5月31日(晴れ)
fromSantiago de Compostela to Vigo
◆朝6時半に出発してしまった!
前夜はオランダ七人組とは別行動だったので巡礼道の旅を一緒させてもらい、色々な思い出を作ってくれたお礼をしようと6時過ぎにフロントに行く。するとホテルスタッフが彼らは10分ほど前にチェックアウトしたと言う。前夜の内に出発時間は6時半と聞いていたので早めに待ったつもりだったがすれ違ってしまった。テッドにメールを入れると直ぐに返事が来る。「余りに早い出発なので起こすのも悪いのでそのまま出発した。一緒に旅が出来て楽しかったし思い出深いものになった。また、昨夜差し入れてもらったギフトチョコレートは車中で美味しくいただきます。」と。直接会って挨拶は出来なかったが、オランダに向けてバスの中で大騒ぎし楽しんでいる様子が目に浮かぶようだった。
サンチアゴ・デ・コンポステーラ駅
◆ポルトガルの道を歩く巡礼者
10時42分発ビーゴ行きの列車で出発する。車窓から見るガリシア州の景色はスペインの中でも特に降雨量は多く、そのおかげで緑豊かで肥沃そうな土地に見える。平らな土地は少なそうでアップダウンが続く。そんな車窓から列車が来た方向に歩く人が度々見られる。巡礼者だ。スペインの巡礼道はヨーロッパの至る所からサンチアゴ・デ・コンポステーラに向かって巡らされている。パンプローナから走ってきた「フランス人の道」は最も多くの人々が行く道であるが、「銀の道」「北の道」や海上ルートでビスケー湾にランディングする「イギリス人の道」などなど多くある。また道はスペイン国内だけでなくヨーロッパ各国にある。自転車で走ったことのある街でもスイスのザンクト・ガレンや湖上に歩道橋を設えたラッパーズウィールも巡礼道上にある。そして車窓から歩く姿が見えたのが「ポルトガルの道」を行く巡礼者だった。リスボンから600km以上歩いてきた人たちも、もう数日歩けばサンチアゴ大聖堂を見上げる筈であった。
サンチアゴ・デ・コンポステーラからビーゴに向かう途中の車窓からの風景
◆ビーゴ駅での出来事
訪れるとは全く考えていなかったし、街の名前も全く知らなかったビーゴの街の第一印象は悪かった。電車を降り、そのまま窓口で翌日のリスボン行きの切符を買おうと並び、順番が来たので“リスボンまで片道一枚”と言うと、全く分らないスペイン語で大きな声を出してまくし立てて来る。言葉は分からないが身振り手振りで“買えない!”と言っているようで取りつく島もない。後ろに切符を買う人の列が長くなってくるし、言ってることも一向に理解できないので取り敢えず退散する。
一旦バルで休憩し再び行くと窓口は女性の駅員に変わっているので、チャンスと思い改めてリスボン行きを求めると、「横に避けて少し待って」と英語で指示が出る。そして列に並んだ客の対応が一通り済むと窓口に手招きし何の問題もなく発券してくれる。どうも先程の駅員は行く先がポルトガルつまり国内ではないので他の客を捌くまで横で待てと言ったのだろうと想像はついたが、言葉が通じない悲哀を大いに感じた。
途中下車せざるを得なかったビーゴ駅
◆ビービーゴの街
大西洋に面したビーゴはスペイン最大の漁港がある港町である。街の様子はまるで分らないが先ずは海を右に見て賑やかそうな方向に進む。走りながら山の方を見るとどの道も海から離れると急な坂でぐんぐん高度を上げ、びっしりと建物で埋め尽くされている。暫く海沿いに走ると海岸沿いには観光客相手と思われるパエリアやシーフードを出すレストランが林立しており。港には7~8層ほどの構造を持つ豪華客船が接岸している。観光の街でもありそうだった。
ビーゴの街は海岸から山の上まで急坂でつながった街だった。
ほど近い所で見つけたホテルはちょっとだけ坂を上がったところにある安宿で荷物を置いてすぐに街歩きに出る。ビーゴの街は山裾を上に向かって開いて築かれた街のようで急な山に向かって駆け上がっている。そんな坂を上り迷路のようになった細道を歩き回る。目的を持っての歩きではなく気が向くままに彷徨し、山のてっぺんにあるカストロ要塞跡まで行く。疲れたら見晴らしの良いバールで街の家並と海の景観を見ながらコーヒーブレークする。時間に縛られない贅沢なひと時の徘徊であった。(走行距離 10km)
ビーゴの高台にあるカフェからは赤茶色の甍の波と海が望めた。