自転車旅行9.26 ショプロン⇒ポダースドルフ・アム・ゼー

9月26日(晴れ)

From Sopron to Podersdolf an See

◆痛恨の道一本の間違い

いつもの事ながら街を抜けるのは道を間違えやすく気を遣うものである。ショプロンの市街地図で確認するとホテルからすぐに左折し、そのまま三叉路にぶつかったら左折し、すぐに現れるラウンドアバウトの交差点を右に行けば最初のポイントであるフェルトゥードにスムーズに行けるはずだった。しかし、三叉路もラウンドアバウトも現れない。改めて地図を熟視すると最初に左折する道が違っていた。ホテルの直ぐ脇の駐車場に行く細道が正解であったが、まさかこの細い道は違うと思って、ほんの30mほど先のバスも通る大きな道を行ったのが間違いであった。通行人に現在地を聞きながら試行錯誤を繰り返し、やっとの思いで正解のルートに戻って街外れまで来ると上り坂に差しかかる。今日は起伏が多いかもと覚悟して上り切ったが、そこからは5km程バルフまではずっと下り坂で切る風を冷たく感じながら進む。バルフの手前で道は新道とちょっと道幅が狭く曲がりくねった旧道に分岐する。自転車に似合う曲がりくねった旧道に入ると道沿いには赤茶色の屋根に白壁の家が立ち並び道の両端は舗装面の境が明確でなく、自転車で走るのにふさわしい如何にも田舎道であった。

◆ビジターセンター

B10号線を走っていると右手に大きな茅葺の屋根と鳥の嘴を象形化したような木製の門扉が目を惹く建物が目に入った。ハンガリー伝統の様式かと思いつつ、特徴ある建物なので写真を撮ろうと敷地内に目をやると、女性スタッフが中に入ってらっしゃいと手招きしてくれ国籍を尋ねてきた。日本人だと答えると彼女の好奇心に俄然火が付き話し出す。大の日本びいきで乗っている車はもちろんトヨタ車だという。そしてハンガリー民族のマジャール人と日本人は遥か遠い昔の先祖は共通しており似た文化もあるという。例えばと、ここに屋根はノイジードル湖岸の葦で葺いたハンガリーの伝統的なものだが日本にも同じような茅葺屋根があるでしょ?と尋ねてくる。さらに奥から専門書を持ち出してきて、定置網漁は世界でも日本とハンガリーにだけ在ると、目を輝かせすごい勢いの機関銃英語で話しまくってくる。さらに環境維持と野鳥保護に力を入れているビジターセンターの活動を余すことなく語り、色々なパンフレットも渡してくれる。何とも熱心で印象的なセンタースタッフで良い思い出になった。

◆雀のお宿

夕方食事がてら散歩に出かけた埠頭の脇に瀟洒なホテル“Seewirt”があり、その三階建ての白い壁面はほれぼれとするほど見事に蔦で覆われている。見ていると何故か蔦の葉があちらこちらで揺れている。そして耳を澄ますと「チュンチュン、チュンチュン」と雀たちの鳴き声が盛んに聞こえてくる。更にちょっとだけ寝場所を変えるのだろうか雀がほんの一瞬姿を見せ、すぐに蔦の茂みに潜り込んでいく。さしずめ多くの雀たちのお宿と言うかマンションのようなもので、何とも微笑ましく、見飽きることがない。中々出会うことのない機会なので食後もう一度見に来ようとホテルのレストランで食事をすることにした。さすが高級なホテルだけにメニューも洒落ていて使われている食材もバラエティ豊か。せっかくだから普段口に出来ない物を頂こうとジビエメニューの「鹿肉の赤ワイン煮洋ナシのチャツネ添え」をオーダー。柔らかな肉をと期待したのだがちょっと硬い鹿肉でがっかりするも肉の煮込み料理に果実のチャツネが凄く良くあうことが分かり趣味の料理に応用できる収穫のひとつだった。食事を終え空もとっぷり更けた雀のお宿を観に行くと夕暮れ時とは全く違い蔦の葉も揺れないし物音一つもしない。お喋りタイムが終わり早々と寝てしまったようだった。(走行距離 64km)

自転車旅行9.27 ポダースドルフ・アム・ゼー⇒フィッシャムエント