2008年 醸成月

張貼日期:Mar 05, 2011 5:59:25 AM

小さい頃、遠い親戚に瞳の色の薄茶色っぽい女性がいた。幼心にそのおばさんがなにか異人さんのように思えて、実は怖かったのである。

少し大きくなって、自分の顔を鏡でつくづく眺める機会があった。そして驚いたのである。なんと自分もあのおばさんと同じ眼の色をしているではないか、と。

大学1年生の初夏、副鼻腔炎の手術をしたときのことである。病院で、マスクをして廊下を歩いていた折、知らない小学生が、私の眼を見上げつつ、「お兄ちゃんは外国の人なの?」と聞いたのであった。

そういえば、研究室でのある場面が思い浮かぶ。

ブラジルからやってきた国費留学生のジュリオ君に初めて面会したときのことである。ジュリオ君の最初に発したことばは、「先生は中央アジアあたりにルーツがあるのですか」であった。ジュリオ君のルーツはアフリカなので、ことさらそのことにこだわったのであろうが、そのとき何故か昔のことが想い出されたものである。

この夏、内モンゴル大学モンゴル学学院からの招請もあり、調査を兼ねて、内モンゴル自治区の区都、フフホト(呼和浩特)を訪れた。フフホトはモンゴル語で「青色の都市」を意味する。その名の通り美しいところであった。折から開催されていた内モンゴル師範大学での「第2回モンゴル語応用研究学術検討会」にも参加して、発表の機会を得、「地域語の復権」をめぐっての話をした。

フフホト滞在中、西方、砂漠の中の工業都市、オルドスに出かけた。

オルドスで、瞳の色の薄茶色っぽい何人かの女性たちと会ったのである。なんだか、遠い昔の、ふるさとにいるような気がしていた。

2008.10.1