6月3日(晴れ)
from Lisbon to Madrid
◆マドリッド市内観光
この日はゆったりとスケジュールをとり、観光ポイントの発見のモニュメント、ベレンの塔、ジェロニモス修道院をポタリングして回ろうと考えていた。
三つの観光ポイントへはホテルからコメルシオ広場に出て、テージョ川沿いに走れば行き着く。自転車は交通量の多いリベイラ・ナス・ダウス通りを少しだけ走って、直ぐにテージョ川沿いの自転車道に入る。舗装も真新しくできたばかりの道は正面に4月25日橋を見ながら進む。この橋は1974年の4月25日に起き、ヨーロッパでもっとも長く続いた独裁政権を倒したカーネーション革命を記念して造られたものだ。2km以上ある立派なつり橋で対岸には大きな十字架も観える。
テージョ川に架かる4月25日橋。橋の名前はカーネーション革命に因んでつけられたものだが私の誕生日ともいっしょだった。
橋を潜り抜けると発見のモニュメントが白く輝いて見える。ポルトガルが最も繁栄した大航海時代を記念して作られたモニュメントにはヴァスコ・ダ・ガマやエンリケ航海王子など時の英雄たちが船の舳先から遠く新大陸を見るような情景が彫りこまれ、英雄たちの夢とロマンを感じさせる。
また、記念碑前の石畳には大きなモザイクで描かれた大きな世界地図があり、航海の末にたどり着いた地名、到達年などが記されている。記念に一枚写真を撮ろうとしても次から次へと来る観光客が乗っかるので良い写真は全く撮れない。私もそうであるが、どの観光客も自国に興味があるようで、眺めていればどの国から来ているのかも分かり写真とは別の新しい楽しみ方も出来た。
エンリケ航海王子の生誕500年を記念して創られたモニュメントでエンリケ王子、
バスコ・ダ・ガマ、フランシスコ・ザビエルなど大航海時代の人物が描かれている。
ベレンの塔も発見のモニュメントから目と鼻の先にある。世界一周航海を成し遂げたヴァスコ・ダ・ガマの偉業を称えて16世紀に造られた塔はテージョ川を行き交う船の監視も兼ねているので川の浅瀬にある。そのため塔と言うより小さな要塞のようなもので随所に大砲があり、牢屋なども備えられているものである。
ジェロニモス修道院とともに世界遺産に指定されているが思っていた以上に小さな建築物でちょっと期待ほどでもなかった。
テージョ川の岸にマヌエル一世によってバスコ・ダ・ガマの世界一周を記念して建てられたもの。
最後の見物はジェロニモス修道院。修道院へは幹線道路を渡れば直ぐの場所にあるが、どう探しても自転車ですんなりと渡れる道が全くない。海外では往々に出くわすことで道の付け方が日本とは全く違うので諦めなければならない。結局渡ることができるのはベレンの塔に隣接する公園の端にある歩道橋だけないので、仕方なく自転車を担いで反対側に行く。プラザ・ド・インベーリオ庭園からのジェロニモス修道院は全体が見通せ、庭園の手入れされた木々も相まって素晴らしく、間近で見るよりも断然良い。大航海時代にポルトガルで流行ったマヌエル様式の修道院の造作は見飽きることもなく時間の流れも忘れてゆっくりと眺める。
延々長蛇の列を成しているチケット売り場を抜け入場すると修道院の回廊に出る。構成されている柱や天井は精緻な彫刻で装飾され全盛期のポルトガルの繁栄を彷彿とさせる。また回廊の空気はひんやり涼しい。ゆっくりと装飾の細やかな細工を見ながらここでもゆったりとした時間を楽しむことが出来た。
ジェロニモス修道院には長蛇の列が出来ていた。
◆無賃乗車トラブル
午後7時前とちょっと早めにバスターミナルに行くも、まだマドリッド行きの乗客らしき人は来てない。
バスターミナルの停車場は十分広いので、直ぐにその場で自転車をたたみ輪行袋に入れる作業に取り掛かる。ブレーキを緩め、脱着ペダルと前後輪を外し、拡げた袋の上に置いたフレーム本体に車輪を縛り付ける。お恥ずかしいことに数年前まで輪行袋に上手く収めることが出来ずに時間もかかったが、やっと手早く詰められるようになった。
すでに陽は傾きかけているがまだ十分に明るいターミナルは日陰に入ると涼しいというよりも寒い。昼は驚くほど暑いのに一気に寒さを感じる。寒さを凌ぐために長袖シャツ、ウインドブレーカーを着込みバスを待つ。定刻過ぎにバスが入って来る。ホテルでもらった座席番号が表示されているペーパーを見せて乗り込もうとするとスタッフが何か言ってくる。言っていることが良く判らないが、ホテルで予約を取ってもらい、これが渡されたペーパーだと答え乗り込んだが、スタッフとドライバーが何か不審そうに話している。それでもバスは20人程の乗客を乗せて出発する。バスはすぐにテージョ川の河口に架けられている全長17kmとヨーロッパで最も長いヴァスコ・ダ・ガマ橋を渡り始める。ちょうど日没時間だったのでバスの後方にはまさに沈みゆくオレンジ色に染まった太陽が眩しくリスボンの先にある大西洋に見える。この見事な夕景がポルトガル最後の思い出になるはずだった。が、橋を渡り終わるとバスが停車する。まだ空席があるので停留所で客を乗せるのかと思っていると、運転手が歩いて来て、一言”降りろ!”と言う。降りろと言う意味が全く分からないし、ここでこの時間に降ろされたらどうなるのかと頭の中で色々なことが駆け巡る。どうして?と聞くと、良く判らない英語でしかも早口で話してくるがさっぱり分からない。すると通路の反対側に座っていたご夫婦の旦那さんが”本社に入金確認したが入ってないので、降りろと言っている”と通訳してくれる。どうすべきか考えた結果、交渉しても始まらないので運賃を支払いやっと出発した。後日ホテルでのやり取りを思い出すと料金は乗車時支払うことを言われていたが、予約時にクレジットカードも提示し必要なことも入力されていたので、てっきり支払い済みと思い込んでいた自分のミスだったと気付いた。
テージョ川沿いを走る集団。川沿いには真新しいサイクリングパスが整備されていた。