなく回っている途中だと言うが、装備を見ると寝袋とマットを持っており、ほとんどは野宿するとのことで、天候が悪かったり、シャワーを浴びたい時だけ安宿に泊まるとのことであった。

話しを聞いていると、どうも彼らは治安に対する不安はまったくなさそうである。

そう考えると仮に運悪く宿が取れなかったとしても、適当な場所で一夜だけなら何とでもなるのではと思った。

自信過剰もどうかと思うが、過剰に恐れることもない。