2 自転車の運搬と装備

2-1 自転車の運搬

飛行機へ持ち込む自転車は特殊荷物に分類されており、航空会社には携行することを事前連絡しておく必要がある。また特殊荷物についての規定は各航空会社によって異なり、各々細かく定められており、自転車をそのまま運んでくれるキャリアーもあれば、分解して何らか梱包しなければならないキャリアーまでさまざまで、料金規定も無料から有料まである。

航空会社ごとの状況確認は航空会社別一覧を掲載したサイトがあるので参考にされると良い。

自転車を運ぶには大きく分けて以下3つの方法が考えられる。

1)梱包して運搬する方法

段ボール箱に自転車を分解、梱包して運ぶのが最も安全、確実な方法の一つである。必要な梱包用の箱は街の自転車屋さんで譲ってもらうことができる。自転車屋さんにはメーカーからママチャリが運ばれてくる時に使う厚手の頑丈な段ボール箱があり、これがぴったりなのである。ちなみにスポーツバイク用の箱は幅が狭く不向きで、お奨めできない。

そして、その箱は自転車屋さんに予め頼んでおけば入手可能であり、私は近所の自転車屋さんから無償で頂いている。大手自転車チェーン店では、配送センターから自転車を箱詰めせずに店舗配送するので当然空箱もないので事前に確かめておくほうが良い。

梱包時にはディレーラーなど衝撃に弱い部分には緩衝材や段ボールでパッキングをして、サドルは下げ切って、脱着ペダルやサイクルメーターなど外せるものはすべて外しておき、取り外した部品も分散しないように、梱包してガムテープで箱の内側に止めておく。

外した前後輪は少しだけエアー抜きし、擦れ防止を施し、ガムテープで固定しておく。飛行機の荷物室は与圧されているので一気圧分も下げれば十分であるし、エアーを抜き過ぎると到着後面倒である。

開梱した段ボールの処分用に小型カッターナイフを用意しておくと便利である。到着ロビーなどで、段ボール箱を小さく切り刻みコンパクトに片づけるのに必要なのでこれもガムテープで内側に止めておく。

箱の外側には天地無用の英語表記「This Side Up」と天面表示として「↑UP↑」などの文言を目立つようにマジック書きしておく。

到着ロビーでの上手な箱の処分 先ず箱の長辺の1/4位をぐるりと切り落とし、小さく刻んだ段ボール入れにする。この中に残り3/4の刻んだ箱、はがしたガムテープやラッピング材などを詰め、合わせて一つのごみにする。驚くほどコンパクトにできるものだ。

帰途の自転車運搬 自転車が航空会社の規定で梱包せずに運べない時には輪行袋に入れて持ち帰ることとなる。この場合には自転車が少々擦れることを覚悟しておく必要はある。

2)輪行袋に入れる方法

輪行袋で出発したことはないし、するつもりもない。帰りの輪行袋使用はどんな故障壊も時間をかけてでも直せば良いが、行く時から故障やトラブルに会うのはごめんだから。

3)そのまま積む方法

梱包しないでそのまま積み込み可能な航空会社は少ないし、積載可能な場合には載せる前に免責書類にサインを求められる。結局は大きなトラブルの確率は少ないにしても、多少擦れて細かな傷がつくことはあると考えて割り切ることが必要である。

脱着ペダル ペダルはワンタッチで取り外しができる脱着ペダルが断然良い。飛行機に積む時には、箱に詰めても、輪行袋に入れても、そのまま飛行機に積むにも、いずれの場合にも必ずペダルは取り外さなければならない。脱着式でなければ取り外しには工具も要るし、大いに手間がかかるので脱着ペダルがお奨めである。また、飛行機に積む時だけでなく、路上に駐輪しなければならない時などにペダルを外しておけば乗り逃げされる心配は減り安心できる。実際に宿によってはホテル内に駐輪する場所がなく、一晩中路上に置いておくように指示されることはある。自転車盗難が多いことで有名なアムステルダムでも路上で一晩駐輪することとなったが、もちろん鎖のキーでがっちりロックするとともにペダルは外しておいた。

サイドバッグ サイドバッグは防水加工したものに限る。どのようなサイクリングをするにしても、多かれ少なかれ雨の中を走らなければならない場合が必ずあるし、突然の雨に見舞われることもある。防水加工を施してないサイドバッグで雨の中を走る時にはビニール製のフードで覆うが、それでも衣類や紙の類は湿ってしまい無残なものになる。だから、もし今後新たにサイドバッグを買われるのであれば少々高くても防水加工したものをお奨めしたい。また、ガストホフやホテルなどの宿泊施設に泊まって旅をする前提であれば、携行する荷物は2つのサイドバッグに十分収まる範囲で作りたい。多少旅の時間が長くても持って行く荷物は変わらないものである。

旅の最中に自転車の荷台に掛けたサイドバッグのねじが緩み、危うくバッグを落としそうになった。それも一度ならず二度までも!まさか、ねじが緩むとは思わなかったが、もしねじを失っていたらどうやってバッグを運んだら良いやら途方に暮れるところであった。メンテナンスの一つとして出発前と旅の途中に、ねじの緩みの点検と増し締めすることをお奨めする。

走行中に緩んだねじ部分(中央)

2-2 サイドバッグの荷揃え

サイドバッグの中は毎日同じ詰め方ではなく、状況に応じて工夫をしたい。できるだけ重心が低くなり、形よくきっちり詰めることに注意するとともに走っている途中でバッグを開けた時に◆取り出したいものをできるだけ素早く取り出せること、◆2つのバッグのいずれか一つだけを開ければ、必要なものが取り出せるように詰めることに心がけることをお奨めする。

パッキング順位はまずバッグの底の部分に、重心を下げるように重量感のあるものを座りが良いようにきっちり詰めることである。例えば、その当日に使わない本やパンフレットなどのペーパー類や充電器、コンセント洗面用具などを入れる。形よく詰めるポイントはバッグの底の四隅まできっちり詰めてやることで、形や恰好だけでなく座りもよくなる。次は衣類でメッシュの網に詰めたものを、これも四隅にまできっちり詰める要領で入れる。

最後に、その日に取り出す可能性のあるものを詰める。そしてその日に取り出すものは、どちらか一方のバッグだけに取り出すものをまとめておくと、迷って二つのバッグを開けることもなくなりすっきりする。

走っている途中で取り出すものは、天候や気温の状況に応じて日によって変わってくる。毎日取り出すランチ(サンドイッチ)の他に、風が吹いたり寒さが予測される時にはウィンドブレーカー、アームウォーマーが、天候の悪い時にはレインウエアを取り出す必要が出てくる。また、途中で長時間にわたって自転車を駐輪しておくことが予想される場合には頑丈な鍵を取り出しやすいところに入れておく。

2-3 持ち物のランク付け

安心して走れるようにするために、私は持ち物を重要度に応じてランクを付け、どのように持ち運ぶかを決めている。

最も重要なものは常にわが身から離さないためにベストのジッパー付きの胸ポケットに入れている。

こうしておくと胸のポケットを触れば所在が分かるので確認はいつでも簡単にでき、安心して走れる。その胸ポケットの中にはパスポート、キャッシュカードと現金(ユーロと日本円)だけを入れており、これさえあれば何か他のものを失っても何とかなると考えている。

また、ベストの右脇ポケットにはいつでも素早く被写体がとらえられるようにカメラを入れ、左脇ポケットには携帯電話を入れており、胸ポケットのものに次いで重要で失くしたくないと考えるものを入れている。だから、このベストさえ失くさなければ大丈夫という訳である。

そして、ズボンの各ポケットには道々で使う手持ちの少額紙幣とコイン、時計代わりの万歩計、四つ折りにしたGoogle mapのコピーを入れるという具合に決め、自転車の鍵を付けたストラップをつないでいる。

重要なものとそうでないものを明確に仕分けておけば、管理はシンプルであり、いつも安心である。

2-4 自転車のチェーン錠

自転車のチェーン錠は2種類持ち、状況に応じて使い分けをしたい。一つは頑丈なものである。これは観光のために長時間にわたって駐輪する時や、出入りが自由で保安上ちょっと心配なホテルの駐輪スペースや路上などに夜通し駐輪しなければならない場合に使うことを想定している。

実際に自転車盗が最も多いといわれているアムステルダムで泊まった時、ホテルには駐輪場がなくスタッフは路上に止めろという。運悪くどこのホテルも満室でやっと宿泊できるところなので宿をチェンジするわけにもいかない。この時に威力を発揮したのが「太い鎖の鍵」。

出発前に自転車屋で相談したところ、太い鎖は大型のカッターでないと切れないとのことで最も強力と思われるものを持参した。アムステルダム以外にもベルギーの北海沿いの街やコンスタンツなどでもホテルの外に駐輪したが、おかげで安心して眠れた。

このチェーン錠は頑丈であるが、デメリットとしては、ちょっとの間に使おうとすると、いちいちバッグからの出し入れが面倒なことである。

もうひとつは簡単に使える小型のワイヤー錠である。ちょっと食事や休憩で離れる時や駅やインフォメーションに立ち寄った時に使うもので、切られる可能性はあるが、簡単に施錠できることが良い。

これらには本体とともに当然「かぎ」があるが、落とさないように、私はズボンとストラップで結び、ファスナー付きのポケットに入れている。

何事にも常に注意を払うことはできないので管理する上からも重宝している。

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