2019年 七十年周期

張貼日期:Jan 22, 2019 7:21:20 AM

堀田善衛といえば、このほど、富山の「高志の国文学館」が編集した『堀田善衛を読む 世界を知り抜くための羅針盤』を手にしたところである。その中で、ノンフィクション作家の吉岡忍さんが、堀田のエッセイ集『めぐりあいし人びと』の一節を引いていた。その箇所を掲げる。

奈良時代というのはよく調べてみるとなかなかおもしろい時代なんですね。たとえば、班田収授法というのがありますが、あれは土地をすべて国有にして、それを農民たちに等しく分け与え、税をとるわけです。これは要するに、ソヴィエトのコルホーズ、ソホーズの形態と同じです。(中略)ところが、そんな窮屈なことをやられてはかなわないということで、結局七十年くらいしかもたなかった、偶然とはいえ、この暗合はおもしろい。ソヴィエト共産党がやはり七十年ですね。そうやって考えると、奈良時代の律令制というのは、いわば一国社会主義だったといえるかもしれません。

(『めぐりあいし人びと』集英社文庫)

私が興味を持ったのは他でもない、ここに記された七十年周期のことである。実は、明治以来の中央集権国家「大日本帝国」もまた、維新後七十七年で崩壊したのであった。この符合には何だか意味深長なものがあるように感じられるからである。

自由や民主、そして普遍的人間性を希求した戦後の時代もすでに七十年を超えた。高度な情報化による管理社会の登場によって、個人が国家に連なるような情況が再び生起しつつあるようにも思われる。われわれは今また新たな節目に立っているのではなかろうか。

(2019.1.22)