緩やかな丘のうねりが続くトスカーナの風景
丘の上のシエナの歴史地区には曲がりくねった道が迷路のように続いている。そんな迷路は少し歩くだけで目指すカンポ広場の方向を分からなくしてしまうので、通りがかった若い女性に広場への道を尋ねると同じ方向に行くので案内してあげると言う。二年前にハンガリーからシエナに移り住み古い街並みが大変気に入っているという彼女に道の途中にある由緒ある建築物のガイドをしてもらいながら歩いてくると、建物を穿って造られたトンネルからカンポ広場が垣間見える。すり鉢状に傾斜のある扇形のカンポ広場はマンジャの塔や市庁舎や多くの建造物でぐるりを囲まれ、その雰囲気は中世の栄華を彷彿とさせるものだった。
6月4日(快晴)
in Firenze
◆シエナ観光
シエナには列車かバスで行けるが、バスの方が便利だと言うので、歩いて駅の近くにあるバスターミナルに行く。バスは歴史あるフィレンツェの街の狭くて路上駐車の車で溢れる道を器用に右左折しながら進み、市外に出てから漸く高速道路に入った。高速に入ると車窓からはトスカーナ地方特有のなだらかな緑の丘や低い山が遠望でき、バスでの移動も観光なのだと思いながら時間を過ごした。
そしてこの広場では年二回「パリオ」という伝統の競馬が行われるのだと言う。鞍を着けない馬にまたがり狭くて急なコーナーもある広場を一周するもので観客は広場の真ん中または広場の周りの建物のベランダや窓から見物するのだそうでお奨めだと言う。
奨められて来たシエナであったが、カンポ広場だけでなくシエナ大聖堂や街から離れて見る丘の上のシエナ歴史地区の景観も見応えのあるもので期待以上の街だった。
中世にタイムスリップできるシエナ
◆サンジミニャーノ
世界遺産の街、サンジミニャーノは栄華を極めた時代に時の金持ちや権力者が己の富と権力の象徴として高い塔を競い合って建て、今でも幾つもの塔が残っている街である。富や権力の象徴を競い合った日本国内の例でたとえると、より立派な「うだつ」を競い合って造った美濃の街に重なるものがあると思っていたので一度は訪れて見たい街だった。
サンジミニャーノのチステルナ広場
◆フィレンツェに戻れない?
夕方4時でもまだ暑い。サンジミニャーノに行ったらピスタチオ味のアイスクリームがお奨めと聞いていたので、バス待ちの時間にサン・ジョバンニ門の脇にあるカフェで食べることにした。一つだけでなく味を選べと店員が言うのでもう一つは色鮮やかなマンゴー味を選び、食べ比べて見ると個人的にはマンゴーの圧倒的勝利に終わったが、程よく暑気払いが出来た。
アイスクリームを食べ終え、頃合を見計らってバス停に行くと時間通りにどんぴしゃでバスが入ってくる。念のために行き先表示を見ると「シエナ」になっている。シエナに戻っても仕方ないと思いつつ、やり過ごし次を待つと又も「シエナ」。フェレンツエ行きが来ない。訳が分からないのでバス停に来た客に尋ねるとシエナ行きに乗って、途中のポッジポンシでフィレンツェ行きのバスか、そこで列車に乗り換えるのだと言う。やっと理解できたがブラジルから観光に来たその客は一緒に行こうと誘ってくれる。ちょっと余分な時間を喰ってしまったがホット一息つけた。
サンジミニャーノの街並み
サン・ジョバンニ門を潜って入ったサンジミニャーノの街並みは今なお中世そのままの佇まいで、サン・ジョバンニ通りに沿った建物の先に高い塔が見える。さらに、多くの観光客で賑わう道を進んで行くと中央に井戸のあるチステルナ広場に出る。井戸から周りを見上げると幾つもの塔が見える絶景ポイントになっている。余り観光客が来ないような路地に入って街の裏を散策すると生活感あふれるサンジミニャーノの素顔が見えたような気になった。