自転車旅行6.05 フィレンツェ⇒ブリーク

6月5日(快晴)

from Firenze to Brig

イタリアの印象

当初の計画ではイタリアに約一カ月滞在し、その間に北イタリアとトスカーナを走り、イタリアが誇る世界遺産の街々や最も美しい村を観て回り、美味しいイタリアの食を堪能し、地元の人たちとのコミュニケーションが出来ればと目論んでいたが、そんな期待も余りに厳しい道に阻まれた。

見たまま感じたままのイタリアの道は対自動車、路面状態の点で全般的に自転車には厳しく、出会ったイタリア人たちからもサイクリングするならもっと安全快適なスイス、フランス、ドイツなどの国に行けば良いし、イタリア人もそうしていると聞かされる程のシビアさであった。

EU規格のユーロヴェロ8号線でさえ、他国で走ったものとは舗装率、路面状態、表示、設備面などで大きく劣り、不十分なことが目立った。

結局、楽しく走ることが出来ず、残念ではあったが途中ギブアップとなった。

そんな悪戦苦闘した中にあっても、刻んだ歴史に裏打ちされた街や木々の緑と豊かな水の流れに溢れた美しい村の佇まいを存分に満喫し、美味しい食べ物にも恵まれ、そして何より陽気で親切でフレンドリーなイタリア人たちと巡り会え、思い出深い旅に出来たのは幸いであった。

そんなイタリアにはいつか又来てみたいが、その時は是非とも列車の旅にしようと思っている。

フィッレンツェ発スイスのブリークへ

フィレンツェからブリークには一度ミラノで乗り換え、乗り換えてブリークに向かった。切符は前日の内に買って、朝方列車に乗り、ブリークに着くのは午後3時過ぎだった。

ミラノを出発した列車は暫くすると美しいアルプスに連なる山々を背にしたマッジョーレ湖の湖畔を進んで行き、湖畔に別れを告げると標高を徐々に上げながら進む。急峻な山が両側に迫り幾つものトンネルを潜りドモドッソラの駅を過ぎると、いよいよアルプスの山をくり抜いたシンプロントンネルに差し掛かった。

川端康成の雪国の書き出しをもじって「国境の長いシンプロントンネルを抜けると涼やかなスイスであった」と思いながらブリークの駅に着くと、これが6月初旬のスイスかと思うほどの暑さだった。

フィレンツェからブリークへの車窓からのマッジョーレ湖畔の景色は秀逸だった

◆両替もできるスイス国鉄の駅

どこを旅しても別の国に入国する際に最初にしなければならないのが両替所探しだ。トンネルを抜けたブリークはスイスなので直ぐに両替しないと困ってしまう。駅員に両替所を聞くと、何と駅の切符販売窓口で両替もしているという。入国先のお金を持たない旅人にとっては大変に便利なサービスであり、おかげで難なくスイスフランを入手できた。

両替だけでなく、痒いところに手が届くサービスをしてくれるスイスの駅には感心させられた。お客の列が長くなった途端に駅長と思しき人が並んだお客に用件を聞き、テキパキと案内している。イタリアで見て来た風とは全く違うのが妙に新鮮に見えた。ついでだから駅での両替は国境の駅だけかと聞いてみると主要な駅ではちゃんと両替していると答えてくれた。さすが観光が主要産業の国だけある。

5番窓口の案内にも切符のマークとともに両替を示すお金のマークがある

◆ブリークの街

ブリークに降り立つと眼前に雪を被ったアルプスの山が見え、季節外れの気温は別だがスイス入りした実感を肌で感じた。ローヌ川に沿って伸びる鉄道の線路と幹線道路は平らな面を走っている。しかし、一歩山に向かって走ると坂になり、その勾配もだんだんと急になったいた。アルプスからの雪解け水の流れも驚くほどの勢いであった。(走行距離 16km)