1 海外自転車旅行の準備

1-1 旅の構想とルート創り

旅のルート探し 私は子供の頃から地図を見て、知らない世界を想像することが大好きで、自転車旅のルートを構想する時にも、先ず地図を眺め、いろんなことを頭に浮かべ、興味深い場所や面白いことを調べて掘り下げてゆく。

そして拾い上げた情報をつないで具体化し、概算距離を測り、ルート計画を組み立てて行く。さらに、組んだ計画を何度も眺め、考えながら修正を加えて行き、その作業を何度も何度も繰り返すのである。

計画を創ったり、壊したりの繰り返しの作業は私にとっては既に「旅を始めている」ことに他ならないので全く苦にもならないし、むしろ楽しい作業となっている。

興味さえあれば、旅を構想する情報源は身近に幾らでもある。地図、旅行本、インターネット情報、テレビ番組、海外旅行のパンフレット、旅行に行った人の話などなど実に多彩にあるので、自分に必要な情報を取捨選択して加工すれば良い。

旅のルートの設定要素 コースを決めてゆく過程で考えに入れておくほうが望ましい要素も幾つかある。

以上のような要素も予め調べたり、検討しておくと、実際の旅行中に役に立つ。

地図への落とし込みと概算距離の算出 候補のコースを地図に落とし込み、概算距離をシミュレートしてみる。私の場合はGoogle mapを印刷し、コースに沿ってマーカーでルートを入れてみる。そして、Google mapのルート案内検索で一日に走ると思われる都市と都市の間のおよその距離を出して、全行程の概算距離を出してみる。 これらを見てルートを修正するか、日数を変更するかなど調整しながらルートを決定してゆく。

一日の走行距離は私はほぼ「行動時間*平均15km」で考えているが、この中には地図からの距離読み取り誤差や道に迷うことなども要素として織り込んでいる。また、予定以上に時間がかかる要素としてはコースの起伏、道に迷うこと、途中ポイントでの立ち寄り時間、風向き、天候などが影響するので、それらもスケジュールに勘案している。

*走ってみての実感でヨーロッパの地形は日本ほど険しくないと思っている。また、川沿いのコースはサイクリング道が整備されて走りやすいことと、余り起伏を考える必要もなく初めて走るには格好のコースになる。

基本のサイクリングルートと必要日数が固まれば、それに応じて次のステップに進もう。

・航空券の手配

・宿泊手配(到着当日分)

・装備の準備(チェックリストを作成し、もれのない準備)

1-2 ルート地図

私は出発前に予め現地のサイクリング地図をネットなどで取り寄せて買うことまではしていない。

日本を出発する際にはGoogle mapを印刷して持って行く。行程全体の見える全体地図一枚と、一日の行動予定がGoogle map1~2枚で見通せるものを用意する。この一日行動予定の1~2枚の地図を持ちさえすれば、一日分の行程ルートが分かるので、走る時に4つ折りにしてポーチかポケットに入れておけばかさばることもなく、必要な時に瞬時に取り出せ、結構実用的に使える。また、このGoogle mapには旅が始まる地点から目的地に至る地図まで整理しやすく付番しておき、さらに目安になるように主要な街と街の間の凡その距離や見るべきポイントや名物などを書き記しておくと便利である。市販ガイドブックを都度ポーチから取り出すのも面倒なものであり、この地図だけで十分走ることができて実用的だと思う。

その上で現地に着いてから書店で自分の旅に適していると思われる地図を必要に応じて買い求めている。しかし、多くの中から必要な地図を探し出すのもなかなか難しいので、十分に時間をとることと、店員に欲しいどんな地図が欲しいかを伝え、探し出してもらうことも奨めたい。どこの書店でもスタッフは親身になって探してくれるものである。

どこの国でも多くのサイクリングコースはルート地図が発行されており、区間距離、道の舗装状況、上り下りの傾斜度の目安や観光ポイントなどについて書かれている。コースは、ほぼ一本の道で表示されており、表示に沿って走れば良いように出来ている。少々縮尺が粗いので細かな読み取りが難しく、私は読み取りが下手で何度も道を間違えている。

また、オランダでは多くの番号が地図上に附されているちょっと毛色の違ったものも使った。その地図上に多くの番号が付いている。実際に道の分岐地点に地図に書かれている番号がついた標識があるのでそのナンバーを辿って目的地に向かうのである。オランダでは自転車道が網の目のように張り巡らされているために、いろいろなところを経由して目的地に行けるのでポイントの番号制をとっていると思われる。これは間違えた道に入っても後戻りすることなく、別ルートで行きたいところに行けるので、便利なサイクリング地図である。

1-3 一人旅それとも仲間と

最初の海外自転車旅で走ったロマンチック街道は6人で、チューリッヒからアムステルダムは2人で走り、そしてハンガリーからオーストリアは独りで旅をした。それらの経験から私はある程度長期になる旅は少ない人数のほうが良いと考えている。短期間であれば余り感じないが、旅が長くなるに連れてさまざまな難しさが出てくる。単に走力の差だけではなく、人数が増えるほどやりたいことや見たいことなど方向性が分散し、違いが大きくなってくる。さらに体力的な蓄積疲労に加えて精神的な疲れも溜まり、少なからず意見の違いが表面化することになる。実際6人で走った時にはリーダーの強すぎる節約志向から大半の宿泊がツインやトリプルの相部屋となった上、起きてから寝るまで行動は常に同一行動を要望され、一人のんびりと体調と精神をリフレッシュする時間が持てず、気分的にも落ち着かないものであった。

反面、一人での旅は自分の思いのままに行動できる自由闊達さがあるが、何か支障が生じた場合に対応の幅が狭まるリスクがあると思う。そんなことから、同じような走力を持ち、十分に気心知れた二人で旅することがまずまず妥当な線かもしれない。その場合でも宿泊はシングルルーム使用を必須にするなど適度な距離感が必要で、走る時は一緒であっても、その他の時間は二人で話し合って食事、街歩きなど単独行動なのか二人で動くか決めて、お互いの自由度を大きくした方が良いと思っている。

グループ走行のポイント 一人で走る時には自分のペースで走れば良いが、二人以上になれば必ずお互いのペースや体調を考えながら行動しなければ、時間の経過とともにどちらかに無理が溜まるものである。そのため、走る時の原則は走力の弱い人を先に後ろを走力に自信がある人を走る編成で進むことである。逆順で走るとどんどんと差が開くか、走力のない人が無理して追いつこうとしてオーバーペースになり疲れてしまうことになる。

荷物の荷重もある上に連日走るので、一日の走行距離もメンバーにも無理が生じないように、日頃よりもゆったりしたペースと程度な走行距離でコントロールする必要がある。

また、集団走行では、万一はぐれた時の対策も予め考えておく必要がある。実際にミュンヘン市内の歩行者天国に紛れ込み、その雑踏の中で危うく迷子が出そうになった。出発前の取り決めでは全員が携帯電話を持ち緊急連絡する手はずであったが、リーダー自ら携帯を持ってこず、危機が生じたしメンバーからもブーイングが起きたことがある。多人数になればなる程どんな手段で迷子防止策を打つか予め相談し準備しておきたい。

1-4 装備の基本

装備について我流であるが自分自身の考え方と具体的に携行する持ち物に関してまとめてみたので、参考にしていただければ幸いである。

「装備全体を最大限に軽量化、コンパクト化する」を基本に私は必要なものを揃えることにしている。

当たり前のことであるが、持ち物が少なければ少ないほど、負荷も少なく楽に走れるし、楽に管理もできるので、自転車旅では軽量化、コンパクト化が必須条件だと思う。だから、要るか要らないか判断が付かないものは持たない!、兼用できるものは兼用する!、代用できるものは代用する!。それでも不自由な思いをしたことはない。そんな考え方なので、例えばパジャマは持たずに薄手のトレーナーとTシャツで兼用し、腕時計は万歩計で代用する。時間は万歩計の時計機能で知ることができるし、時計を無くす心配もない。万歩計なら仮に落としても失くしてもダメージは小さい。さらに時差による時刻変更も極めて簡単なので機械音痴の私にはピッタリなのだ。

私の収納ツールはサイドバッグ2個とウエストポーチだけである。

基本装備はすべてサイドバッグに入れて、ポーチには走行時に即座に取り出したい地図、資料、電子辞書などを入れ、天候に応じてアームウォーマーやウィンドブレーカー、レインウェアーなどを入れる。ただし、ポーチは便利な反面、外して置き忘れることがあるので私は失くしてはならない貴重品を入れることは絶対にせず、それらの貴重品は常にファスナー付きのベストかズボンのポケットに入れている。

自転車関連品の装備

衣類と生活用品

絞り込みの主なポイントは以下の通りである。

●衣類は毎日こまめに洗濯する前提で最小限の持参点数にする。

●ある程度の寒さには重ね着で対応できる。

●兼用できるものは兼用する。

●街歩き用やお出かけ用に特別な衣類は極力持たない。

●洗面用具は歯磨き、歯ブラシ、髭剃りだけ。

宿にはタオル、バスタオルはもちろん、石鹸、シャンプーはきちんと備えられている。

●「もし足らないものが出たら、買う」と考えておく。

季節が同じであれば旅行期間が一週間でも一か月でも荷物の総量は変わらない。

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