自転車旅行9.03 ネーフェルス⇒シャーン

9月3日(晴れ)

from Nafels to Schaan

ヴァレン湖南岸沿いはアルプスの山々を見て走る絶景自転車道でお薦めのルートである。

◆ヴァレン湖

この日一番の見所はもちろんヴァレン湖であった。この湖は東西20km、南北2kmほどの氷河湖で対岸には標高差が2000m近くあり、幾重にも重なり縞模様を成す地層がはっきりと望め、頂はのこぎり状に連なる山々の景観が素晴らしい所で私のお気に入りのところである。6年前にNobさんとチューリッヒからアムステルダムに向けて走った際に最初に感動したアルプスの景観でもう一度、それも昇る朝日に対岸の山肌の色が刻々と変わってゆく姿が見たかったのであった。残念ながら山の端から朝日が昇る姿は見られなかったが朝日を浴びて輝く湖畔越しの山々は美しかった。雄大なアルプスの山々と湖を見ながら走るヴァレン湖沿いの自転車道も素晴らしい。地図で眺めると湖岸まで急峻な山が迫っているのでさぞかし難しい道のように思えるがそうでもない。また、湖と急峻な斜面の合間は決して広くないが大きな起伏は少なく途中に一か所だけ押して上がらなければならない急坂がある。そして湖岸ぎりぎりまで山がせり出している所には自転車専用トンネルや湖に張り出してキャットウォークの道がつけられている。もしチューリッヒからドナウ川へ出るルートで自転車旅をされる計画を立てられるのであれば回り道をしてでもヴァレン湖畔の走行をお奨めしたい。

チューリッヒからボーデン湖までは二度目の走りになるところも多いので見覚えのある山並みや町並みも多い。しかし少しだけでも通る道を変えるだけで全く違った雰囲気も味わえ、思ったほどマンネリ感はない。しかし、ヴァレン湖を過ぎてサルガンスまでの14~5kmは年月が経って脚力が衰えたせいなのか6年前には感じなかった起伏を微妙に感じてしまった。

ヴァレン湖は東西15km南北2km程の氷河湖で湖の北側には標高差が2000mもある山並みが立ち上がっている。前回走った時に最も印象的な景色の一つでお薦めの景観である。湖岸沿いには現在では自転車専用道になっているトンネルや湖岸に張り出したキャットウォークがあり、途中には美しい村も点在している。

◆牛の行進・リヒテンシュタイン

サルガンスでは6年前にお茶をしたカフェで昼食をとり、リヒテンシュタインに向かう。サルガンスの街から暫く走りライン川を渡ると、直ぐにリヒテンシュタインに入る。川筋を改修したのかかなり直線的に流れるライン川の堤防道から走ってきた方向を振り返るとヴァレン湖畔から見た山の裏側が望め、ひときわ高い標高2310mの山、ガウシュラの雄大なカール地形がはっきり見える。

サルガンスの街を過ぎるとライン川沿いの道に出る。振り返るとヴァレン湖畔に祖母得ていた山々を裏側から眺められる。そしてしばらく行くと行く手にリヒテンシュタインのファドーツ城が山の中腹に見えてくる。

リヒテンシュタインの首都ファドーツに着くと、何やら“ガランガラン”という音が聞こえ牛の群れが見えて来る。大きな音の正体は牛たちが首に吊るしたカウベルで、晴れやかに花模様の刺繡をあしらった皮の飾りや野の草花でメイクアップしたおびただしい数の乳牛達の行進がやってきた。恐らく近在の酪農家達が自分の牧場の牛を連れ、子供も含め家族総出でお祭りに参加しているのだろう。ますます牛追いに先導された牛の群れが間近にやって来ると迫力十分で一層カウベルの音が大きく鳴り響く。また、子供や奥さんたちが見物客にチーズを振舞ってくれる。きっと行進する牛たちから搾った牛乳から作ったものに違いない。偶然の出会いであったが楽しいひと時であった。

ガラ~ン、ガラ~ンと大きなカウベルの音が響き渡り近づいてきた牛たちは立派な飾りを付けて行進してくる。

◆この日の泊りはシャーン

ファドーツからシャーンに向かって走りながら、そろそろ今晩のホテルを探そうと何軒かのホテルを訪ねながら進む。全く泊り客の気配がしないホテルに立ち寄るとこの日は満室だ?とか、部屋があっても立地や見かけによらず驚くほど高い値段を示してくるホテルがあったりと中々すんなりと決まらない。やっと、シャーン駅の近くで一軒のホテルを見つけた。外観も部屋も悪くなく、値段もリーズナブルなのでこの日の泊りは決まった。立地も良くサービス、内装(そして翌日の朝食)も良く、つくづく見知らぬ街でのホテル探しは難しいと感じた。

ファドーツの目抜き通りは両側に広々とした遊歩道と真ん中に一方通行で一車線だけの車用の道で構成された、”人優先”の考えが斬新な路だった。

シャワーを浴びてからシャーンの街歩きに出かける。ホテルに面したこの街一番の目貫通りであるフェルトキルヒャー通りは同じ標高に沿って引いた道筋なのか平坦で弓状になめらかに曲線を描いている。道の両側は車道よりも広い遊歩道が設けられ、ゆったりと散策できるように作られている。洗練された街づくりを体感すると否が応でもリヒテンシュタインの豊かさを感じざるを得なかった。そんな近代的にデザインされた街も、中心部からほんの少し外に出るだけで、昔ながらの伝統的な家が散見され、四方にはアルプスの山々が望める古き良き時代の村の姿も感じられた。(走行距離 57km)

夜はビールとハンバーガーで軽くおしゃれに頂く。