自転車旅行9.11 シュヴァーツ⇒クーフシュタイン

9月11日(晴れ)

from Schwaz to Kufstein

◆トラッツベルク城

シュバーツから7kmほどのところにトラッツベルクという名城があるのを知り寄り道することにした。クーフシュタイン方面に真っすぐ向かうのであれば、イン川を渡らずそのまま直進すれば行けるが、城は対岸に渡らなければならない。街の中心に少し戻って橋を渡り山裾に沿って走って進む。少しだけ起伏のある早朝のウンターンタール・ランデス通りは肌に当たる空気がひんやりして気持ちがいい。すると6人ほどのレーサーが猛烈なスピードで対向してくる。口々に“モルゲン!”と声掛けしてあっという間に過ぎてゆく。

ドイツ語で“おはよう“はグーテンモルゲン!”教わったが実際は誰からも単に“モルゲン”とだけ返って来るし、慣れてくるとその方が当たり前の表現と思うようになる。そんな挨拶を交わしたレーサー達には車も少ない時間帯で適度な起伏とカーブは練習に恰好の道なのかもしれない。

お目当てのトラッツベルク城が右手の山の中腹に観えてくる。遠くから眺めていた時には近代的なビルかマンションのように見えていたが、近づくに連れて真っ白な壁に黒い円錐状の屋根のコントラストが印象的な城が周りの深い森の緑に映えて美しい対比を織りなし迫って来る。

トラッツベルクという地名は既に13世紀に記され、城は1500年に後期ゴシック様式、内装がルネッサンス様式で施されたもののようである。歴史的価値のある内部も見ものということで見物するつもりでいたが、未だ午前10時の開館まで時間があるので残念ながらスキップすることにした。

山裾の道を疾走する朝練中のレーサー集団、山の中腹にあるトラッツベルク城

◆徐々に変わってきたチロルの景色

この日の朝は昨日に比べて気温は低めの上にからっとしたいるので快適に走れる。そんな気候にまして何よりもアールベルクから走り始めてず~っとチロル地方の風光明媚な景観の中を走っているので全くストレス感がない。しかし、そんな景色も少しづつ変化し続けている。アールベルクでは急峻で狭かったイン川の谷間が下るにしたがって徐々に広くなり、両側の山々も遠く且つ標高を下げてきている。そして広くなった谷あいには緑の草原が広がり走る道も緑の平原の真っ只中を進むようになった。また、谷間が広くなっただけでなく両側に連なる山の標高も明らかに低くなり山容も穏やかに見えて来る。

途中、パステルカラーの家波が並ぶ小さな街ラッテンベルクで一休みする。この街はガラス細工で有名な街のようで日曜日ということもあって駐車場は車で溢れ多くの観光客が店に並ぶガラス細工品を見つめショッピングに勤しんでいる。もちろん自転車旅の途中では、お土産品を買うことはないのでYajiさんと私はウィンドショッピングだけを楽しみ街を後にして再び走り出す。人気のイン川沿いのサイクリングコースは日曜日とも相まって普段に増して多くの自転車と行き交った。

イン川に架かる木橋を渡り、ラッテンベルクの街で休みながらクーフシュタインに向かうアルプスの景観は徐々に穏やかになってきた。

◆要塞がランドマークの街・クーフシュタイン

ドナウ川左岸の自転車道を走り、クーフシュタインの街に入る直前の右カーブに差しかかると右岸側の高台に石垣と白い大きな円筒形に赤茶色の丸屋根を被ったクーフシュタイン要塞が見えて来る。岩肌がむき出しになった岩盤の上には石垣が築かれ、ドナウ川に向かって大砲を据える幾つもの銃眼がドナウ川の流れに向かって大きく口を開けている。そして近づくと幾つかの円筒形だけでなく多くの白壁の要塞施設が見えて来る。

イン川の対岸に白くて丸い独特の城郭が見えてくる。

さっそくホテルで荷を解きクーフシュタイン要塞見物に出かける。黄土色に壁を塗りひと際目立つ大きな家と教会の坂を上りアーチを潜ると要塞の入口に至る。要塞内に入場すると中庭には登坂用の小さなケーブルカーがあり、それに乗って要塞に昇り要塞巡りをする。要塞内は鎧や武器を展示した施設見学だけでなく設けられた通路を通って自由に巡ることが出来る。銃眼から要塞の外を眺めると遠くにアルプスの山々が望め足下にはドナウ川とクーフシュタインの新市街が一望できる。

見学した後は要塞の麓にあるマルクト広場のカフェで一休み。陽の高い時間にもかかわらず冷えたビールを飲んでくつろぐのであった。(走行距離 56km)

クーフシュタイン城は中に入ってみると中世にタイムスリップしたような雰囲気がそのまま残っていた。

自転車旅行9.12 クーフシュタイン⇒プリーン