自転車旅行5.20 パンプローナ⇒エステーリャ

5月20日(晴れ)

from Pamplona to Estella

◆「フランス人の道」を走るきっかけ

巡礼道「フランス人の道」を走ろうと思ったのは台北在住のKatsさんからのお勧めがきっかけだった。前年11月ご一緒に三回目の台湾サイクリングをした時に南投県から日月潭に上った。日月潭行きは当初計画にはなかったが行ってみたいとKatsさんにお願いして実現したものであったが、お願いしたものの坂嫌いなので上り切れるか大いに心配でもあった。私の脚力を熟知しているKatsは大幅にペースを落とすという気配りをしてくれたお陰で、足を付かずに上がり切ることが出来た。その際に「これなら次はスペイン巡礼道を楽しんだら!」と言われたことが始まりだった。

その煽てに乗って計画を始めたが、本当に走り通せるのかいつも不安ばかりであった。最悪駄目なら自転車を曳いて峠越えればなんとかなると考えた。また、フランス人の道を行くのなら起点であるフランスのサン・ジャン・ピエ・ド・ポーの街からスタートしてピレネー山脈越えてサンチアゴ・デ・コンポステーラを目指すべきであるが、ピレネー越えの自信は全くなかったのでパンプローナから出発することにしたのであった。そんなことを考えながらスタートした旅であったが走り終わってみると波乱も多かったが楽しく思い出深い旅になった。

市庁舎前から始まった巡礼道には象徴のホタテ貝の鋲の目印が順路に沿って打たれている

◆巡礼道サイクリングの開始

市庁舎前のカフェベーカリーで朝食を終えて外に出ると、巡礼道を歩いてサンチアゴ・デ・コンポステーラに向かう男女がいる。二人ともサン・ジャン・ピエ・ド・ポーから歩き始めピレネー山脈を越え、これから30日程かけてサンチアゴまで歩くのだと言う。自転車で行くことですら厳しい道だと考えていたが、歩いて行くのはそれ以上に過酷な旅だと考えさせられた。

多くの巡礼者も歩いてサンチアゴ・デ・コンポステーラに向かう。

歩き巡礼用の地図しかなく少々心もとなかったが、ホタテ貝の目印を辿れば迷うことなく行けると聞いて安心して出発したが、直ぐに考えの甘さに気付かされた。多くの巡礼者を見ながら進むが、当然歩く道と自転車で行く道には違いがあり、どこかで自転車用の表示を見落としてしまうとパニックに。何もない畑の真っただ中に入り込んでしまったが、それでも地図を見つつ進み、これかなと思った道を走っていると犬を連れたお年寄りに出会う。スペイン語しか話さないようなので地名だけ伝えると今来た道を戻り、最初に交差した道を右へ行けと身振り手振りで熱心に教えてくれた。

言われた通りに走るが、道はどうも違う方に曲がり坂を上って行く。おかしいと思いつつ暫く行くと散歩中の女性に会ったので再び聞くと、来た道を戻って真っすぐ行けと!

やっぱりと思いながらもと来た道を戻り、途中でスペイン警察のパトカーを見つけ道を尋ねる。3人の警察官はみんな陽気でフレンドリーなナイスガイ。お蔭でやっと本来のNA1110、エステーリャ自動車道に出る。並行して高速道路A12カミーノ・デ・サンチアゴが走っているためにNA1110は自動車道と言っても車の往来はほとんどない。

巡礼道は最初から迷走気味で自転車用の地図がないことを痛感する。

坂を上ったり下ったりする道の左右に青々とした麦畑がどこまでも続き、遠くに見える山の頂には風車がずらりと並び、ゆっくりと羽根を回している。上り下りの続く道だが贅沢な自転車旅を実感できる道だ。

市街地を出ると緑の沃地が広がっている。広いスペインはエリアによって気象条件が大きく異なるので地域特性も大いに異なる。

◆王妃の橋の街 プエンテ・ラ・レイナ

パンプローナから迷わず走ればプエンテ・ラ・レイナまでは1時間半位で着くのだが、倍以上の時間がかかってしまう。レイナの街に入ると何人ものサイクリストが休んでいるカフェが見えたのでちょっと一休み。

多くのサイクリストが寛ぐプエンテ・ラ・レイナの街でコーヒーブレーク

この街の名前プエンテ・ラ・レイナは王妃の橋という意味でアルガ川に架かるロマネスク様式の橋に由来している。半円のアーチが連なって築かれた橋をNA-1110に架かる橋の中央から眺めると、水面に映ったアーチと合わせて円形に開いた空間には空や木立が写り込み、見飽きない景色が生まれていた。この橋が1000年近くも前に造られたものと想うと当時のスペインはどんな国だったのかさまざま偲ばれた。

アルガ川にかかるプエンテ・ラ・レイナは優美なロマネスク様式の橋と川面に映る影が合わさり作り出す姿が素晴らしく見飽きることはない。

◆エガ川沿いの古い街エステーリャ

ひたすらNA1110を走って昼過ぎにはエステーリャに着いた。気温6度のパンプローナを出る時は持っている有りっ丈の衣類を重ね着して出発したが、日差しが徐々に強くなったことと、約700mの獲得高度の道を走ってくる間に一枚ずつ脱ぎ、エステーリャに着くころにはすっかり薄着になっていたし、エステーリャに着くとむしろ暑い位だ。

エガ川沿いの小さな街エステーリャは歴史を感じさせる街だった。ホテルの部屋の眼前にはごつごつした岩に立つ古い教会がある。上に上がると街の古びた甍が見渡せる。エゴ川に行くとこれまた歴史を感じさせる石造りのアーチ橋があり、橋の中央からは対岸の修道院も望める。決して派手さはないがこぢんまりとした良い街だった。(走行距離 54km)

巡礼道の脇に立つ石造りの道しるべ

エガ川沿いにあるエステーリャの街。

自転車旅行5.21 エステーリャ⇒ログローニョ