自転車旅行5.26 レオン⇒アストルガ

5月26日(雨のち曇り)

from Leon to Astorga

◆雨降り

海外自転車旅をし始めた頃は例え雨がどんなに降ろうとも走り通すことが当然と頑なに考えていたものだが、この頃は雨が降っている時には電車などの手段で移動することにしている。降雨時に走るのは車に対する危険が増すだけでなくスリップし易くブレーキの利きも悪く良いことはないし、それに増して決して楽しくない。そうは言ってもアイルランドでは突然土砂降りに見舞われ止む無くホテルがある街まで走ったり、ドイツ・フランス国境で宿のおやじの「雨は降らない!」という太鼓判とは違って、降雨に会い、それもヨーロッパでは珍しく降り続く中相次ぐパンクで替えチューブもなくなり押し歩いた苦い経験もある。この日は部屋から雨音が聞こえる程の降り方なので独り旅だったら絶対に走らない天気だったが、三人のオランダ人達は5月30日にはどうしてもサンチアゴに着きたいとのことで走る気満々である。雨の日は自転車で走らず電車での移動はどうかと問うとオランダでは雨でも雪でも走るのが当たり前のようで全く問題ないのではと大笑いされる。

今回スペインではこの時期天気が良いので多分着ることもないだろうと思いつつ持ってきた雨具を着て8時に出立する。出発時間がちょうどレオンのラッシュアワーにぶつかり通りは車で溢れている。注意深く車に気を配りながら走り続け郊外に出るとやっと交通量は減る。すると暫くして冷たく降る雨の中を重そうに背負ったザックごとポンチョで覆い顔をびしょ濡れにして黙々と歩く巡礼者達が徐々に増えてくる。

雨に煙るレオン郊外

◆エイヴァルト、サドルの金具が折れる

雨の中走っていると、突然先行するエイヴァルトが停まる。サドルの金具が折れてしまい走れないので戻って直すと言う。雨の中でのアクシデントは不運な巡り合わせであったが“幸福の神“はいた。ほんの100m程通り過ぎてきた道を戻ると鉄工所がある。そう言えばつい先ほど通り過ぎる際に赤いつなぎの作業服を着たおやじさんが我々を見ていたのを思い出したが、まさかお世話になるとは思いも寄らなかった。

サドルの金具が折れる場面に遭遇するのは初めてだったし、今後もないと思うほどの珍しいことだった。

行くと手慣れたもので折れた金具を溶接し器用に直してしまうのであった。その間にも鉄工所の前を多くの巡礼者が黙々と歩いて行く。カリフォルニアから来た青年はこんな悪天候でも5時半から既に10km歩き、これから25km程も歩くのだとにこやかに言う。

詰めたい雨の中を35km行くという青年には悲壮感などなく笑顔であった。

◆雷とコーヒーブレーク

空を黒く分厚い雲が覆う中を走っていると遠くからゴロゴロと雷鳴が聞こえ、心なしか近づいてくる気がする。どこかで休んでやり過ごしたいと思っているとエイヴァルトがコーヒーブレークしようと言う。“ホッ!”として思わず笑顔になるとどうやら三人も同じ気持ちのようで笑顔が出る。

道沿いの村でカフェを見つけ、くつろいでいると通り過ぎようとする自転車の男がチラリとこちらを見て引き返してくる。入ってくると真っすぐ近寄って来る。挨拶をするとやはりオランダ人。巡礼道では世界中の国々からきた人と出会う。オランダ、ドイツ、イギリス、イタリアなどヨーロッパの国から、アメリカ、カナダ、ブラジルといった南北アメリカと韓国からの人に良く出った。オランダ人の多くはみんな話好きで笑いが絶えない。エイヴァルト曰くオランダは国土が小さく、国を維持するには周りの国だけでなく広く世界に向けて交流していかないと成り立たない国なので歴史的にもフレンドリーで寛容な精神が根付いていると言う。また、会話の中で後から合流したオランダ人が何で三人のオランダ人と日本人の取り合わせなのか不思議がって聞いてきたので、“三人の優秀なオランダ人ガイドを無料で雇って旅する日本人だ”と答えると、フランツがすかさず手を出して“ノー!後で1000ユーロ支払ってもらう”と言う。1000ユーロは彼のジョークの常套句で何かあるとフランツはすぐにそれを言い出し、ここでもみんな大笑いするのであった。(走行距離 64km)

オルビゴ川に架かる長いパソ・オンローソ橋

泊ったホテルの居室から撮った一枚でアントニオ・ガウディが設計したアストルガ司教館が真正面に見える。

古き建物があったり、静かな公園もあり、アストルガの街も美しかった。

自転車旅行5.27 アストルガ⇒ビジャフランカ・デル・ビエルソ