2009年 春 再生

張貼日期:Mar 05, 2011 6:4:31 AM

大谷泰照さんは、1961年以来、関西のいくつかの大学で、新入生を対象に言語意識の調査を行なってきた。その項目のなかに「もしも生まれかわることができるとすれば、何語を母語に選びたいか」というのがある。

回答の結果、1961年当時もっとも多かったのは英語とするもので69%、次が日本語の14%であった。「日本のような国に生まれなければよかった」「日本語などを母語にして大損だ」と考えていたわけである。「生まれかわったら英語を母語にしたい」「アメリカ人になりたい」、これが1961年当時の学生たちの意識であった。

ところが、それから10年たって1971年になると、これがかなり変わってくる。英語を母語に持ちたいという学生が69%から54%に減少し、一方、日本語を母語にしたいという学生が 14%から30%へと優に倍増したのである。

そしてさらに10年後の1981年の調査ではついに英語願望と日本語願望がともに42%で、横一線に並んだ。そして、1995年には、英語と答えたものが36%にまで減少した。日本語という答えは実に45%、日本語が英語を追い抜き、その順位は完全に逆転してしまった。学生たちの母語願望には、一貫して英語志向の漸減、そして日本語志向の漸増傾向が認められたのである。

私は大谷さんの後を受け、1999年4月、大阪大学の新入生を対象に同様の調査を行ったが、その結果では、英語47%、日本語41%で、やや日本語志向の停滞傾向がうかがわれた。

ただし、昨年、2008年4月の大阪大学新入生(147名)を対象とした調査の結果では、英語願望41%、日本語願望42%と、再び横一線に並んだのである。このあたりがちょうどいいバランスなのではないかと愚考する。

ちなみに、学生が英語を選ぶ理由としては、「国際語だから」が圧倒的で、ほぼ80%が占められている。一方、日本語を選ぶのは、「好きだから」「表現力が豊かだから」「美しいから」「日本人は日本語だ」といった理由で、その大部分が占められている。

2009.4.6