2018年 泰雅の飛魚

張貼日期:Jun 28, 2018 12:33:5 AM

台湾東部、宜蘭県の山辺にある‘原住民族’アタヤル(=タイヤル)の人々(泰雅族)が暮らす村。そこでは次のような会話が聞かれる。

「んた(あなたの意)、どこの人間?」

「わし、タンオの人間。」

「おー、トビヨが!」

タンオは「東澳」で、現在の東岳村の旧称である。ここは飛魚が取れることで有名で、その呼び名であるトビヨ(当て字は「多必優」)がそのまま東澳の俗称となったのである。東澳駅の前には大きな飛魚のモニュメントが立てられている。

この会話は一見日本語のように見えるが、その全体はけっして日本語そのものではない。それは現地アタヤル語と日本語との接触によって生まれた「新しい言語」なのである。そして、その担い手は年配者のみならず、その子供世代さらには孫世代にまで及ぶ、まさにクレオールである。

クレオールとは、主に植民地において、入植者の言語が現地語と混じり合って独自の言語となり、その地の人々の母語となったものを言う。

このクレオールの存在が東華大学の簡月真さんによって確認されたのは2005年であった。その後、私たちはこの言語を「宜蘭クレオール」と名付け、その研究を進めてきた(フィールド調査は主に簡さんが担当している)。

私たちの研究に応じて、東岳村の青年たちが、自分たちのアイデンティティを確立するために、村の生活史についてのドキュメンテーションを作りたいと希望してきた。その願いを受けて、簡さんの主導のもと、東華大学原住民民族学院の民族語言與伝播学系の企画として、村の言語生活史と言語意識に関するドキュメンタリー映画を制作するプロジェクトが進められた。このたび、その映画が完成し、ユーチューブ上に公開されたので紹介する。

http://www.youtube.com/watch?v=Ietj0DjWUaw

題名は「泰雅の飛魚-宜蘭克里奥爾」である。ナレーションは中国語だが、私も登場しているので、見ていただければありがたい。

(2018.7.1)