9月24日(晴れ)
From Vosendorf to Eisenstadt
◆広い広いラクセンブルク宮殿
旅の計画時にはウィーンを通り過ぎてノイジードル湖に向かうことは全く想定していなかったので“出たとこ勝負“のルート選びだった。そんな状況なので前夜改めて地図を眺め湖畔の街ルストを目指そうと計画を立てた。そして10km足らず行くと、マリア・テレジアとフランツ・ヨーゼフが新婚時代過ごしたラクセンブルク宮殿があるのを知り、この日の最初の目的地とすることにした。遠くもなく直ぐに着くと出発するがどこかで道を違えたのか田舎道に入り込んでしまう。暫く走り回ってやっと街に着く。見つけたベーカリーカフェで甘いペストリーとカプチーノで簡単に朝食を済ませ、ラクセンブルク宮殿のブラウアー・ホーフの正面に行く。宮殿だけでなく教会や黄色い石造りの街並みが整然と並び、路面は大理石の切石で覆われており、往時の栄華が感じられる。まだ時間も早いのでオーストリア一広い宮殿庭園の散策を思い立つ。緑のターフと森の中には幾筋もの道が
付けられている。小川に沿った道を選び奥へ奥へと歩く。まだ朝が早いので静かな森のひんやりとした空気を感じながら行くと池の端に出る。すると付近にはイベント用に色とりどりのテントが張られ慌ただしそうに備をしている。剣を持ち何やら民族衣装の出で立ちの人に話しかけると、“バイキング“だと言う。すると忙しいにも関わらずバイキングについてのレクチャーを始める。パートナーの胸にかけられたブローチや丸っこい石に象ったバイキング文字の意味やバイキング刀の年代毎の形状変化など丁寧に教えてくれる。思わぬ出会いを楽しめ良い思い出ができた。
◆16号線を南下
ラクセンブルクでの思わぬ出会いを後に南に向けて16号線を走り出す。畑の真ん中を直線的に貫いて走る16号線にはほとんど自転車道もラインで区切られた側道もなく、時折猛スピードの車が脇を抜けて行く。それでも幸いなことに土曜日なので大型車はなく交通量も少ないので我慢して走れた。ドナウ川沿いは自転車道が充実していたがウィーンからここまではちょっと様相が違い、自転車道の表示もなく道も自転車に優しくない。さらに昼食を摂れるようなカフェなども見つけられないので涼しそうな木陰を探して草の上に座って携行食を食べる。ランチ休憩の後はミュレンドルフで16号線を左折しアイゼンシュタットで右折して52号線を走る予定でいたが、朝方の涼しさが嘘のようにこの日も暑い。急ぐ訳でもなく、精緻な計画がある訳でもないのでホテルがありそうなところで切り上げることにした。
◆ハイドン教会前の宿のオーナーはワーグナーさん
アイゼンシュタットのツーリストインフォメーションで小さなツイマーを紹介してもらう。地図で場所の説明をしてもらうと、たった今通ってきた道に面しハイドン教会を通り過ぎた辺りだと言う。小さな宿なので見落としたのかと思いつつ戻り、地図に記された辺りで探すが一向に見つからない。仕方なく地図の印に近い家のドアを叩き、宿を知らないかと尋ねると“ここだ!“と女将さんが答える。看板も掲げず外観からは一般の民家と全く変わりがない。中に招かれるとウェルカムドリンクの希望を聞かれる。暑いので何か冷たいものを頂けないかと言うと、レモネードを作ってくれ、木立に囲まれた裏庭の席に案内してくれる。お蔭で気持ち良くクールダウンし部屋に入ると、今度はベッドの上に手書きのウェルカムメッセージが置かれている。部屋はちょっと古くて床が軋むが立派な調度品も置かれ素晴らしいツィマーであった。これだけのおもてなしでリーズナブルに泊まれる宿なのでもう少しお宿の看板を出したら良いのではないかと言うと、”多くのお客様に来てもらうよりも、きちんともてなしができる宿にしたい“という。ハイドン教会の前のワーグナーさんからの答えは満点だった。(走行距離 53km)