2021年  東の「タヌキ」

張貼日期:Jan 20, 2021 12:51:18 AM

東の「タヌキ」と言っても、〈狸親父〉などと称された徳川家康のことではない。それは食べ物のこと、麺類の「うどん」と「そば」の名称の東西差についてである。

いつぞや、韓国での学会の懇親会の折に、タヌキソバの東西の違いを説明して、と言われて、直ぐには説明できなかったことを思い出す。料理名について不案内な人間ゆえに、その内容を聞いてもほとんど記憶に残らないのが常なのである。そこで、改めてタヌキソバについてのメモを記し、反芻しつつ、頭にたたきこんでおこうと思った次第。

関東でタヌキソバと言うと、「そば」の上に「天かす」が乗った料理を指すが、関西ではタヌキソバと言うと、関東のキツネウドン(「うどん+油揚げ」)の「うどん」が「そば」に入れ代わった料理を指す。

関東では「タヌキ=天かす」「キツネ=油揚げ」のように、タヌキやキツネが具の違いを指すので、タヌキウドンやキツネソバが存在する。

対して関西では「タヌキ=そば」「キツネ=うどん」であるので、タヌキソバは「そば+油揚げ」を、キツネウドンは「うどん+油揚げ」を指すのである。したがって、関西ではタヌキウドンやキツネソバというものが存在しないことになる。

ただし、京都在住の松丸真大さんによると、京都においては「あんかけ」のことをタヌキと呼ぶことがある由である。そうであれば、京都にはタヌキウドンも存在することになる。関西でも、京都と大阪では微妙な違いがあるようだ。実にややこしい。

ちなみに、関西では、「うどん」の上に「天かす」が載ったものはハイカラウドン、「そば」の上に「天かす」が載ったものはハイカラソバと称する。

ところで、私自身について言えば、関西では「うどん」の方が美味しいので、あまり「そば」を注文しようとは思わないが、東京では逆で、「うどん」には心が動かず、圧倒的に「そば」を注文することが多いのである。

2021.1.21