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5月30日（晴れ）
アルツア⇒サンチアゴ・デ・コンポステーラ
◆聖地サンチアゴ・デ・コンポステーラに向けて
夜明けと同時に出発する。アンドレ夫妻を加えた６人が隊列を組んでスタートするが、すぐに上り坂に差しかかり、みんな自分の力に合わせたペースで走るので隊列は瞬く間に長く伸びて行く。私の前にはエイヴァルトとフランツが走り、後ろを振り返ると、アンドレ夫妻とデットの３人が遅れて坂を上がってくる。また、振り返って見る景色は素晴らしい。山の端からオレンジ色に輝く陽が昇り、手前にある青々とした畑地を朝霧が覆う幻想的で美しい景色が見える。
この日は歩いて聖地を目指す巡礼者もひと際多くなる。多くの巡礼者はサンチアゴに着いたら巡礼証明書をもらうのであるが、もらうには条件がある。歩いて巡る場合には最低100km、自転車なら200kmを走ることと、アルベルゲなどでクレデンシャルに毎日最低一個のスタンプを貰う必要がある。そのため１００km圏内では一気に巡礼者が増えるのであった。また、山岳地帯の難所を終えて、これから二、三日歩けばサンチアゴ・デ・コンポステーラに到着するとあって歩いている人たちのやけに表情は明るい。
昇る朝日とともに出発。振り返ると朝もやのかかる美しいアルツア郊外の景観が広がっていた。
◆巡礼成就のサンチアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂へ
サンチアゴの市内に入り、大聖堂の間近まで来ると建物同士をつなぐアーチ状のトンネルがある。潜って出た先が大聖堂の正面にあるオブラドイロ広場に出る。いよいよアーチを潜ろうとした時、５人の足が止まりエイヴァルトが「あなたが先に行け」と先を空けてくれる。５人11年前にきた経験があるので初めての私を押し出してくれたのであった。初めて出会ってから８日間一緒に走る間に気心も知れお互いに楽しく旅をしてきたのであるが、この優しい気遣いには嬉しくて涙が出るほど感激した。
そしてアーチを潜るとオブラドイロ広場に出る。正面から見たバロック様式のサンチアゴ大聖堂は歴史を感じさせるものであったが、改修中で主な部分には養生がされている。せっかくの大聖堂の雄姿がありのままに見られず些かガッカリ。しかし、広場の左手には旧王立救護院をそのまま生かしたホテル、後ろにはラジョイ宮殿、右手にはパソ・デ・フォンセカと立派な建築物で囲まれ相関であった。
念願のスペイン巡礼道ゴールのサンチアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂は残念ながら工事中で養生がかかっていた。
広いオブラドイロ広場には多くの巡礼者が座り込んでいる。特に日陰になるラジョイ宮殿の前は座り込んだ巡礼者で歩けない程に混雑している。長い時間をかけて聖地巡礼を達成した満足感でほほ笑んでいる人も多いが、足をさすり疲れ果てた人もいる。パンプローナから自転車で巡った巡礼道で様々苦労もあったが、どうやら歩いて巡礼をした人にもそれ以上に苦労があり、未だ苦しんでいる人々と苦しみを超えて喜びを感じている人達がいるように思えた。しかし、どんな行程を経ようとも巡礼を終えた人には大きな達成感があるに違いないと確信した。
着いた！
◆仲が良い13人兄弟
また、広場では二人のオランダからが熱狂的に出迎えてくれた。二人はデットの13人兄弟の姉の旦那さんとその娘だそうで、オランダから二日かけてバスを運転し、わざわざ五人を迎えに来たのだと言う。デットが言うには彼女の親の時代にオランダでは子沢山は当たり前だったとのことで、六男七女の13人兄弟も珍しくはなかったし、兄弟みんな今でも仲良くしていてハッピーだと。確かにみんなでカフェに入っても賑やかで楽しく話している。
13人兄弟のファミリーはいつも和気あいあい。
◆早いサンチアゴ着で予定変更
巡礼道の起点としたパンプローナを発つ時に、大凡の予定では6月2日前後にサンチアゴに着き、そのままマドリッドに戻って数日の間に近場を観光して巡る予定だったが、“三人の優秀なオランダ人ガイド”のお蔭で3日程到着が早まった。思ったよりも時間的に余裕が生じたので、そのままマドリッドに戻る予定を変更して、行ったことのないポルトガルのリスボンに向かうことにした。
キンターナ広場からのカテドラルなど
カテドラルで祈りを捧げる人達
決めたらからにはと、早速駅に行き、列車の運行状況を確認に行く。するとポルトガル方面に行く列車は数多くあるが、直通でリスボンに行く列車は一日二本だけで、それも早朝出発か深夜近いリスボン到着しかない。両国ともEU加盟国で且つ国境での審査もないシェンゲン協定加盟国なのでもっと自由に鉄道も乗り入れていると思っていたが、そうでもない。旅行者には不便でならない。ホテルも予約せず事情も分からないリスボンに深夜到着も気が乗らない。やむを得ず国境の街ビーゴで一旦下車し、翌日早めにリスボンに向かうことにした。（走行距離 ３９ｋｍ）
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