2014年 西高東低

張貼日期:Feb 28, 2014 1:24:31 PM

ソチ五輪が幕を閉じた。お祭りあとの静けさもまた少しばかり心地いい。

ところで、表彰台での銀メダル受賞者は、金メダル受賞者の右側に立ち、銅メダル受賞者が左側に立つのは何故か、という質問に対して、テレビのなかで、今をときめく某氏が、「それは欧州では右の方が左よりも上位と認識されているからだ」と説明していた。

そしてさらに、「日本では逆で、左の方が右よりも上位と認識されている。たとえば、左大臣は右大臣の上位なのだから」と。

だが、はたしてそうであろうか。確かに左大臣は右大臣の上席ではあるが、それは古い律令制における官名のこと。それが転じた右を下座とする用法が近世あたりに散見はするが、一方で古代中国には列位の右側を上席とする用法があり、それが転じた右の位を上位とする用例も多く存在する。「右に出る者なし」という慣用句は<上位に位置する者がいない>といった意味で、そこから来ている。

いずれにしても、左が上なのか右が上なのかは一筋縄ではいかないのである。

「左右」という表現自体、左が先である証拠ではないか、と言われるかもしれない。しかし、「さゆう」と字音で読む場合、それは漢語の借用による運用なのである。和語としては「みぎひだり」と表現するので、右が先にくるのである。たとえば、<左右(さゆう)のどちらを見ても>ということを言う場合は、「右(みぎ)を見ても左(ひだり)を見ても」となるではないか。

「上下左右」という漢語がある。これに照らすと、左は上に、右は下に対応することになる。ただし、この表現が生まれた背景には筆順があるのではないかと私は考えている。運筆において、上から下へ、左から右へと筆を運ぶのが普通だからである。

もちろん、左右がいつも先後とかかわるわけではない。左翼と右翼などというのもそうだろう。ちなみに、この表現は、本来、フランス革命当時の国民議会で、議長席から見て、左方に急進派が議席を占め、右方に穏健派が議席を占めたことに由来する。

2014.3.1