2014年 行灯

張貼日期:Nov 30, 2014 3:24:26 AM

北千住のシアター1010で、白石加代子百物語FINALを一人して見てきた。

1992年6月から始まった白石加代子さんの朗読「百物語」シリーズの最終夜(第32夜)である。その最後の話は、三島由紀夫『橋づくし』(第98話)と泉鏡花『天守物語』(第99話)の2話であった。

百物語とは、昔から伝わる怪談会のスタイルであるという。ウィキペディアによれば、「怪談を100話語り終えると、本物の怪が現れるとされる。起源は不明だが、主君に近侍して話し相手を務めた中世の御伽衆に由来するとも、武家の肝試しに始まったとも言われている。」とある。

この言い伝えにしたがって、「百物語」は99話で打ち止めにする。それをこの催しの約束事とした由である。

最後の『天守物語』では、妖艶な魔性のものたちが立ち現れ、現実では叶わない願いを成就する。そこに女優・白石加代子の情念が重なって見えた。

今回は座席が最前列であったので、彼女の息づかいを間近で、まさに唾が飛んでくる距離で感じることができた。いくつになっても変わることのない迫力に圧倒されるものがあった。

実は、白石さんは五箇山と関係が深いのである。

白石さんは、かつて鈴木忠志が結成した「早稲田小劇場」の看板女優として活躍した。「早稲田小劇場」は1976年から五箇山の利賀村に活動の拠点を移し、それ以来、合掌造りの利賀山房を舞台にして作品を上演した。その舞台で白石さんは熱演を続けたのである。しかし、その前後から鈴木と白石さんの間には隙間風が吹き始めたようである。二人の共同作業が終焉したあと、しばらくして「百物語」は始まったのであった。

白石さんにとって、五箇山はあまり思い出したくない場所なのかもしれない。

2014.12.1