自転車旅行6.05 マドリッド⇒トレド

6月5日(晴れ)

from Madrid to Toledo

◆行き先変更

この日はトレドへの一泊旅と決め、早朝アトーチャ駅に向かう。途中地元サラリーマンで賑わうカフェ・ベーカリーを見つけたのでパンとコーヒーで軽い食事を摂ることにした。食べながら地球の歩き方でトレド情報を見ていて、偶然1ページ余分に本をめくるとアランフェスの名が現れた。名前を見るなり哀愁に満ちた”アランフェス協奏曲”が思い出された。地図で確認すると2つの街はいずれもタホ川沿いにあり距離的にもそんなに遠くはない。上手く行けばバスでそのままトレドに行けるし、駄目ならアトーチャ駅に一度戻り、ついでに駅の側にあるソフィア王妃芸術センターに立ち寄り、ピカソの”ゲルニカ”だけを観てトレドに行こうと。全くの思いつきでの1日になりそうで、そうと決めたら直ぐに食べ終えて駅に向かった。

RENFEを降り立ったアランフェス駅

◆アランフェス

スペイン特急レンフェに乗ってアランフェスまではノンストップでほんの30分強の旅。アランフェス駅から宮殿までは長閑なプラタナスの並木道を歩いて向かう。並木道を抜けると芝を張った広い庭園と白地に窓枠を薄いえんじ色に彩色した宮殿が目の前に広がっている。小さな門から宮殿内に入りパルテレ庭園の噴水辺りから眺めるとアランフェス協奏曲を口ずさんでみたい気分になる。

哀愁漂うアランフェス協奏曲に導かれてきたアランフェス王宮

宮殿には幾つか趣きの異なった緑豊かな庭園があり、タホ川本流と人工的に造り引き込んだ川の間には最大のイスラ庭園があり、木立の間に整然と道が付けられている。せせらぎの流れる音を聞きながら歩く時間はまるでフェリペ2世の時間のようであった。

アランフェス宮殿には緑豊かで広大なイスラ庭園が隣り合っていた。

ひとしきり散策して観光案内所に行ってトレドに直接向かう方法を尋ねるがないとのことなので、次善の策として想定していた通りにいったんマドリッドに戻り、ソフィア王妃芸術センターに立ち寄り、その後トレドに行くことにした。

ソフィア王妃芸術センターにはピカソ、ダリ、ジョアン・ミロなどの近代美術品の収蔵が多いことで知られているが、目的はただ一つ”ゲルニカ”を見ることにあった。駆け足で何点もの作品を見て、ゲルニカが展示されているところに行くと、作品の前には多くの人達が見入っている。

絵画ゲルニカはスペイン内戦中に受けたドイツ軍の無差別爆撃への怒りから描かれたもので壁一面に広がる正に大作といえるピカソの代表的な作品である。抽象的な絵のあちらこちらに描かれている人や動物の表情から戦争の悲惨さがひしひし感じられ、時間を忘れて見入った。

作品から受ける感動に加えてシニアにとって無料で鑑賞できるソフィア王妃芸術センターはマドリッドに行った際には必須の訪問先と言える。

お昼は軽くガスパチョにピンチョで済ませる

◆古都トレド

アランフェスとソフィア王妃芸術センターへの寄り道をして、やっとトレド駅に降り立ったのは午後4時半になってしまった。一泊予定なのでホテルさえ確保できれば街歩きは翌日でも良い。街へはバスでも行けるがタホ川越しの街の全景も見たくて歩くことにした。通り沿いに歩きラウンドアバウトの交差点を過ぎる暫く行くと道は左にカーブし、トレドの街が見えて来る。タホ川対岸に見えるトレドの街はひと際高いアルカサルを頂点にしてびっしりと土色の建物で覆い尽くされている。街へはアルカンタラ橋を渡って入る。この橋はローマ時代に築かれ、様々な時代に幾度も破壊、再建を繰り返している。そのためなのか橋の両サイドに立つ門は建築様式が異なり、古からの歴史を感じさせるものであった。

駅から歩きカーブを回ると突然テージョ川に架かるサン・マリティン橋と丘の上のトレドの街が見えてくる。

橋を渡り門を潜ると高くて堅牢な石造りの城壁が現れ、壁の正面にはイスラムの影響を感じさせるような形の小さな城門がある。潜ると街に繋がる階段が続いている。階段を上り切っても更に上り坂と会談が延々と続き、汗だくでへとへとになってソコドベル広場に着く。タホ川の対岸から眺めていた小高い丘に広がるトレドの街は実際に歩くと厳しい坂の街だった。

大聖堂などトレドの景観

陽が傾き夕闇も近づくので、休む間もなくホテル探しに迫られる。観光案内所の一つが市庁舎の一角にあるとのことなので目抜き通りを見物しながら歩く。広くはない通りの両側には観光客向けのお土産屋、フードショップと地元住人が買い回る肉屋や洋品店などがごったに混在して並んでいる。そして道は回りくねり、枝分かれしており方向感覚はなくなる。トレド大聖堂に行き着くと、観光案内所はその前の三角の広場の反対側にあった。時間がない中で望むようなホテルが見つかるか少々心配だったが幾つもの候補を挙げてくれ、お薦めは歩いて一分のところにあるホテルだと言われ、すんなり見つかった。小綺麗なホテルで部屋の窓から大聖堂の尖塔が見え満足な結果になった。

自転車旅行6.06 トレド⇒マドリッド