自転車旅行5.28 ビジャフランカ・デル・ピエルソ⇒サーモス

5月28日(曇り時々雨)

from Villafranca del Bierzo to Samos

◆オ・セブレイロ峠への長い坂

朝方、激しく降る雨に起こされる。こんな日に山を上り下りするのは気乗りしないと思いつつ朝食をすますと、空は相変わらず分厚い黒い雲に覆われているが幸い雨は止んでいる。エイヴァルトから今日は街を出ると40km以上上りが続き、特に20kmを過ぎた辺りから勾配がきつくなると言われる。上り坂が続く行程に加え悪天候とテンションは正直上がらない。街を出て川を渡ると道はすぐに上り坂になる。山の景色を見ながら川に沿った道を徐々に標高を上げて行く。後ろを振り返ると左右から迫る山の谷間にビジャフランカの街が小さく見え、両側の山は濃い緑に覆われ豊かな北部スペインを実感させる。 しかし、上りの勾配はまだ厳しくもなく、山を見て、渓を見てゆっくり上って行く。暫く上ると左右の山の間を走る一本の道が遥か遠くの方に伸びながら上ってゆくのが見通せる。これから上って行く道だった。

l遥か眼下に上ってきたつづら折りの道が見える。

ラス・エレリアスの村辺りから一気に勾配はきつくなり、地図表示では6%から9%の坂が山を巻いて続く。遠目に見てもどの辺りで坂が緩むか、また厳しくなるかが見える。一番軽いギアに落としてバテずに持続できるスピードに落として上る。自転車を引いて上る人も数多く、その中には日の丸を掲げた日本からの方もいた。こちらも余裕が全くないだけに挨拶だけ交わしてオランダ人の男二人を追いかける。さすがに女性のデットは遥かに遅れて上って来るが彼女も決して歩かずに必死に漕ぎ上がって来る。やっとの思いで標高1300mのオ・セブレイロ峠に着くと、先行のエイヴァルトとフランツが手を叩いて喜んでくれる。それからエイヴァルトだけは走って坂を下って行き、上がって来る奥さんに声をかけながら上がって来る。四人勢ぞろいして“ヤッター”と声を上げる。

標高1300mのオ・セブレイロ峠。上空の黒い雲は時々刻々変化し今にも雨が降り出しそうな様であった。

そして、エイバルトとフランツが遅れて上ってくるデットを今か今かと心配そうに待っていた。

◆雨は恵の雨?

この日は一日中晴れ上がることはなく常に分厚く黒い雲に覆われた中を走り、途中で幾度も雨が降り、時には激しい雨にも見舞われた。この日の最高地点、標高1335mのAlto do Poioに着いた時にも突然の突風と激しい大粒の雨が降り出した。今まで見通せていた山の姿も一瞬で真っ白な雨のカーテンで覆われてしまった。私たち四人組は運良く雨に降られることはなかったが、続いてアルベルゲに駆け込んでくる人たちはずぶ濡れである。幸運に恵まれていたのは休憩を終えて外に出ると、相変わらず垂れ下がった黒い雲はあるが雨は上がり遠くまで見通せるようになっている。本当に都合よく天気が変わったものであった。その後もサーモスに着くまでは空が晴れ上がることは全くなく、何度も雨に降られた。

峠の茶屋に着いた途端に激しい雨と強風に見舞われ、雨が止むと遥か向こうの山々が見通せる。

しかし、分厚い雲に覆われ時々雨が降る天気もこの日に限っては悪いものではなかった。数日前のようにカンカン照りの日差しだったら、暑さに負けて長い坂道を上り切れなかったのではと思えた。分厚い雲が日差しを遮り、降ったり止んだりの雨は暑くなった体を適度にクールダウンしてくれるので恵みの雨でもあった。

この日を象徴するイベントはサーモスのホテルに到着した後にあった。ガレージに自転車を入れようとしていた時に“ダーン!”と間近に落雷し、大きな雷鳴がとどろき渡った。みんな恐怖で一瞬沈黙し、思わず顔を見合わせ笑いだすのであった。(走行距離 67km)

自転車旅行5.29 サーモス⇒アルツア