自転車旅行5.23 ベロルダ⇒ブルゴス

5月23日(晴れ)

from Belorado to Burgos

◆三人のオランダ人との出会い

朝起きると空は真っ青に晴れ上がり、放射冷却のせいなのか驚くほど寒い。ホテルの看板に付いた温度表示を見ると気温8℃とある。昨日は夕方でも30℃を遥かに超えているような暑さだったので信じられないほどの寒暖差である。

そんな寒さを凌ぐために持っている衣類をありったけ着込む。上は保温下着、Tシャツ、長袖シャツにベストを着込み一番外側を薄い軽量ウインドブレーカーで覆う。下はサイクルパンツ、ロングの保温下着に八分寸のパンツの重ね着という出で立ちである。旅を始めた頃はゴアテックのウインドブレーカーを携行していたが、この頃は軽くて薄くてかさばらないウインドブレーカーが専らである。何やら頼りないように思えるが風を確実に遮るので長距離旅には重宝している。道の反対側にあるガレージから自転車を引き出しホテルの前に戻ると、自転車の三人連れに出会う。オランダから来たエイヴァルトとバーナデット(通称デット)夫妻とデットの兄フランツだと言う。

そして挨拶がてらこの日の走行ルートについて情報交換すると、私の考えている南回りと違って北回りのコースで行くと言う。そのルートではブルゴス手前で交通量の多い自動車道を走らなければならないのではと言い、サイクリングマップを出して説明してくれる。交通量の多い道を通らず、さらに比較的獲得高度も大きくないルートならば願ったり叶ったりなので、同行させてもらうことにした。こうしてオランダ三人組とサンチアゴ・デ・コンポステーラに向かうことになった。

出発間際のオランダ人3人組

◆美しいスペインの大地を走る

ベロラドの街を過ぎてから交通量の多いN120沿いに少しだけ走り、BU704を右に折れて行く。その道は全くと言って良いほど車は行き交わないが5%程度の長い上り坂が続き、左右にうねりながら登って行く。山を越えるまで上る道だったが次々と現れる景色は今まで見たことのない柔らかな自然の造形である。なだらかに上がって行く薄い緑色の麦畑が大きくて薄っぺらなプリンをひっくり返したような台形状の丘陵まで続き、ちょっと濃い緑色の坂を上がると、再び薄緑の麦畑が広がっている。台形状の丘陵は小さなものから差し渡しが何kmにも及ぶような大きなものまで色々あり、それらが重なり合いながら広がっている。そして風が吹き渡ると麦穂の揺れが通り抜けてゆくのが見える。その向こうにはくすんだ緑の台形状の山裾の縁が緩やかに上っている。そして平になった山の広い頂にも麦が植わっている。

平らに広がる麦畑と斜面を上がると台形状の大地が広がりそこにも麦畑が広がっている。色合いの違う緑色の大地は実に美しかった。

この辺りから数日間このような形状に付けられた道を走ることになった。裾部分を上る時にはある程度の傾斜で上るが、上がってしまうとほぼ平らな道をひた走る感覚で、初めて体験するような地勢で、走りながらどんな過程で出来上がった地なのか大いに興味が沸いた。坂を上るに連れて4人の脚力が違うので、上り坂ではエイヴァルトとフランツの二人が先行し、デットが大きく後れ、その間を私が走り、ピークまで行くと二人が待ち構えているのが常だった。そして遠くを見通せるピークからはるか南に山の連なりが見え、エイヴァルはあちらを走ると厳しかったのでこちらを一緒に走って良かったと笑う

峠を超えると両側に木々が生い茂るのどかな田舎道

◆デット60才の誕生日

2時間半ほど山道を走り続け、小さいけれど美しい教会の鐘楼が印象深い村アルランソンでコーヒーブレークを取る。

コーヒーを飲んでいるとデットがバッグから多くの顔写真を紐で結んだカードを首飾りのようにかけた。今日がちょうど60才の誕生日ということで親戚や親しい友人たちが顔写真と裏にメッセージを書いて、それを姪が結んで作ってくれたものだと言う。これはオランダに昔からある風習で私にとっては大切な宝物だと本当に嬉しそうに話してくれる。

首にメッセージ付きの顔写真カードをかけて嬉しいデット。

3人でデットを祝っていると一組の中年サイクリストのカップルがカフェに入って来る。その2人もオランダ人で3人が同郷たと聞くと大いに盛り上がって地元情報で花が咲く。巡礼をするオランダ人は非常に多いそうで、この先でもオランダ人巡礼者に出会うことが非常に多かったし、多くは非常にフレンドリーでおおらかな人が多いと感じた。

合流したオランダ人カップルはまるで古くからの友人のようで直ぐにご近所話を始める。

◆ブルゴスにて

昼過ぎには街に着いた。レオン州の州都だけあって街並みは整い道の両側は7~8階の建物が林立している。暫く進むとブルゴスのランドマーク、サンタマリア門に行き着く。印象的な三層構造のサンタマリア門のサファードを背にアルランソン川を渡り、マドリッド通りを行くとすぐにホテルに至った。

ブルゴスまでの道中で走りながら、この先3人とこの先も同走するか、それとも単独行にするか考えたが、快適に走れたことを考えると数日一緒に走り、ペース次第では分かれて走ろうと考えていた。予めホテルリザーブしている3人とは別に、空室があるかを聞くと即座にあると言う。チェックインの手続きを終えるとエイバルトから1時間後にロビーに集合し食事を摂ろうと提案される。

1時間後に出てきた3人は走っている時の出で立ちと全く違い、おしゃれに街歩きが出来る姿に変身している。上下の着衣だけでなく、足下の靴まできちんと整えている。正直、チノパンだけをはき替え、その他は寒さ防止で持っていた長袖シャツにシューズも履き替えない私とは全然違う。こんな華麗な変身が出来るのは彼らの荷物の多さにある。最も多い荷物のエイヴァルトは前後に合計4つの大容量サイドバッグにフロントバッグで合計40kgを軽く超えると言う。しかし、非力な者にとってはそんなに重くしてまでお洒落はできないとも悟った。(走行距離 65km)

城さが印象的なサンタ・マリア門のアーチの上にはカール一世など6人の像が彫られている。

自転車旅行5.24 ブルゴス⇒カリオン・デ・ロス・コンデス