3 海外自転車旅行の一日

3-1 一日のスケジュール

基本は「早く出発し、早く到着する」ことにしている。

私は目的地へは午後3時位までに到着するつもりで、到着時間から逆算して出発時間を決めている。

おおよそ出発は8時~9時頃で走行予定距離が短い場合は遅らせて出発することもある。

もちろん、途中で道草や寄り道することも計算に入れておき、滞在時間でも調整している。

昼食はアウトドアで絶景をおかずに食べても良いし、どこかでカフェを見つけてゆっくりコーヒーでも味わいながら食べるのも良い。

出発から到着まで6~7時間程度あるので、ゆっくりと昼食を兼ねて休んだり、途中で観光をしても十分である。

ガストホフなどは早過ぎると未だ宿を開けていないこともある。

だから目的地に着いても宿泊受付ができないこともあるが、遅すぎると宿が取りにくくなり、焦ってしまう恐れもあるので、遅くとも午後3時位着を目安にしている。

万一、この時間で目的の街で宿泊が難しくても、他の街で探す時間的余裕が十分にある。

実際オランダのヴィッセケルクでは街に宿がなく、隣町まで走ったこともあった。

目的地に着いたら先ず宿探しを始め、宿に入ったら入浴と洗濯をして、一段落したら街歩きを始めるのが普通のパターンである。

夏場であれば日没が午後9時~10時頃と日が長く、レストランなども余り早く行っても客はまばらで、夜も8時ごろからにぎわいだす位なので、午後4時ごろから街歩きしても十二分に時間はある。

もちろん博物館や美術館は閉館時間があるのでこの限りではないのは言うまでもない。

3-2 宿探し

宿探しには自力で探す方法とインフォメーションセンターで紹介を受ける方法の二つがある。

基本的に、私は先ず自力で探すことを優先し、探すことが難しいと分かった時にインフォメーションセンターを利用するように使い分けをしている。

自力で探す場合には先ず最初に街の観光ポイントを目指し、街巡りに便利なように旧市街やその街一番の大聖堂や有名建築物などのランドマーク周辺を探す。

一見してホテルがありそうな場所が分からない時には、迷うことなく街の人に聞いて、ありそうなエリアを探る。

そして、自分が街巡りに便利だと思うところを中心に探し、相応しい宿を選べば良い。

部屋の間取りや内装などが気になるようであれば、どこの宿でも希望すれば決める前に部屋を見せてくれるので、納得して選ぶと良い。

古いホテルやガストホフの場合、部屋ごとに間取りや大きさが全く違うのが当たり前なので遠慮することはない。

また、駅前にもホテルは多いが、駅前ホテルは概して夜中まで嬌声や騒音が響き渡り、ゆっくり寝るには適していないし、料金の割には部屋や朝食が貧弱であるので、どうしても翌朝早く列車移動する時以外は、余りお奨めできないものである。

訪れた街がバカンスの最繁忙期であったり、何か大きなイベントなどがあって宿泊がなかなか取りづらい時などにはインフォメーションセンターで紹介してもらう。

インフォメーションセンターを利用する場合、先ずセンターを探さなければならない。

インフォメーションにはJTBや近畿日本ツーリストといった旅行代理店のように旅の企画や仲介をするものと、ツーリスト向けに宿やイベントを紹介するものがある。

どちらも「i」マークが付いた看板が目印で識別が少々難しく、間違えたことも幾度もあったが、駅隣接の立地や顧客の様子で見分けたい。

ツーリストに宿を紹介するインフォメーションの多くは旧市街地のような観光ポイントにある。

係員に宿泊日数、部屋の形態、おおよその予算、立地など宿泊の具体的な希望事項を話すと、相応しいところを紹介してくれる。

街巡りを考慮すると予算もさることながら立地が最重要である。

街歩きをしたい場所から大きく外れたところに泊まると、けっこう街を歩くのが面倒になるのでできれば避けたいものである。

インフォメーションセンターによってはその場で紹介手数料だけを支払い、ホテルで残金を払うシステムもある。

例えば宿泊料金が100€とすると、センターで15€支払い、残り85€をホテルで払うことになる。

宿泊代は予め目安を決めておこう。

直接宿に行ってもインフォメーションセンターであっても交渉する前に自分なりの条件を設定しておくと良い。

経験を重ねると凡そ幾ら位の宿泊費用なのか見当が付くので、それを頭において交渉し、想定内の価格であれば宿泊を決めるし、想定外の価格であれば、他を当たることにすれば良い。

時には、高いので他をあたると言うと幾らならOKなのだと問い返されることもあるので、希望の価格を言うと結構歩み寄ってくれるものである。

3-3 洗濯

携行する衣類は最小限のものしか持たないことから、洗濯は毎日の日課だと言えるし、携行する衣類はできれば乾かしやすいものを準備するのが望ましい。

また、宿に洗濯機があるわけではないので、洗面所で手洗いすることとなるので、投宿直後の入浴時に洗濯もついでに済ませるのが便利だと思う。

お湯を張った洗面タブに洗濯物を入れて、洗濯洗剤代わりに備え付けのボディシャンプーを使って洗う。

毎日こまめに着替えて洗えば、汚れがこびり付いてしまう訳ではないので、洗面タブに漬け込んみ、しばらくモミ洗いして十分にすすげば洗濯は完璧である。

翌朝までに乾かさなければならないことから、旅の洗濯の最重要ポイントは乾燥にある。

そのため、まずは洗濯したものを絞って絞って絞り切り、可能な限り水気を落とすことである。

裏ワザは、乾きにくい衣類は乾いたバスタオルと一緒にロール状に巻き込んで、巻いた洗濯物のロール巻きを足で十分踏み込んでバスタオルに水分を移してやるのである。

こうすればかなり水分がとれるので、そのまま日の当たる窓際や椅子の背、あるいはハンガーに掛けて干してやると翌朝にはすっかり乾いているし、それでも乾きが悪そうな時には少々手間ではあるが備え付けのドライヤーで乾かす。

また、ズボンのように大きなものは連泊する時を狙って洗濯すれば良い。

3-4 雨天の走行

雨天走行に関しては自分自身の考え方が旅を重ねるにしたがって変わってきた。

初めての海外サイクリングのロマンチック街道の初日が強い雨の中のスタートであった。レインウエアを着込んで走ると指先は冷え、体は汗で蒸れ、靴の中はぐしょぐしょで快く走ることはできなかった。

最初の頃はそれも当たり前で、サラリーマン時代のエコノミックアニマルのごとく「何が何でも走る!」という考えであったが、徐々に「サイクリングは楽しむもの」へと心境が変わり、今では「走ることも旅の楽しみの一つの要素」のように進化?してきた。

考え方も様々あり一概に言えないが、あるドイツ人の年配サイクリストが「雨の日はゆっくり休むのさ」と言った言葉を思い出す。

3-5 休養日

連日走ることで、疲れていないようでも結構疲れているものなので、疲れ切ってしまう前に休養日を作りたい。

私自身ロマンチック街道を走っていた時には疲れを感じなかったが、帰った途端どっと疲れが出てしばらく何をする気にもならなかった。

気づかない内に疲労を蓄積していたようだ。

休養を入れる方法は幾つかある。完全に休んで疲れを解消するためには連泊することが良く、大きな街や見どころの多い街で観光を兼ねてゆっくりすることをお奨めする。

街歩きをするにしても時間を持て余すような小さな街で連泊するには適していないのであれば、朝もゆっくりしてから、隣り合う街までちょっとだけ走ることでも良い。

或いはいっそのこと列車移動で適当な街に行ってしまうこともありだ。また、嫌なことであるが雨天になった時に「恵みの雨」と考えて停滞し、休養に充てることも良い。

サイクリングルートから外れてエクスカーションも試してみれば良い。

自転車を宿に預けて、泊りがけでどこか行きたい街に列車で出かけるのも休養と観光を兼ねたアイデアである。

2011年のブダペスト⇒ザルツブルクのサイクリングルートの計画の際にどうしても行きたかったチェコのプラハ経由も検討するがどうしても無理があった。

しかし、ウィーンに自転車を置いて列車であるが一泊小旅行で行くことができ大変いい旅ができた。

走ることにだけこだわって、年甲斐もなく猪突猛進することは避けて、頭を柔らかくして色々な方法で楽しみながらできる休養を取りたい。

3-6 昼食の携行

水と食べ物は朝の出発時に十分に用意して出発したい。

日本と違ってコンビニエンスストアーなどはなく、街中で食料品店を見つけることすら難しく、まして快適に走れる郊外では驚くほど店が少ない。

そんな状況なので私はほとんどいつも昼食用にサンドイッチを携行している。

朝食の時に、二つに割ったパンにたっぷりのハムやサラミ、チーズに野菜をこれでもかと挟んだ豪華サンドイッチを作り、昼食用に用意するのである。

その他にゆで卵、リンゴやオレンジなどのフルーツに個包装のジャムやパテも持てば十分な昼食になる。

お奨めはジャムだ。走って疲れているためかハム、チーズのサンドイッチに甘いジャムをかけるとこれが驚くほど合う。ぜひお試しを。

景色の良い場所を見つけてランチを食べるのは開放的で気分も伸びやかになり美味しく食が進む。

ベンチに座るも良いし、日陰の草地に座り込んで食べるも中々良いものであるし、時にはカフェを見つけて美味しいコーヒーと持参の手作りサンドイッチを食べるのも良い。

その時にはお店の人に飲み物を頼むので持参のランチを食べても良いか問うと、まず快くOKしてくれるのでマナーとして一言話しておいた方が良い。

その他にはチョコレートやビスケットなど手軽にカロリー補給できるものを適量持ちたい。

3-7 十分な「水」

水の携行は食料以上に重要なことである。

水を買おうにも買えないことは珍しくもないので、私は2本の500mlペットボトルを持って出発するし、夏場の暑い時にはその他に2リットルの大型ボトルを荷台に括り付けて走る。

話は横道にそれるが、2010のスイス⇒オランダ自転車旅まで私はウオーターボトルを使っていたが、今は使っていない。

旅の途中で、ボトルを洗っていたらノズル部分から結構長いヌルッとしたものが出てきた。

どうやら手入れが悪かったために、水あか、つまりはバクテリアの塊バイオフィルムがびっしり付いていた。

ボトルの内側もやはり表面がヌルヌルになっていた。以来、使用中止!し、見た目と格好はともかくペットボトルにした。

水は買い方によって値段は大きく違う。

500mlの水を駅のキヨスクや土産物屋で買うと2~3€と結構高いが、スーパーでは500mlも1.5や2リットルの大型ボトルも値段に大差なく0.5~0.7€で買える。

だから、夕方にでもスーパーで詰め替え用に大型ボトルを買って、翌日に備えれば経済的でもある。

実用本位のペットボトルは忘れても気にもならず、今ではすっかり私のスタイルになっている。

また、普通の水ではなく、ガス入りの水が美味く感じるようになったが慣れなんだろう。

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