自転車旅行 7.07 グライン⇒オッテンスハイム

7月7日(快晴)

from Grein to Ottensheim

◆向かい風

ウィーンを出発してから毎日向かい風の中を走って来たが今日は特に強く、木立は風に吹かれてざわざわと音をたてている。悪いことに多少方角が変わっても、風がドナウ川の川筋に沿って吹いているためなのか常にアゲインストである。

ヨーロッパ一帯は年中偏西風の影響を受けるエリアなので基本的には西から東に向けて走るのが良いと言えるし、風は走る時の大きい要素になるので走行ルートを決める時には常に考慮に入れておくべきである。

実際、ドナウ川を走るサイクリストの数は風を考えてコースを決める人もいるのか東に向かう者がはるかに多い。

おとうさんを先頭に家族連れでサイクリングを楽しむ一家

◆珍しい日本円

グレインから田舎道を行きミッターキルヒュンという小さな街にさしかかると銀行が目に入った。ウィーン出発以来、両替も引き出しもしてなかったのでユーロが底をつき心細くなっていた。

フランスやアイルランドの地方都市では日本円を両替することが出来なかった経験があるので、ダメもとで手持ちの一万円札をさし出して日本円の両替は可能か窓口スタッフに聞くとあっさりOKと言うが、奥に行って何やらボスらしき人物と一万円札を見本帳と見比べ、指で弾いて手触りを探り、陽に透かし眺めてぼそぼそ相談している。

やっぱりだめなのかと思い聞いてみると、両替はOKだが、何しろ初めて見る日本円の真贋が分からないと言う。

もし不安ならパスポートを提示するので両替して貰えないかと言うと、コピーを取りやっと両替が出来た。両替を済ますと銀行員は初めての日本円が見られてラッキーだったと笑顔でユーロを渡してくれた。

オーストリアの銀行は銀行らしくない外観で内装もおしゃれだった

◆マウトハウゼンのナチス強制収容所

リンツの手前マウトハウゼンの郊外にはナチス強制収容所がある。ナチスの施設としてはエルベ川をサイクリングした時にチェコのテレジーンでゲットーを訪れたことがあった。ゲットーはユダヤ人達を強制収容所に送る中間施設だったためか、訪れたところには鉄条網で覆われた施設はなかったが、一度は多くの悲劇を生んだ強制収容所を訪れ、歴史に直面してみたいと思っていたものであった。

街のインフォメーションで地図を手に入れ行き方を確認すると、急坂を上った丘の上にあるので自転車を街中に留め置いて行くように助言されたので、それに従って歩いて行くことにした。住宅街を抜けると程なくして森に入り、急坂がうねって続く。汗をかきながら延々上って行くとやっと車の登坂道に合流する。

合流したところからは山の上に鉄条網と高い塀で覆われた収容所や要所に配置された監視塔が見えて来る。高い塀沿いに歩いて入所すると幾つもの木造収容施設が並んでおり、建物内は簡素な木製の多段ベッドが備わっている。

鉄条網が張り巡らされた塀の上からはドナウ川対岸の丘の木々の緑が望め、この景色を収容者がどのような思いで見ていたかを考えると自然と手を合わせる気持ちになった。

ドナウ川沿いにあったマウトハウゼンのインフォメーション

マウトハウゼン強制収容所の正面

収容者の自由を奪った鉄条網、高い壁と監視所

◆リンツを飛ばして

以前リンツで一泊し街を歩いた経験があることや、翌日のパッサウまでの行程を考え併せ、リンツの街には立ち寄らずに少しでも先に進むことにした。

リンツを過ぎるとドナウ川の両岸の景色が変わり、間近に山が迫る地形になってくる。川幅も心なしか狭くなり、自転車道は車道のすぐ脇を走るようになる。

どこにホテルがあるか判らないまま進んでオッテンスハイムまで来ると、夕方にもかかわらず多くの客でにぎわう一軒のカフェが現れた。忙しく接客しているスタッフの合間を見てホテルを尋ねると親切に紙にホテル名と簡単な地図を書いて教えてくれる。夕暮れも迫りこの先どこにホテルがあるか分からなかっただけにほっとした気持ちになれた。

(走行距離 74km)

オッテンスハイムのホテル前

自転車旅行 7.08 オッテンスハイム⇒パッサウ