2010年 ビヤ-ホール
張貼日期:Mar 05, 2011 6:15:2 AM
子どもの頃、ふるさとでは、時折、映画の興行があった。
夏にはその上映が野外(小学校のグラウンド)で行われることもあった。
その折りに見た「土砂降り」での佐田啓二と岡田茉莉子の接吻シーンが、その題名とともに私の脳裏に焼き付いている。
調べてみたところ、この映画の公開は1957年6月であることが判明した。
当時、私は11歳のはず。思春期に入った頃であった。
映画が終わっての三々五々、わが家族はいつもその最後尾になるのが常であった。(それには、訳があった。)
帰宅の途中、お店に(雑貨店であったが)立ち寄って、飲み物を注文するのだが、それは子ども心に何とも嬉しいひとときであった。
父の注文品はビール、私の注文品はサイダーかジュースであった。父があまりにうまそうにビールを飲むので、少しなめてみたが、にがくてとても飲める代物ではない。大人は何でこんなまずい物を飲むのか、とそのときは不思議であった。比してジュースの何と甘くておいしいことよ、と心から思ったものである。
ビールの苦手な人に無理強いをさせたときなどの、その人の表情を見るにつけ、昔の自分の思いが頭をよぎる。
(実はこの文章を書き始めて気づいたことがある。それは「わが家族はいつもその最後尾になるのが常であった」ことの意味合いである。私は、わが家族がノロマだからいつも自然と帰り際に後れをとってしまったのだと思いこんでいた。しかし、今になって、そこには人目を避けようとする母の配慮があったのだと認識した次第である。それは、何とも哀しい、時代的な心遣いであった。)
2010.8.1